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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第05章 新たな力

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第41話

百足は落ちた葉の上をカサカサと這い回りながら、そのでかい体で俺を包囲しようとしてくる……が、三メートルしかないのでその分延々と回り続けている。

間抜けた包囲だよな。

俺はその場で軽く跳躍すると、百足の頭の上に着地する。
この百足が毒を持っている部位は口と足。
つまり、背中の上ならほとんどの攻撃をやり過ごすことが出来るのだ。
つるつるする外殻をものとせずに、体の節を無理矢理握って振り落とされないようにしっかり捕まる。


「ふんっ!!」


気合いを込めて魔力を百足に注ぎ込むと、ものすごい反発力に魔力が押し負けそうになる。
無理やり詰め込もうとすると、反発して漏れた魔力がパチパチと音を立てて弾けた。
それと同時に周りの温度が急上昇し、落ち葉に火花が飛んで発火するものまで出てきた。
一方の百足は体をくねらせて大暴れし、俺は振り落とされそうになる。


「あぶねえなっ!大人しくしろっ!!」

「キシャアアアアッ!!」


さらなる魔力の固まりをぶち込むと、反発していたものを突き抜けた感触があり、俺の魔力が浸透した感覚があった。
すると百足は苦悶の声を上げ、苦し紛れにか下半身を振り回し始めた。
腕で弾いたものの、その衝撃に背中の上から吹き飛ばされる。

追撃されるのはご遠慮なので取りあえず背中からは離れたところまで再度跳躍する。
目を強化して百足の魔力を確認すると、俺の魔力が頭部へと集中している。


「キア……キイイイイッッ!」


もうすでに百足はグロッキー状態っぽい。
俺の魔力が自分のものと反発して『魔力酔い』みたいなものになったんだろうな。


「じゃあな、キモ百足」


フラフラしている百足に対し、今度は跳び蹴りを食らわせる。
俺の足は頭部の真ん中に突き刺さり、その衝撃は速やかに俺の魔力に伝わる。


「ギ……ギギギ……」


微かに鳴き声をあげた直後。
百足の頭は粉となって風に乗って飛んでいった。
三メートルの体のほとんどが無傷で手に入ったことになる。


「完璧な手際だったけど……無理だな、生きものに魔力をつっこむのは。魔力消費が桁違いすぎる」


百足の体内の魔石を取り除きながらぽつりとつぶやく。
殴ればそれだけで倒せる相手に使ってみたが、魔力がほとんどすっからかんになっている。
何とか技を生み出したものの、無生物限定な技になってしまった。
たかだか百足にこれだけの魔力を消費していては非効率甚だしく、しかも魔力を相手につぎこむのはそれだけで相手を魔力酔いにさせ無力化させてしまう。
多分『崩壊』は攻城戦とかには役立つんだろうな……。
せっかく完成した『崩壊』だったが、これはまた他の技を考えないといけないようである。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



村に帰ると、もう日暮れも近かった。
ほとんど魔力をすっからかんにした状態でぼんやりと夕食のメニューを考えていると、ドンドンドンッ!と玄関の扉が叩かれた。
リリーはノックなんかすることなく入ってくるし、それに影響されてファルもここ最近ノックをすることがとんとないから、誰か村の人だろうか。


「はいはい、なんですか……っと、お婆さんですか」

「うむ、ケン坊。ちょっと頼みがあるのじゃ」

「どうかしましたか?」


俺はその時、晩ご飯を分けてくれとかそのあたりの軽いお願いだろうと思っていたが、次の一言でその余裕は吹き飛んだ。


「この時間になっているというのに、子どもが一人おらんのじゃ。ニシェルという子じゃが、探せぬか?」

「えっ!分かりました、今すぐ俺もお手伝いします!」

「うむ、すまぬな。まず、村の中に隠れておったりはせんか?」


俺はお婆さんの言葉に応じて『感知』を村中に広げる。
一つ一つの魔力を完全に誰か判別できるのは丁度村くらいなのである。
この三ヶ月でぐんと精度がのびたものの一つがこの『感知』である。
ニシェルは特に、ミシェルさんと一緒に麻痺毒を飲まされた子どもの一人だったので魔力の傾向は覚えているのだが……。


「いえ、この村にはいません。少なくとも俺の『感知』には引っかからないです」

「そうか……どこへ行ったのじゃ、危ないというのに!」


日暮れ時は最も魔物が多く出てくるときである。
昼行性のものは自らのねぐらに帰り、夜行性のものはそれらを狙ってねぐらから出てくる。
どいつもこいつも腹を空かしていることが多いため、かなり危険な時間帯なのだ。


「……ん?誰か村の外からやってきてますね。馬に乗っている速度でしょうか」

「ニシェルかの?」

「いえ、知らない魔力です。門まで行きましょう、乗ってください」


俺は急いで上着を着ておばあさんを背負い、村の入り口まで走った。
『感知』ではリリーやファルもそこにいるらしい。
大人たちもかなりの数そこに集まっているようだが、子ども達は家の中だ。
二次被害というか、ミイラ取りがミイラになる的な状況にはなっていないようである。


「すいません……俺、何かタイミング悪かったですかね?」


門のところにいたのは若い行商人だった。
いつもドレア村に商品を持ってきてくれていた男だが、明日到着予定だったのに少し早い到着だったようだ。
俺はゆっくりとお婆さんを下ろすと、お婆さんが口を開いた。


「いや、少し内輪ごとじゃよ。しかしお主、到着は明日だと文をよこしたじゃろうに。どうしたのじゃ?」


お婆さんが尋ねると、やれやれといったように首をすくめて男は言う。


「いやね、道中に子どもを背負った男に会ってね。今日中にこの手紙を黒髪の若い人に渡せば、その人がかなりの金を渡してくれるっていうのでね。この村に黒い髪ってケントさんでしたっけ、あなたしかいないじゃないですか。きな臭い匂いがしたんで急いだんですよ」


そう言って男は折り畳まれた紙を俺の方へ渡してきた。
確かに子どもを連れた男というのは気になる。
紙を開くと、少し見過ごせない内容も書かれていた。


「真竜のガキへ

日が沈みきるまでに竜の山の小屋に来い

さもなくば亜人のガキの命はない」


……真竜、だと?

ファルとリリー、カランさんと叔母さん以外はこの世界で知っている人はいないはずだぞ?


「ファル、リリー!これを見てくれ!」


二人を呼んで紙を見せると、二人も驚いて顔をしかめる。


「……誰かに、知られたの?」

「どうして、知っているんでしょう?」

「……分からん。ただ、あんたこれ読んだか?」


行商人の男をにらみつけると、男は顔を真っ青にして否定した。


「いやいやいやいやっ!そんなことしたら行商人の信用問題だからっ!してない、してないからその殺気やめてっ!」


おっと、少し殺気が漏れてしまった。
まあ、普通の行商人なら手紙は見ないだろうし、本当のことを言っていると判断しよう。


「取りあえず、竜の山まで『感知』を伸ばす……!」


円形に広げられるのは村くらいが限度だが、一定方向に向けて伸ばすだけなら距離は伸びる。
竜の山と分かっているのなら、そこまで届かせればいい!

竜の山には魔物がいない。
竜の山というくらいなので魔物が敬遠しているのかもしれないが……。


「……いる、ニシェルだ。一緒に……5人いるな、しかも1人は……クソッ、地主の野郎だっ!」

「あの男じゃとっ!」


俺の忌々しげな声にお婆さんも顔をしかめる。
放置していたらどこかに行ったはずなのにどうして帰ってきて、俺のことを真竜として知っているのだ?


「私も行きます!」

「リリーも行くの」


2人とも一緒に行く気まんまんだ。
もう俺の方が弱いかもしれないくらいだし、魔力もすっからかんだからお願いしよう。


「ああ、頼む。皆さん、俺たちでニシェル連れ戻してきます!俺たちならここの村の壁も飛び越えられるので、もう締め切ってしまってください!」

「おう、分かった!頼むぞ、ケント!」
「お願いね、ケントくん!」


大人たちの返答を背中に聞いて、俺たちは村の外へ駆け出した。






次回は木曜日15時の予定です。

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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