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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第05章 新たな力

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第39話

時間帯がぶれてすみません。
午前中いっぱいはリリーに科学知識を教えるのに費やされる。
三ヶ月も勉強したら大抵の知識をリリーは吸収してしまっていたが、生半可に前の世界で勉強していたわけではない。
東高二位は伊達ではないのだ……一位には敵わないけど、ぼろ負けだし。

俺もこれまでにこちらの世界の常識をいろいろと教わった。
通貨は銅貨、大銅貨、小銀貨、銀貨、大銀貨、金貨の六種類で、それぞれ二十枚ごとに上の通貨と両替できる。
パーティーはSからGまであるものの、Cランクに達するまではネームプレートに反映されることはない。
またパーティーの順位や入れ替え戦の管理をするのは『ホール』というところだ。
入れ替え戦で上のランクの人を倒し、ホールの審判員がそれを認めれば順位の変更が行われる。

また、ここはエルシオ大陸で、 ヴァイス帝国、カルティナ公国、シーレイア皇国の三国が存在する。
ヴァイス帝国は国内のすべての人族以外の種族を『奴隷』として扱っているが、その発端はシーレイア皇国の国教、シーレイア教によるものだ。
シーレイア教は人族以外の種族を完全に見下していて、信者のほとんどは他の種族を亜人扱いをしてはばからないのである。
ただ、カルティナ公国は他種族も平等に扱っている。
ドレア村もカルティナ公国の村の一つで、移民を手配してくれたりしてくれた。
ところが、領土は小さいため帝国と皇国の両国に睨まれ、魔物の発生率もこの国は高く、てんてこ舞いの状態だという。
今でこそ皇国と帝国が仲が悪く、しかも両国に続く道は険しい自然の要塞となっているのでなんとか平和が保たれているのだ。
どこの世界も他国とは仲が悪いのね。


一方、俺はこの三ヶ月で自分の能力について再確認をしていた。
その結果分かったのは、俺には魔法を使う素養はない、ということだ。
リリーが測定してくれたのだが、ファルと俺には通常魔法の素養はないようだ。
特別魔法に開眼する可能性はあるらしいのだが、期待しない方がいいとも言われた。

……ファンタジーの夢一つ目はあっさり崩壊。

あと、言語についても分かったことがある。
俺が話しているのは日本語のつもりだったのに、口に出るまでの間にこの世界の大陸共通語に翻訳されているのだ。
おそらくそういう魔法でもかけられたんだろうが、植物名とか料理名とかで両言語のすりあわせが上手くいかないとエラーを起こすらしい。
生活が上手く送れないので、貰った翻訳機能をオフにして必死に共通語を覚えた。
その甲斐あって、日本語とのすりあわせエラーが激減した。
キュトロとか、人参って言ったら翻訳してくれるようになったのだ。

最近になってその勉強も終わり、今度は午後の時間を村の子ども達にも勉強を教えることになっていた。

……俺、異世界人なんですけど?


「今日は九九だ。これを覚えておくとかなり計算が楽ちんになる。昨日までに足し算引き算はみんな出来るようになったな。まずは二の段から……」

「九九?」

「ああ、この点の数は何個か分かるか?九九を覚えれば、こんなのを全部数える必要がなくなるんだ」


俺はそう言って7×4=28個の点を見せる。


「おおおおーっ!すげーっ!」


テンションのあがる子ども達。
日本の高校生より勉強意欲あるんじゃね?



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


そうやって二時間くらい教えたら流石に子供も疲れてくるので、勉強会はお開きである。
子ども達は外で楽しく遊んでいるようなので、俺も自分の鍛錬をすべくひとりで竜の山に向かう。
こちらの世界に来て以来、俺の実力の把握に勤めてきたわけだが、間違いなく今のままではSランクなどほど遠いだろう。
俺のやれることといったら、魔力強化と魔力を纏うことだけだ。


「出来ない……」


体術は別に世界一レベルなわけではないが、それを高めるのと同時にジャストのタイミングによる強化を挟んでいこう、と考えて練習しているのだ。

決め手となる、必殺技的なものを。

そのために竜の山に一人でこもり、何度も何度も大きな岩を殴っているのだが、全く成功しない。
魔力強化で殴っているわけではないので、いつも右手は血まみれになってしまうのだが、治癒力があって本当によかった。
その治癒力もかなり弱っているようで、一瞬で治っていた切り傷も十秒くらいかかる。

……本当に、何か決め手を作らないと俺がファルやリリーたちについていけなくなる。

その後も俺は岩を殴り続けたが、何もつかむことは出来なかった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



その夜。
家で晩飯を食べてのんびりとしていたところにリリーがやってきた。
今日はファルが意気込んでオムレツを作っていたはずだが、どうしたんだろうか。


「ケント、見て欲しいものがあるの」

「ん?ファルがなんか焦がしたか?」

「それは違うの、オムレツは最高だったの。見せたいのはあれなの、光についてなの」

「ああ、分かった。夜だし実験にはちょうど良いな」


どうやら今日の授業のあと何か閃いたらしい。
ファルがついてくることが多いのだが、今回はリリー一人のようである。


「ファルは来てないのか?」

「ファル、昼間に棒を振りすぎて食べ終わったら寝ちゃったの。オムレツ作ってるときに、『明日は勝てそうっ!』って言ってたの」


……もう、か。
しかし、何をされるのだろうか。
カランさんを圧倒するほどの殺気を放てるファルにそんなこと言われたら……って、弱気すぎる、いかんいかん。


「ああ、それは怖いな……。さて、リリーは何をひらめいたんだ?」


家のすぐ外のベンチに座りながらリリーに尋ねると、リリーは誇らしげに胸を張って言った。


「今朝言ってた、あのエネルギーを高めた光についてなの」

「……まさか」

「そう、そのまさかなの。できちゃったの」

「……」


何も言えない。
科学知識を学びはじめてたった三ヶ月。
魔力という助けを借りながらも、リリーは地球の最先端技術に追いつきました、はい。


「やるの。『スマッシュライト』」


リリーが魔法名を口にすると手のひらの上に小さな光の玉が生まれる。
しかし……


「『スマッシュライト』って目くらましの魔法じゃないか?」

「リリーが一番使ってて、分かりやすい魔法なの。だからイメージで軽く圧縮した状態で魔法を呼び出してるの。でも、これでも威力は強かったの。『圧縮』」


そして、手のひら大だった光の玉がビー玉サイズにまで小さくなり、あふれる光も少なくなる。


「これで、ラストなの。『発射』」


そういった瞬間。
ビー玉からその太さで一直線に光線が走る。

俺の方に。


「ち、ちょまっ!」


反射的に横に身を投げ出し、その光をよける。
魔力強化していなければその兆候をキャッチできなかっただろう。
なんて言ったって光なのだ、今のでも間一髪である。


「うおい!俺になんか恨みがあるのかよっ!」


驚いて叫ぶと、リリーは頭をかきながら言った。 


「もちろん、ないの。ただ、これができたことの自慢なの!」

「じゃ、俺の方に飛ばさないでくれよ……」

「てへっ、どこに飛ぶかはリリーにも分からないの!」

「そんな風に言ってもやばいことしてるのに変わりないからっ!」


俺とリリーはひとしきり騒ぐ。
ただの光ならよけなくても良かったんだが、目くらましが元の魔法とはいえ、こちらに飛んでくるときの悪寒は半端じゃなかった。


「ベンチはどうなった……?」

「多分、撃ち抜くくらいの威力はあったと思うの」

「あ、危なすぎだろ……」


物騒さに身を震わせながらベンチを確認すると、ビー玉大の穴が空いている。


「うわあ……」

「やったの、大成功なの!」

「なあリリー、今のってどれくらい力を込めたんだ?」

「んー……魔力はほんの少しだけど、イメージを練るのにかなりの精神力を使うの」


……ほんの少しで一センチの厚さの木の板を撃ち抜きますか。


「明日からは狙いを定めるイメージも練習に追加してくれ。今のままじゃ怖すぎる」

「……頑張るの」



本日。
攻撃力がない、とカランさんが心配していたリリーが超強力な魔術を発明しました。

……明日から光を避ける練習が要りそうだ。


次は17時更新でいきたいと思います。

次は木曜日です。

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


http://ncode.syosetu.com/n4562cu/


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