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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第05章 新たな力

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第38話

こちらの世界にやってきてから今日で三ヶ月目だ。
とうにドリア村は軌道に乗り、公都から回されてきた人たちも元気に働いてくれているのである。
人口はちょうど150人、子どもも結構いるし、みんな生き生きとしているのは嬉しい。
なお、俺が村の開拓を手伝って家をもらったら、ネームプレートの住所がきちんと『新ドレア村』になっていた。
職業は……まあ、変わらない。
俺は農作業を手伝うと言っているのに、村人たちはそれだけは断固として拒否するのだ。


「ケントくんは村人になるより、パーティーを組んで有名にならなくっちゃ!」


とはミシェルさんである。
まあ、そういうわけで俺はファルやリリーと修行をする日々を過ごしていた。


朝、日の出と同時に起き出して軽くストレッチをしていると、隣の家から少し寝癖をつけている状態のままファルが顔を出す。


「ケントさん、もう出ますか?」

「ああ、数分後には出るよ」

「リリーはどうしましょう?あと数分だったらたぶん起きないですけど……」

「まあ、リリーの要る体力はそこそこでいいからな。寝かせておいてやろうか、昨日は結構魔法陣作成で神経使ったみたいだし」

「分かりました。私も少し整えてきますね」


そう言って顔を引っ込めるファル。
数分後出てきたファルの髪には、寝癖はついていなかった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



村から竜の山まで走り、山を登って駆け下り、村まで戻るのを一周にして、四周全力で走る。
総距離はちょうど50キロくらいだろうか。
魔力強化を抜きにして純粋な体力で走るのだが、隣をファルが走るのである。
最初のうちはファルは俺の周回遅れになっていたが、1ヶ月で俺と一緒に走れるようになり、最近では俺より先行出来そうなくらいになっている。
まさかこれほどまでに成長が早いとは思っていなかったので嬉しいものである。

走り終わると、少し休憩を挟んだ後家の前で戦いの練習である。
俺は徒手空拳の格闘術が一番強いけれど、その他の戦い方もそこそこ出来る。
そこで試してみたところ、ファルにあう戦い方は棒術だった。
慣れない棒の振り回しに手こずったのもやはり最初の1ヶ月だけである。
最近では魔力強化も上手く使えるようになってきて、最近村を襲った熊はファルが一撃で爆散させており、ミシェルさんに肉がとれなかったと怒られていた。


「……ていっ!」

「よっ……と!」


ファルが斜め上から棒を振り下ろしてきたのを、俺は身体をずらしてよける。
その隙に右足で棒を持っている腕を蹴り上げようとすると、向こうは半歩回りながら下がることでやり過ごし、視界に長い髪が広がる。
追撃しようとふみこんだところにファルの振り向きざまの一撃が飛んできて、身を反らせて避けようとしたとき。


「エイッ!!」

「……っ!」


襲ってくる棒が伸びた。
種は簡単、棒を持つ場所を変えただけではあるのだが、戦ってる最中にそれをされると間合いがずれて大変やりにくい。
その分難しいのだがやってのけたファルはすごい……と感心している間にも棒は俺の首に向かってくる。


「……よっと!」


俺はさらに体を倒し、手を突いてブリッジのような姿勢で棒をやり過ごす。
そして、避けようとした俺を追って体が伸び、不安定な姿勢になっているファル。


「さすがファルだ……なっ!」


ファルの技術の向上を褒めつつ、ブリッジから振り上げた足でファルのあごを蹴り抜いた。


「う……あう……」


不安定な姿勢ながらも後ろに跳んだのか、気絶させるつもりだったがまだファルは意識を保っている。
しかし、急所に一撃をもらったのにはまちがいなく、ファルは脳を揺らされてまともに動けなくなっていた。


「……お疲れさん」


そう言って俺は後ろから首をたたき、ファルの意識を落とした。


「うーん、間違いなくファルは強いな。これは俺、抜かれるだろうなぁ」


純粋な分析で、俺はファルに実力で抜かれるだろうと思い少し落ち込むのだった。
早ければ……数ヶ月で俺が打ち込めなくなるだろう。
今でも経験だけで何とかまわしているようなものだ、次回にはブリッジ攻撃も通用しないだろうし、着実に俺の戦い方の引き出しは潰されつつある。
魔力強化をすればおそらく勝てるだろうが。


「はあ……練習はしてるんだけどな……」


「……朝から元気すぎるの……」


呟きに眠そうな声を返したのは、家の扉から髪の毛がぼさぼさのまま顔を出したリリーだった。
どうやら俺たちの練習で目が覚めてしまったらしい。
リリーはそのままぽてぽてと歩いてくると、目をこすりながらファルの額に手をかざす。


「……軽い脳震盪なの。少し寝たら治るように、三半規管とかのふらふらも治しておいたの」

「ああ、ありがとう」

「無茶はしないように、なの。じゃリリーはもう一回寝る……」

「じゃあ朝ご飯は要らないな?今日は俺が作るけど」

「わけがないのっ!食べるの!」


一発で覚醒。
リリーは大急ぎで小屋に戻り、俺もファルを運んだ。
リリーは早々に部屋に戻り、俺は台所で朝食づくりだ。
今日は白ドレットでフレンチトーストに挑戦してみようか。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



少ししたら起き出してきたファルと一緒に朝食を作る。
倒れてた時間は15分、復活が早すぎると思うんだが。


「わあ、美味しそうですね!白ドレットって柔らかいけどあんまり味がないのに、こんな綺麗な狐色になるなんて!」

「味がないか?十分素でもいける味だが」


見た目は白いリンゴだが、味はまんま食パンだ。
生だけど。


「そのままでは少し物足りなく思うのが普通ですよ?貴族様だと、汲んできたワインに浸けて食べる方もいらっしゃるとか」

「……うわあ……」


料理技術が貧相なのは困るよね。
まあ、貴族なんかには絶対レシピ教えないけどさ。


そうこうしているうちに出来上がり、三人で朝食を取るのがいつもの風景だ。
俺が何かを作り、ファルがそれを横で学んで、リリーは食べまくる。

ああ、リリーは意外とたくさん食べる。
見た目は一番小さいのに、俺の食べる量の二倍は涼しい顔でペロリといってしまうのだ。


「ごちそうさまなの!さすがケントなの、最高なの」

「ははっ、ありがとな」


今度は何を作ってみようかな。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


食後は俺はリリーに科学知識を教えることになっている。
そもそもの発端は修行で頑張るファルに触発されてだったようだが、あまり体力的に強い方ではなく、適性も薄かったので魔力強化が使えるようになったあたりでやめている。
まあ、魔力の回復がピカイチで早いのはリリーなので、時速70キロそこそこで6時間は走れるようになっていた。
たぶん十分だろう、治癒師だし。

その結果、光魔法しか使えないリリーに対し、『魔法はイメージ』を成功させるべく光の物理法則や、回復に役立つ肉体についての生物知識とかを教えているのである。
その間、ファルは自主練したり子どもと遊んであげたりしている。
一回授業に参加したが、ものの数分で夢の世界へと旅立っていたからだ。
真面目な彼女だが、どうしても科学知識を習うのには向いていないようだ。

……別途で教える時間をとろうかな。


「……さて、そういうわけで光っていうのは物理的に考えると人間の手に負えるものじゃないだろうなって俺は思う。でも、この世界には魔法がある。魔法はイメージというのなら、生み出した光を完全に重ねることで強烈なエネルギーをもつ光線になったりするんじゃないかな、とか思うんだけどね」

「ありとあらゆる波の性質を同じに設定するってことなの?」

「ああ、しかもそれを空気のちりとかで散乱しないレベルにまで圧縮しないといけないから、きっと実現不可能なんだろうけど……。まあ、異世界にいた人間の夢みたいなものだよ、忘れて忘れて」


男の子なら憧れる時期あったよね。
ガ○ダムのビームライフルとか、魔○光殺砲とか。
かめ○め波は少し原理が違うかな?


「さて、次は生物知識だね……」


俺とリリーの勉強会はもうしばらく続く。


数ヶ月で急成長するファルたち。
謙人もがんばってはいるんですけどね。

次回は月曜日です。

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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