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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第04章 衝撃と出立

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第35話

頭を下げてくる村人の前でおたおたとすること数分。
やっと頭を上げてくれた村人達に今後の方針を聞くと、やはり村の再建だという。
20人そこそこしか残っていないが、公都に行けば仕事を求めている人たちを回してくれるらしい。


「あの地主って、村の土地を持っていたんですか?」


ミシェルさんに聞くと、困ったように彼女はうなずく。


「そうなのよ、村の土地そのもののほとんどはあいつの物のままなのよね……」

「なら、新たに開墾するとかは駄目なんでしょうか?」

「開墾は無理よ!どれだけの土地を耕さないといけないと……って、もしかして……」


俺はにやっと笑って言う。


「ここに無駄に力が有り余ってる人間がいますよ」

「しかしじゃ、そこまでさせるわけにはいかん。坊やは我々の恩人なんじゃ」


お婆さんも話に入ってきた。
大人達もこれからの話らしいと寄ってくるので、俺はちょうど良いと思って話し出す。


「どうせ公都から人が移住してくるんですよね?なら、俺も移住させて下さい!今俺は家がないんです……」

「そうなのか?腕前としてはCランクパーティーくらいはあるじゃろ?」

「まあ……見てもらった方が早いでしょうし。『ネームカード』」


流石にネームプレートは出さないように気をつける。
俺だって言いふらすつもりは全くないしね。
ただ、お婆さん的には俺はCランクか……。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

辰野 謙人(17)

パーティー
無所属

住所
なし

職業
無職

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「あらあら、ほんとに住所なしなのね……。良いじゃないですか、お婆さん。新生ドレア村の移民第一号はケントくんで」

「うーむ……よし、なら村最長老ゲルの名において、ケントをドレア村の民と認めようと思うが、どうじゃ?」

「いいんじゃねえの?子ども達も懐いてるし、何より恩人だ。逃げ出すような地主と同じような人でなしにはなりたくねえや」


よく日焼けしたおじさんが話に乗ってくる。
陽気に賛成してくれるし、周りの人達も同様であった。
しかしネームカードの証明レベルってすごいな。
見せたら信じてくれた、良かったよ。
せっかくだからファルを鍛える場所もほしかったし、そういう意味でドレア村がいい、という計算があるにはあるが……。

地主以外全員良い人みたいだしね!
いっそう何でファルが奴隷になったのか分からない。


「じゃあ、そういうわけでこれからどうします?とりあえず、今夜はここで休んで明日からここを拠点に開墾かしら」


ミシェルさんが意気込んで言うが、俺はそこで一つ提案する。


「今から、リリーとファルを迎えに行ってもいいでしょうか?俺が迎えにいくほうが早く合流できますし、安全ですから」

「あ、二人がこっちに向かっているんだったわね。今どの辺りにいるかわかるの?」

「ええ、おそらくはエルフの里のそばかと」

「ということは……1週間くらいかかる?」

「そこまでかかりません、明日には着きますから」

「……早いのね~。でも、少しご飯にしてからにしましょう。黒ドレットがあるから、みんなで食べてから、ね」


……黒ドレットは黒パンでした。
白ドレットはレア物だそうです。
パンが木になる異世界クオリティ、植物は子孫をどうやって育てるんだよ……。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



さて、黒ドレットを食べ終わってから『感知』を使うと、どうやら地主は元の村に戻っているらしい。
何人か別の人もいるようだがそれは誰かわからない。

面倒ごとを起こさないように釘を刺すことも考えたが、別のところを開拓するのだから関係ないと割り切った。
新生ドレア村にやってきたら考えよう。

さて、今俺はエルフの里目掛けて走っている。
リリーもファルも心配しているだろうし、あまり無理もさせたくない。
あまり強い魔物は出ないから安全なのだろうが、早くファルをミシェルさんに会わせてあげたいし。

途中で会えると思っていたので走ること2時間。
『感知』に二人の反応が映る。
元気にこちら目掛けて歩いているらしい。
少しすると遠くに姿が見える。
向こうも俺が立てている土煙に気付き、手を振っているようだった。


「ケント~!」
「ケントさん!村はどうでしたか!」


二人が駆け寄って聞いてくる。
俺はそんなに全力で走ったわけでもないので、息を切らすことなくその質問に答えた。


「平気だ、ミシェルさんも無事だよ。みんなが待ってるし、急いで村に向かおうか」

「お母さんも無事でしたか、良かった~……ありがとうございますっ!」

「ファルー!良かったね、なの!」

「ああ、気にしないで。ゴブリンしかいなかったし、俺でなくともきちんと準備があれば村人達も撃退できたと思うぞ」

「いえ、それでも助けてくれたのはケントさんですから!走らせてばっかりでごめんなさい……」

「それこそ気にするな、そのうち修行が終わったら走れるようになる……んじゃないか、たぶん。さて、村まで行くから、ファルは変身してくれるか?俺がリリーを背負って、ファルはリリーの方の上にでも乗ってくれると……」


話が進みそうにないので少し強引に話を打ち切り、走る準備をする。
と、俺のリュックサックが見当たらないのに気づきそれどころか、二人が荷物をいっさい持っていないことが分かる。


「二人とも……荷物は?」

「ママがリリーに腕輪くれたの。無限収納の腕輪で、荷物は全部その中なの」


少し嬉しそうに左腕を見せるリリー。
っていうか、アイテムボックスが存在するとはね……。
ますますファンタジーだな、うん。



さて、リリーとファル(猫)を背負って走りながら、道々で今までの状況を報告する。

「……というわけですよ。まあ、ゴブリン自体は全く手こずらなかったしな。お婆さんからCランクと言われたんだが、ランクごとの強さってどんな感じなんだ?」

「んー……そこそこ強い魔物の単独討伐と、弱い魔物の大群が処理できたらCランクなの」

「でも、ケントさんは『投げ組』潰してましたし、Bランクでもおかしくはないと思います」

「あの盗賊たちは俺が不意打ちしてるからな……。AランクやSランクは凄いんだな」

「そういう人たちは国家の虎の子、なの。エルフの里はAランクがゴロゴロいるから、侵略されることが滅多にないの」


そう考えると、カランさんには凄く手加減されていたらしい。
誠実に返答しなかったら容赦なく潰されてたんだろうな……。


「まあ、その話は置いておいて。村の話だけど、今のところ新しく村を開墾して、新しい村を作ることで決まってる。新しい村人は公都に伝えて回してもらうらしい。俺としてはファルと修行する場所もほしいし、開墾を手伝うつもりなんだけど……。勝手に決めて大丈夫だった?」

「それくらい、全然平気ですよ。それより、私の村のことでそんなに骨を折ってもらってて申し訳ないです……」

「リリーは全然大丈夫なの。話の内容から、生き残ったのは優しい村人さん達みたいなの。ファルをいじめないならそれでいいの」


そこで、俺は気になっていたことをファルに聞いてみる。


「何でファルは奴隷になったんだ?ファルが帰ってくるって聞いたらほとんどみんな喜んでたぞ?」

「生き残ったのは……土地を持たない人たちだと思うんです」

「……というと?」

「地主に土地を買い上げられて小作人になっていた人たちは、みんな村の郊外で地主の畑を耕してたんです。たぶんそれで、襲撃の時に逃げられたんだと思います」

「そういえば、郊外に住んでた人たちは村会議に出たことなかったの。村の中心に住んでた人たち、いけすかなくて嫌いだったの」

「そう、だから小作人たちには会議に参加できないので……賛成多数で奴隷にされたんです」

「……銀色、超きれいなのにな。俺は前の色知らないけど、普通に良いと思うぞ?」

「はう……ありがとうございます……」


何か口説いたみたいになってることに気づいたが、後の祭りである。
照れ隠しなのか、ファルは体を丸めると俺の耳を噛んできた。
……ファル、ちょっと痛い……。


「リリーは前の茶色も好きだけど、銀色も好きなの。ミシェルさんもそう言ってたの」

「ミシェルさんもそう言ってたのか。母はやっぱり強いんだな」

「うーん、ママは別格なの。五年前にお姉ちゃんが消息を絶ってから過保護すぎるの」

「お姉さんがいるのか?」

「いるの。フィオレンティナ・ミルエノン、なの」

「エルフは長命だからリリーは気にしてないの。さびしいけど……」


後ろを向けないが、少し寂しそうな声になるリリー。

「またすぐに会えるさ、な?」

「私もお姉さんにはお会いしたいです」

「……ありがとう、なの」


俺とファルの言葉に、リリーも少し元気が出たようだった。

村までの数時間は、そうやって話をしながら和やかに過ぎていった。


明日も投稿しますよ!

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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