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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第04章 衝撃と出立

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第30話

風邪引きまして寝込んでおります……
固まっている俺に対し、叔母さんは淡々と続ける。


「竜息吹、重量操作、超回復。この三つが真竜の持っておった固有能力じゃ。お主からは超回復の欠片くらいしか能力を感じん。それくらいなら、普通こちらの世界に飛ばす必要はないはずじゃぞ?」

「え、でも俺向こうの世界でも怪我は一瞬で治るだけだったけど」


まあ、それも向こうの世界では十分異様なものだけどさ。


「ふむ……。となると、妾がこちらを担当するようになってからあの世界もかなり進歩したのかもしれん。昔ならお主はこちらに来なくて良かったはずじゃ」

「……どれくらい昔?」

「うむ、人間換算でおよそ一万年前じゃの。その頃は向こうの世界もこちらとの差が少なかったわい」

「……」


一万年前って、新石器時代のはじまりですよ?
ちなみに、完新世のスタートでもあるが、これは世界史で習うんだよな。
世界史なら渡辺にぼろ勝ちしたけど、二年になって地理になってから勝てなくなったなあ……。
まあ、中世だったらまじめに魔女裁判も行われていたわけだし、こういう『イレギュラー』にもそこそこ寛容だったのだろうけど、現代になったらそういう『イレギュラー』ってあり得ないしな。
現代だったら俺の治癒能力は大変イレギュラーだったから、十分俺は放り出されただろうな。


「さて、お主が真竜なら少し話があるのじゃ。この世界のパーティー制を知っておるか?」

「ええ、パーティーを組んでランク分けや順位付けがされているとか」


ファルから話を聞きましたけど、今の俺はパーティー無所属、職業なしですからね。
今捕まったらテレビで『無職少年(17)』ってテロップが出ると思うよ…。
そういえば近所の浪人生が自嘲混じりに同じことを言ってたなぁ。


「それでじゃ、妾としてはお主がSランクの5番以内に達したら妾からの依頼を受けてほしいのじゃ」

「管理者サマが一民間人に依頼するわけですか?」

「妾という一個人が一真竜に依頼するのじゃよ」


……この加速みたいな感じの『手っ取り早い能力』で自分で解決したらいいじゃん。


「管理者権限でなんかしたらいいじゃないですか」


その思いを込めて面倒くさい思いのまま俺は口にするが、叔母さんは軽く手を振って言う。


「妾はこの世界の流れそのものには干渉できぬ。妾はただの管理者じゃよ。考えてみるがよい、マンションの管理人はマンションを勝手に改築できる権限を持っておるのか?」

「…持っていないね」


というか、よくマンションなんて言う単語を知ってるな。
まあ、叔父さんとかと喋る機会くらいはあるのだろう、管理者ホットライン的な感じの。


「つまり、Sランクの5番以内ならエルフでなくとも妾と話すことができ、妾も心配することなく話すことができるのじゃ」

「今話したらいいんじゃないのか?」

「実力者でないと妾は情報を渡すことができないのじゃよ。カランはS-3じゃったから何でも話せたが、シャルナの死亡がわかったからの…。カランのパーティーはカランのみになったからパーティーは解散扱いなのじゃ」


俺が来たせいで分かってしまったのか…。
というか、カランさんや母さんって世界第三位っていうことだよな、強すぎだろ…。
いや、解散扱いだから『元』ってついてしまうのか…。


「つまり、俺に依頼を出したいからパーティーを組んでさっさと強くなれということですか」

「そういうことじゃ。あ、メンバーならあの獣人とエルフの嬢ちゃんたちがいいじゃろう。彼女たちの隠れた素質は見方によってはお主以上のものがあるように見えるわい。あと一人は自分でいろいろと考えるとよいじゃろ、もう一人も女にすればあれじゃ、ええと…『はーれむ』?じゃろ?」


……なんでそういう話になるんですかね。
カランさんが止まっているとはいえ、目の前で俺そんなこと言い出せませんよ。


「…つまり、リリーの参加を叔母さんは認めるんですね?」

「そうじゃの、大丈夫じゃ。カランは妾が言ったらうんと言わざるを得んじゃろう」


さっすがリリー、世界樹さまも認めてくれているじゃん。
俺としたらこういう明るい二人とパーティーを組めるならそれが一番だし、叔母さんの後押しなら完璧だろうな。


「うむ?そろそろ加速の時間切れじゃ。そうそう、妾がお主の叔母とか言うのは秘密じゃ、聖霊さまと呼んでおくのじゃぞ」

「ええ、分かっていますよ」


……そんなに目立つようなこと誰が好きこのんでやるっていうんですかね。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



俺が瞬きをした瞬間、世界のスピードは元の速さに戻ったようである。
元通りリリーとファルが戯れ、カランさんが紅茶を飲んでいるままだった。
ここで、カランさんが口を開く。


「聖霊さま、今『加速』なさっておいででしたよね?」

「さささ、さあて、何のことじゃろうかの~?」


ーー思いっきりばれてんじゃん!

という俺の心の中の突っ込みは置いておいて。


「まあ、聖霊さまの気まぐれは分かりませんので」

「…それはそれでひどくないかの?」


どうやら、そういうはっちゃけたことをするのはいつものことらしい。
しかし、加速に気づくとは流石世界第三位というわけですか……と俺はポーカーフェイスを保ちながら紅茶を飲む。

ーー俺が一緒に加速してお話しした内容を聞かれると困るからねっ!


「あ、ママ!リリーも世界樹さま呼べたの!」

「それはそうね、でもあなたは自分の身を守るすべを持たないでしょう?」

「光魔法は使えるの!」

「光魔法は魔物にも人間にも効果が薄いのは分かっているでしょうに。治癒しかできないと言っても過言ではないではありませんか」


……カランさんがマジメ口調で話すと大変居心地が悪いのは俺だけだろうか?


「族長さま、さきほど世界樹の聖霊さまを呼べたらっておっしゃっていましたよ?」

「ケントは普通に強いからお主の愛娘はきちんと守ってくれると思うがの」


ファルと叔母…聖霊さまからの援護射撃も入り、見るからにカランさんは劣勢である。
カランさんは唇をぎゅっとかみしめると、ぐるりと俺の方を見た。


「私の娘が少年より先に死んだら少年を殺します」

「は、はい…」

「あと、私の娘を置いて先に死んでも少年を殺します」

「…え、でも俺それだったら死んで…」

「殺します」

「いや、だから…」

「殺します」

「…はい…」


有無を言わせぬ口調と強烈な眼光に、俺は首を縦に振るほかなかった。

ーーつまり死ぬときも一緒ってことだねっ!

なんて軽口は言えない、言わないよ。
……殺されるし。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



結局、カランさんはリリーの旅に同意をせざるを得なかった。
自分の言っていたことを守れというファルの強烈な視線に屈したようである。
しかし、ファルの言葉遣いは完全に敬語であったし俺から見て礼儀作法に脅迫する動作が含まれていたわけでもない。
強烈な視線と天使の微笑みでカランさんを屈服させたのだ。

……おそらく世界最強の女性はファルかもしれない。


今、リリーとファルは持っていく荷物を整理中である。
叔母さんは仕事があるといって早々に光になって消えていたので、おそらく世界樹のなかで仕事に忙殺されていることだろう。
俺は荷物の用意からは自主的に退場し、カランさんは途中で放り出されていた。

世界樹の根っこに俺とカランさんは並んで腰を下ろしていた。
チチチ…と小鳥が鳴き、木漏れ日があたりを照らしている。


「ねえ、少年」

「…なんですか?」

完全にまじめモードであるカランさんに、俺も少し姿勢を正して返事をする。


「一つだけ約束してほしいことがあります」

「はい、なんでしょう?」

「『加減』はしても、『容赦』はしないでください」

「…どういう意味でしょうか」


カランさんはこちらを向いてはいない。
しかし、その声色は真剣そのものであった。



次回投稿は27日予定です

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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