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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第01章 突然の急展開

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第3話

少し古びた町の通りを、二人の高校生が歩いていく。皆が振り返るような美少女と、冴えない男の組み合わせだ。デートに間違えられそうだが、二人の話している内容はおよそデートとはいえない、重たい話だった。




「…私ね、小学校の頃はここには住んでなかったらしいの。それで、中学1年生の時だったかな、男に襲われかけたの。それで、ああもう終わりだって思ったら意識が飛んじゃったんだ。結局、今もそれより前の記憶は戻ってこないんだけどね」

「……」


俺は黙って耳を傾ける。渡辺は俺を見ることなく、前を見たまま話を続けた。



「それで、ふっと目が覚めたとき、同い年くらいの男の子が襲おうとしていた男に立ち向かっているのを見たの。でも近くには私の体が横にあったし、幽体離脱!ってびっくりしてね、そしたら男の子が男を捕まえて、私の体に寄ってきたんだ。それで、『怖い思いかけてごめん』って言ってくれてくれた」

「…それって、どこだ?」


ふと尋ねた俺に、渡辺は首を横に振った。


「多分、富士山のそばだったと思うんだけど…。男の子がそう言ったらまた意識がなくなって、目が覚めたら中学3年生だったから…」

「そっか。」

「うん、だからね、まず彼にありがとうって言いたいからね。話はそれからにしたいの」


そう言って微笑む渡辺は輝いて見えて、思わず俺ははっとした。彼女は輝いていて、その好きなのであろう人について話す姿は明るかった。俺ははっきりと分かる胸の痛みを押さえながら、呟くしかなかった。


彼女が好きだったから…というわけではないと思う。少なくとも、もっとはっきりした理由があった。
彼女の話は聞き覚えがある。彼女を助けたのは俺の師匠だ。しかも、彼はもうこの世にはいないのだ。彼女が望む人に会うことはもう叶わない、こんな不条理に俺はため息をつくしかなかった。



「もしかして、謙人くんこの話知ってたりするの?」

「ああ、たぶんだけどその人が誰かも知ってると思う…」

「本当!じゃあ、これが終わったら教えてもらおうかなっ」



なんで後回し。
そんな疑問が顔に出ていたのか、渡辺は笑って付け加えた。


「だって、大事な話は嫌なことをきちんと消化してから聞きたいもん」

「そう…か」

「よしっ、じゃあ謙人くんの秘密も何か聞かせてよ!私ばっかりじゃなんだかずるいでしょ?」



また突然話が変わったが、これは重たい話を続けないようにしようという配慮だろうとわかったので、俺はそのまま話の流れに乗ることにした。



「秘密?男の秘密なんて聞いても楽しくないぞ?」

「いいじゃん、教えて?」

彼女が話してくれた秘密はとても大きなものだったなあと思いつつ、それに釣り合うような秘密を考える。


秘密といっても…と考えて、誰にも言ったことがない自分の性質に思い当たった。
彼女は言いふらしはしないだろうと思った俺は、ポケットからカッターナイフを取り出した。



「ちょ、ちょちょちょっと!どうしたのいきなり!」


歯を出して腕に当てた俺のしぐさに、血相を変えて止めに入る渡辺。


「ま、まだ人生は長いから!あきらめるには早いから!」


慌てる渡辺とは対照的に、ケロッとした顔で俺は返す。


「いや、死ぬつもりも怪我を残す(・・)つもりもないし」

「ほんとに?ほんとにほんと?」

「当たり前だよ、だからちょっと手を離してくれ」


疑いの目を向ける渡辺に対し、ニヤニヤと笑う俺。
ちょっとびっくりさせてやろうと思い、渡辺が手を離した瞬間、俺はカッターを思いっきり引いた。



「ちょっ、本気!こら、血が…?」


目の前でみるみる治っていく怪我に声も出ない様子の渡辺を見て、俺は思惑が当たったことにニヤリと笑った。


「怪我が一瞬で治る化け物じみた人間ですよ、俺」


俺がそう言ったとたん、渡辺が顔を上げた。
そして、次の瞬間。




バシッと音を立てて、俺の頬を渡辺がひっぱたいた。




「な、何です…」

「化け物じゃないっ!自分のことを化け物なんて言っちゃだめ!」


泣きそうな顔で言う渡辺に、俺はニヤニヤ笑いを引っ込めて固まる。


「謙人くんは優しい人間だよ。自分でそんなこと言ってたらだめ」

「…すまん、悪かった」


俺が謝ると、渡辺は笑って答えた。


「うんっ、分かればよろしい」


こんな風に言ってくれる人は世の中には全然いないことを俺はわかっている。そんな中、認めてくれる人が近くにいることに俺は少しうれしい思いがした。
渡辺はその場でくるりと回ると、俺に背中を向けながら言う。


「きっと誰にも言ったことがないんでしょ?教えてくれてありがとう」

「そりゃお互い様だ」


軽く答えながら前を見る。


「それって、生まれつき?」

「だと思う。気付いたときにはケガの治りは早かった」

「うーん、じゃあ風邪も引かなかったりするの?」


その質問に、俺は思い返してみる。


「そう言えば…風邪引いたことがないな」

「インフルエンザも?」

「ああ、予防接種すらしたことがないぞ?」


すると、渡辺は振り向きざま明るい口調で口にした。


「それはうらやましいね…。私は身体は弱い方だから、そういうのはちょっと羨望の的かも」

「確かに、学級閉鎖のときもピンピンしてたからなぁ。食中毒もスルーだったし、超便利」

「そうかぁ…。おっと、あれが西高だね」


話しながら歩いていたせいか、俺たちはいつの間にか西高のそばまでついていた。


「さて、到着だな。さっさと終わらせようか」

「そうだね、さっきの話も聞かなきゃだし」

「だな」


そう話しながらも、性質のおかげで腫れもないはずの左頬が、まだかすかな痛みを感じたのは気のせいだろうか。


そんな疑問を抱えながら、俺は西高の校門をくぐる。


叩かれても、こんな風に心が温かくなるのならいいかもしれない。
聞くところによっては特殊な趣味の持ち主に見えるぞ、と自分に突っ込みを入れつつ、俺は周りを見回した。


古びた校舎に割れたガラス。落書きの目立つ壁に、煙草の吸い殻。
あまりの荒れように呆れつつ進むと、渡辺が立ち止まった。


「三方さんという方のところへ案内していただけますか?」


話しかけた相手は金髪の小柄な男。彼は黙って歩き出したので、付いてこいという意味と判断する。


(校内にはそんなに大人数はいない。あの小柄なねずみ男も別に強そうじゃないから下っ端だろう。校門からはあまり離れたくないな…)


のんびりした考えは一旦仕舞って、俺は頼まれた仕事を全うすべく準備する。
両親の言ったことの一つだ。

『言ったことは必ず守れ』


そして俺は心の中で呟いた。


(お前ら、彼女にケガさしたら生まれてきたことを後悔させてやるからな?ま、ふつうの高校生の喧嘩には負ける要素がないがな)

ブックマークや評価してくださった方、ありがとうございます!

02/11 誤字訂正
02/12 タイトル修正

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


http://ncode.syosetu.com/n4562cu/


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