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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第04章 衝撃と出立

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第29話

「な、そ、それは……嫌なのっ!」


抵抗する理由がすぐには思いつかなかったんだな。
少し抜けてる感のある言葉に、ファルも苦笑気味だ。


「仕方ないでしょ~。一つの属性しか使えないエルフとはいえ~、エルフであることには間違いないのよ~。エルフが狙われるのに~看過できるわけがないじゃな~い?」


一方のカランさんは完全に理論武装しているが、俺の予想からすると……


「……本音は?」

「リリーちゃんのお婿には~少年は認められないわ~」


……おい。
さっきの騒動を思い出してファルの方を窺うと、ファルはにこにこと微笑んでいる。
が、目は笑っておらず、その視線の先のカランさんが凍り付きそうな温度で見つめていた。
カランさんもその視線が突き刺さっているせいか、顔がひきつっている。


「……じ、冗談よ~。ひとまず~リリーちゃんは世界樹さまとお話しできるまで~」

「はあ、世界樹さま、ですか?」


ファルが聞き返すが、それに答えたのはカランさんではなくリリーだった。


「世界樹に宿っておられる聖霊さまなの。エルフの魔力に、気が向いたら答えてくれるの。今生きているエルフでお話しできるのは……」


とここでリリーが言葉を切り、うんざりした目つきでカランさんの方を見る。


「私だけね~。来ていただけたら旅に出ても良いわよ~」

「不可能なことじゃないんですよね?」

「もちろんよ~!」


魔力の感じではなんか、うずうずしているように思えるのは俺だけだろうか?
さっきから外の魔力の光がこっちに寄って見えるし、『光が踊る』を体現してるように見えるが……。
そうこうしているうちにリリーは腕をまくり、気合い十分になっているようだ。


「絶対一緒なの!絶対成功させるの!」


そう言うと部屋の真ん中に立ち、リリーは目を閉じる。
ゆっくりとリリーの魔力が体から染み出してくる。
その色は薄く青みのかかった緑色で、それはこの部屋の中いっぱいに広がった。
触れる魔力は温かく、澄んだ気持ちが伝わってきた。


「っ!!」

「あらあら~、本当なの~?」


突然リリーのそばに広がっていた魔力が収束を始め、部屋に風が吹いた。
俺が息をのんだ横でファルは一心にリリーを見つめ、カランさんは口調こそ変わらないものの、少し声色が真面目なものに変わる。


そして、部屋にカッと白い光が溢れた。


「くっ……この光は?」

「間違いないですね、世界樹さまです。まさかリリーちゃんが成功させるとは……少し驚きです」


流石に成功したとわかったらのんびり口調のままではいられないらしく、カランさんが真面目な口調へと変わる。
俺も魔力を目にこめて強化し光の源を覗いてみるが、ただ眩い魔力が目に映るだけで何が起こっているかはわからない。
少し目を細めたまま待っていると徐々に光が弱まりはじめ、人影が二つ見えてくる。
そこには、背中に一対の透明な羽を持つ少女と、その腕に抱かれているリリーの姿があった。脱力はしているものの、リリーの意識はあるようだ。


「リリーっ!」

「心が弾みすぎてこの子から魔力を吸いすぎたわい。妾も少し焦りすぎたのう」


ファルの声に応えたのは、その羽の持つ少女だった。


「お久しぶりです、聖霊さま」

「そうじゃの、姿をとったのはお主の結婚式以来じゃったか。変わらんの、カラン」


見た目若いのに、喋り方が古いな。さすが世界樹とやらだ。


「そこのガキ、妾に失礼ではないかの?」

「……」


おお、怖い怖い。俺の頭の中を正確に想像して言い当ててきたよ。
なんか、この世界の女性って本当に強いよなあ。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「妾がこの世界樹の聖霊じゃ。エルフたちに呼ばれたら出てきて話相手にさせておるからの、暇なんじゃよ」


あっさりテーブルのそばに座ると、そのまま紅茶を飲みだす聖霊さま。

……全く神聖な感じしないな。

リリーはどうやら魔力の使いすぎだったらしい。
今はファルに膝枕をしてもらって思う存分甘えている。

綺麗なワンピースを着た銀の髪の猫耳少女に、緑の髪のエルフの少女が戯れる風景。


「お疲れさま、リリー」

「ふにゃ~、がんばったの~」


……和むわあ。

と、紅茶を飲んでいた聖霊さまがこちらを見た瞬間、ギンッと音を立てたかと思うと……。


「な……に?」


世界が、止まった。
カランさんはティーカップを口に運ぶ途中で固まっているし、リリーとファルは戯れた瞬間で石のように動かない。

俺が息を呑んでいると、目の前の聖霊さまが口を開いた。


「妾たちふたりが加速しているだけじゃ。彼女らにはなんの問題もない」

「……流石、聖霊さまですね。何でもありですか」


少し常識外れな状況に、俺は軽い皮肉しか返すことができなかった。
そんな皮肉など何処吹く風で、聖霊さまは続ける。


「お主が異世界からの真竜の末裔か。シャルナ嬢ちゃんによう似とるの」

「そうですか?」


向こうの世界で似ているって言われた記憶はない。
そんなに似ているとは写真を見て思ったことがなかったし、光弘叔父さんもそんなことを口にしたことはなかった。


「うむ、魔力の色がそっくりじゃ。しかし……」

「しかし、とは?」


突然眉間にシワを寄せ、穴のあくほど俺をじっと見つめる聖霊さま。
そこまでじっと見つめられるとかなり居心地悪いです。


「お主、本当に真竜か?能力の一切が見当たらんぞ?」


ーー何だと?

能力まで覗かれていることを言われ、俺は警戒態勢に入る。
一旦体の周りに魔力をまとい、すぐに脱出出来るように身構えたところで、聖霊から呆れたような声がかけられた。


「妾はこの世界の管理者じゃよ。さすがに妾の作ったネームプレートや、持っている能力くらい勝手に読めるわい」

「……それを、信じられるとでも?」

「はあ……お主、こっちに来るときに会っておるじゃろう?妾の父親があのクソジジイじゃよ。妾の名はシーレ。当然、あのジジイの呼び方は想像がつくじゃろう?」


光弘叔父さんがみーくんなら……。


「……しーちゃん?」

「そういうことじゃ。なら、お主の父親も呼ばれ方も分かるじゃろう?」


(たつ)()()(ひろ)


「……にーくん、でしょうね……」

「大正解じゃよ。つまり、にーくん、みーくん、しーちゃん。ついでに長男のイルスでいーくんの、四兄妹じゃよ」


いち、に、さん、よん!というわけだ。


「父さんと叔父さんだけ名前が違う感じですね」

「ああ、あのジジイが漢字を作るのにハマってた時期じゃったからな。ああ、兄弟間で百年単位の年齢差があるからの?その間にハマってたという残念組なのじゃよ、二人は」


……父さんも苦労したんだなあ。


「分かりました、信じましょう。確かに、話しぶりからして間違いなさそうです。では、初めましてシーレ叔母さん」

「そういうことじゃ、まあ丹弘兄が子供をつくるとは思わなんだがなあ……」


あの爺さんと血のつながりがあるということを考えると、何となくこのしゃべり方によく似た部分があることが分かる。
だが、さっきシーレ叔母さんの言っていた……


「能力の一切が見当たらない、とは一体全体どういうことなんです?」

「うむ、真竜というと必ずある能力を持つのじゃ。その能力が三つあってな、お主は持っておらん。ネームプレートにあるのだから一応は真竜で間違いないのじゃろうが、そういう意味では、お主は真竜ではないのじゃ。持つ能力が弱すぎる」


ーー何だって!?

その叔母さんの言葉は、少なくない衝撃を俺に与えた。
それは、俺を異世界に飛ばした爺さんと叔父さんの言葉、そして母さんの手紙とは真っ向から対立する内容だったのである。


次回更新は木曜日の予定です。

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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