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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第03章 エルフの里

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第26話

「……母さん、だって?」


その衝撃的な一言に俺は完全に呆然としていた。そもそも会ったことのない同族が死に絶えている、と聞いてもそこまで衝撃ではなかったが、目の前のエルフ族長が母さんの大切なパーティーメンバーだったとは……。世界とは思いがけないことで満ち溢れているということなのだろう。


「続けますよ?私のパーティーは獣人一人、私、シャルナの三人パーティーでした。あの大戦の時、獣人はシャルナを異世界に送るために命を落としました。
私は悪魔たちの呪いを受け、その時から私は族長でしたので、エルフたちは他の種族から妬まれ、疎んじられるようになりました。その時以来、エルフたちを奴隷にしようというものたちがこぞって私を襲いに来ました。
族長という存在は独特で、その結果が同族全体に響くのです。私は悪意ある者達に負けるわけにはいかなかったのですが、パーティーが壊滅状態では何が起こるかわからない。そこでこの森にこもり、迷わせる結界を張って来られないようにしたのです」


カランさんはまた前に向き直り、歩きだした。そこに浮かぶ表情は分からないが、俺には鼻をすする音が聞こえた気がした。


「そして、この三百年。私のパーティーメンバーはネームプレートによると一人が死亡、一人が不明扱いになっていました。ネームプレートで不明なんて出た例を聞いたことがありません。そこに一縷の望みをかけていましたが、昨日でしたか、ネームプレートを見たら『死亡』となっていました」


多分俺が来た時のことだろう。この世界の管理者さんが俺の情報を読み込んで、適応できる情報を入れたのだ。三百年の間を耐えてきたカランさんの気持ちは、俺には到底計り知れないものだった。カランさんはまた、話し続ける。


「時を同じくして、リリーちゃんからの連絡も突然切れました。こちらは生きているのはわかったものの、何が起こっているのかはさっぱりわからなかったのです。
そんな状態でしたから、かなり私も思う存分やりました。特にケント、あなたにはひどい目に合わせましたし……。
お二人には大変ご迷惑をお掛けしました、申し訳ありません」


「……えっと……。族長様は、三百歳を優に超えていらっしゃる、ということですか?」


ファルが、おそるおそる尋ねる。女性にとっての年齢のお話ってかなりデリケートなんだろうに、大丈夫か?と思うのだが。その質問にカランさんはにこっと微笑んで言う。


「そうですね、今年で483歳になります」


長老だ……。
でもそう考えると、うちの母親も寿命で死んだわけではないからそういう点ではこの人とそう変わらない年だったんだよな。関ヶ原の戦いよりも前から生きている、と考えたら強烈だわ。ザビエルくらいだな、時代的に。

そんな感じでびっくりな内容が立て続けに起こっているところに、ファルの耳がピクッと動いた。それと同時にファルが上を向くので、俺も見上げてみると、いつの間にか世界樹に着いており先の見えないくらいの高さに聳えていた。そして……。


「ママー!早くファルちゃんたち連れてきてほしいのっ!!」


上から元気な声が降ってくる。それを聞いた瞬間、ファルの顔は太陽のように満面の笑顔で輝き、その方向めがけて叫んだ。


「リリーッ!!!」


ファルはすぐにぱふんっと音を立てて猫になり、猛然と木登りを始めた。あまりに勢いづいていたので止められなかった。というか、あの瞬間のファルを止められるだろうか。大切な友人の意識の戻った瞬間である、気が急かないほうがおかしい。
俺とカランさんは置いてけぼりを食らった形だが、心の温まる様子を見れて満足だった。


「さて少年〜、私たちも行きましょうか〜」

「ええ、でも行き方ってあるんですか?」

「ええ〜、変わらず一つだけよ〜」

「まさか……」

「そう〜、いざ、木登りよ〜」


ファルみたいに変身できない俺は、この体で登らなければならないのか…。


「魔法は使えないから〜、身体強化だけで乗り切ってね〜。あと〜、葉っぱならまだしも〜枝なんか折ったら〜、世界樹の魔力が少年に〜襲いかかるから気をつけてね〜」


そうカランさんは言い残すと、身軽にひょいひょい登っていく。ズボンだから思う存分下から見上げて、どの枝を使っているか確認しようとしたが、あんぐりと口を開けることになった。
五メートルくらい上の枝を直上とびで掴んだかと思うと、鉄棒の要領で大車輪のように体を回転させ、そのまま上に飛び上がってまた五メートル上の枝に掴まるのだ。当然、その間には他の枝や木の葉が茂っているというのに、体は一切それらに触れていないのだ。


「あれどうやってんだよ……」


唖然としているとカランさんはもう着いていた。途中でファルも追い抜いているだろうが、もう目的地らしい枝の上で手を振っている。


ざっと五十メートルか。


それを十秒かからないくらいで登ってしまっているのだ。
まあ俺も蹴って上がっていくぶんには問題ない距離である。が、枝を折らずに登れるかというと……。
魔力強化の弊害をうまく掴めているわけではない今、そんなことをして辺り一体の世界樹の魔力が俺に襲ってきたら簡単に死ねる。真竜だというのなら、翼くらい欲しいものだが、ないものをねだったところで何にもならないのだ。


「五十メートル……。魔法飛んでくるより落ちるほうがマシだし、気合で飛び上がるか」


決定内容がやはり脳筋で自分で悲しくなる。だがそれしか手はないわけだし、やりますか!

まずは丹田のあたりの魔力溜まりを意識して、体中にぐるぐる回していく。その後、体を作っている一つ一つの細胞に魔力を通していくイメージで強化していくのだ。
前自分で掘った穴よりも遥かに高いので、ひとまず全力で体中を強化したところで気付いた。


「このまま跳んだら地面砕け散るよなあ…。地面も強化しないと……はぁ」


別のものにこめた魔力が戻ってこないのは実験済みだ。無駄な出費に心を痛めつつ、周囲五メートル四方くらいをガッチガチに固めておく。


「よーし、さん、に、いち……。だあっ!」


変な掛け声になってしまったが、俺は全力で地面を蹴った。上に何もないところまで移動してからの垂直跳びだったのだが、蹴り上げた瞬間俺は焦った。
魔力が蹴り出す直前、地面にかなり吸い込まれたのだ。おかげでほぼ枯渇状態にまで減ってしまっている。


「やっべ、初速足りてないっ!」


それだけならまだしも、吸い込まれた魔力が思いの外多く、蹴り出すための魔力が足りなかったのだ。このままでは間違いなくあの枝に届かないが、他になすすべもない。


「とりあえずっ…届けっ!」


祈ることにした。
グイグイ横の風景が流れていくこと数秒。
ところが当然ながら物理法則は無情である。俺の目の前後三メートルくらいで上昇が止まった。


「……無理だったか…」


このまま落ちたらそこそこのクレーターを作るだろう。魔法で襲われるかなーと落ちた後を考えたその時。
目指していた枝からひょいっと顔をのぞかせたのは、緑の髪のエルフ、リリーだった。


「微妙に足りないの。世界樹様、助けてあげてほしいの」


そんな声が聞こえた瞬間、上から一本の枝が伸びてきて俺を引っ掛け、残り数メートルを引っ張り上げた。

が、俺の脚の間を通して引っ掛けて俺を持ち上げたので、木の枝は俺の局所に大ダメージを与え、俺は枝の上で押さえながら七転八倒する羽目になる。


「っ!〜〜!」


声にならない痛み。固く目をつぶり痛みをやり過ごす。これを男性諸君なら分かってくれるだろうか。

ようやく痛みも引きはじめ、薄目を開けた先にはにやにやしているカランさんと、それによく似たリリーがいて、リリーが俺の目が開いたのを見て話しかけてきた。


「ごめんなさいなの、そこまで痛いとは思わなかったの」

「…あぁ、気にするな、大丈夫だ……」


俺とリリーとの対面は、なんとも締まりのない形で始まったのだった。



幕間を挟んで三章はおしまいです。
次回は4月11日更新の予定です。

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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