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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第03章 エルフの里

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第24話

「そういえば、私ケントさんに一つお願いできるんでしたよね……」


い、今このタイミングでその話を持ち出してきますかっ!?


「いや俺もそりゃファルと仲良しらしいリリーとは話してみたいけどさ、未だに話したことのない相手と結婚ってあり得ないでしょ、ね?」


必死である。わたわたと手を振り、冷や汗をだらだら流しながら俺は言うが、それはなかなかファルには通じなかった。


「そうですか、リリーは可愛いですからね……」

「俺そんなこと言ってないよねっ!」


俺の悲痛な叫びもあまり耳に届いていないらしい。ちなみに、この状況を生んだ張本人はまたもぐもぐとご飯を口に運んでいるし、俺の鮭もちゃっかりと奪っている。ファルシアさん悪の権化はこっちです!


「……決めました」

「な、何でしょうか?」


ファルはばっと顔を上げて言う。その表情は想像していた無表情とか、笑ってない笑顔とかではなかった。
思いついた!とばかりにきらきらして笑っているのである。


「私がケントさんに勝てるようになるまで、私に修行をつけてもらいます!」

「え?」


かなり突拍子もないアイデアらしいものが出てきた。修行って、どういうことなんだ?


「いや、それはいいけど何で修行なの?」

「それは後です!受けてくれますか?」

「は、はいっ!承りましたっ!」


気迫に圧されて明確に返事をしたときだった。
俺の体からそこそこの量の魔力が飛び出した。その魔力は虹色に輝きながらファルの方へと飛び、ファルの中に入っていく。一方ファルの方からも虹色の魔力が俺の中に飛び込んできた。それは俺の体に何か悪影響を与える様子もなく、ちょうど心臓の近くで暖かい波動を放ち始める。そこにあることが別に苦痛ではないけれど、そこにいるということを明確に主張する感じだった。


「……これ、何?ファル、分かる?」

「い、いえ…。私も何がなんだか…」


混乱している俺たちに、カランさんが箸を置いてこちらの方を向く。ちなみに俺の鮭はほんの一口しか残っていない。食べすぎじゃね?


「ごちそうさま~。さてあなたたち~、契約魔術なんてすごいもの持ち出すわね~」

「「契約魔術?」」


また物騒な単語が出てきたよ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


それからカランさんは契約魔術について説明してくれたが、あの間延びした口調だったので理解するのにかなり時間が掛かった。俺もファルも理解した時には、もうすぐリリーの起きる時間になっていたのだ。


契約魔術とは、人と人との間にした約束を守らせるための魔術だ。高額な買い物、特に武具や家なんかを買うときに使われるらしい。契約魔術には三種類あって、一つがそういう買い物なんかで使う軽い契約。この時は使う魔力量も小さく、効果はほんの小さなものだ。例えば、支払いの期日には必ずどこどこの広場に来ること、とからしい。
二つ目が今回俺たちの間に出来たもので、約束の中でもかなり重めの契約。使う魔力量は多めだが、必ず守って欲しい時に使われるそうだ。そして効果は……。


「約束を破っていると痛みが走る、か…」

「ケントさん、ごめんなさい…」

「いや、約束を破らなければいい話だから、な?」


ファルは気にしているようだが、カランさんによるとこれは軽いものらしい。双方の合意が有れば痛みもある程度抑えられるし、あまりに遂行に差し障りがあるとき、例えば突然誘拐監禁された、とかだったら痛みが走らない、という空気を読める仕様なのだ。当然、約束を守るという強い意思が前提だが。誰がそんなふうに決めているのか?と聞いたら、「世界の意思よ〜」と返ってきた。うん、もう気にしないでおこう。
そして、三つ目が完全な契約である。破れば即死、それも約束したもの全員である。これは本当に愛し合っている夫婦とかがたまにするらしい。


「魔術を発動させたのはファルちゃんだけど〜、その自覚はなかったのよね〜」

「はい、すみません……」

「いや〜、でも魔力的には三つ目の契約になってもおかしくなかったのよ〜。実際魔力量は少年より多いし〜」

「そういえば、俺より多いなあ」


言われて目を魔力で強化してみれば、魔力量は普通に俺を上回っていた。それはまあ、お腹のあたりに魔力の光があるんだがそれが俺よりも大きくて明るいのだ。ちなみに、カランさんは俺と同じくらいである。


「少年も〜、世界で珍しいくらい多いけど〜、まあ〜種族として当たり前かしら〜」

「まあ良かったよ、大事にならなくて。な、ファル?」

「…私、魔力の制御も魔法についても習ったことなかったので……。これからどうしたら良いのでしょう?」


心配そうな顔でファルが言う。確かに、突然魔力がどうとかなったら大変だろうしな。俺はまあ、種族適性というか使い方がすぐ何となく分かったから良かったものの、これからは色々と修行していかなければならないのだろう。


「少年に教わるしかないわね〜。彼が先生になってくれるわよ〜?真竜様なんて〜、この上なく贅沢な先生役よ〜?」


……そういえば、先生は俺がする約束でしたね。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「さて〜、話も終わったところでリリーちゃんも起きる頃だし〜、移動しましょうか〜?」

「じゃ食器だけ片付けてからな。あと数分くらい待てるだろ、カランさん?」


話をカランさんが切り上げたので、俺も食器を洗おうと立ち上がる。鮭を焼いたからか、かなり皿も魚の油が付いてしまっているし早めに洗ってしまったほうがいいだろう。それを聞いたファルも包まっていた布団から慌てて立ち上がった。朝からずっと隠していた布団が解け、服が見えたのだが…。


「あ、私が洗いますよ!ご馳走になりましたから……ケントさん?」


俺は言葉を失った。
きちんと風呂に入り、食べて寝たお陰で髪はつややかな銀色。そこに可愛らしい耳がのぞく。そこまではずっと見ていた様子であり、そこに驚いたわけではない。

ファルが着ていたのは、真っ白のワンピースだった。
エルフの技術か、布団にくるまっていたのにシワ一つない。全く余計な装飾はなく、胸元には明るい水色のリボンがあしらわれているだけだったが、それこそが最高の選択だろう。


「……あう……そこまで無言で見つめられると恥ずかしいです…」

「少年〜、女の子に視線で穴を開ける気かしら?」

「ご、ごめん。でも……最高に似合ってると思う、うん」


何とか再起動したが、これは凄い。日本のミスコンにでも出したら一発で優勝だ。あ、でも耳と尻尾は意見が分かれるところかもしれないな。


「…じゃっ、私片付けますねっ!」


ファルは未だにフリーズ気味の俺からささっと食器を奪って、台所に逃げこんだ。顔が真っ赤だったけど……俺のせいだよな、うん。


「少年〜、女の子泣かすんじゃないのよ〜」

「カランさんもたまにはまともですね」

「あらあら〜、失礼ね〜」


そりゃ女の子に限らず、友人は一人も泣かしたくないよね。つい最近でも渡辺を泣かしてるからなあ、きちんと泣かさないように振る舞わないと。


「どうかしら〜?リリーちゃん諦めてファルシアちゃんにしとく気になった〜?」

「やはりまともじゃなかったですねカランさん」


食えたから良かったのか、またもや食事前の話に一気に立場を元通りにしたカランさん。やはりご飯あげなければよかったかなとも思うけれど、俺は寛大な心で許してやる。


そうこうして数分が経てば、もう食器洗いも終わる。


「もう行けます、お待たせしました!」


ファルが顔だけ出して台所から言う。恥ずかしいからか俺の後ろからファルは来るらしい。ごめんなさい、ビビらせまして。


「じゃあ〜、ついてきてね〜」


やっとリリーと会えるということでファルもそわそわとしている。何というか、見慣れないおもちゃの前の猫のようで少し心が和む。と、ファルがカランさんに尋ねた。


「どこに行くのですか?」

「もちろん、世界樹よ〜」


新年度がスタートですね!
もうニュースとかだったら雰囲気変わってるところもありましたけど。
次回は4月4日土曜日の更新予定です。

2015/07/09 微修正

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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