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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第03章 エルフの里

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第23話

ファルのお着替えシーンはちょうど下着をつけただけというある意味超完璧なタイミングだった。


お巡りさん、俺逮捕されますね。


さて、昨日の轍を踏まぬよう一旦亜音速で台所にもどり、ドアを閉める。そしてドア越しにファルに呼びかけた。


「ファルシアさんごめんなさい。着替え終わったらきちんと謝りますので、一旦着替え終わったら言って下さい」


もちろん、持っていた盆は流しの台の上に置き、きちんと正座して頭を下げている。ちなみに土下座とは違うんだぞ?きちんと正座して礼をするというのは。


「少年~、ファルシアちゃん今猫よ~?」

「…元に戻ったら言って下さい、カランさん」

「ええ~、いいわよ~。でも~、こんな簡単に変化しちゃう獣人って~、初めて見たわ~」


どうやらまた猫になってしまったらしい。しかし、ファルの変身の頻度は普通じゃないのか?


「どういうことですか?」

「変身して~、動物の姿になる~。これかなり魔力使うのよ~。ましてや無意識なんて~、普通の獣人には年に一度レベルじゃないかしら~」

「でも昨日もファルは…」

「そうなのよね~。すごい魔力持っているんじゃないかしら~?」

「…それは本人に聞きましょう。余裕が出来たので今からおかず増やしますよ」

「あら~、食べ物で釣るのかしらー?」

「……」


はい、そのつもりでした。図星すぎて返事は出来ないが、ご飯一品増えるのはそれはそれでよいことだ。まあ、とりあえず酢の物でも作ってみようか。

……流石に怒られるだろうな、うん。二度目だし。
後で謝るけど、それでもご飯で幸せになってもらうということで埋め合わせをしよう。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



さて、20分後である。
俺はきゅうりとわかめの酢の物……こっちではシュレとウィースの…酢って何だっけ。
でも、ほんとこの世界はすごいな。酢や酒は湧いている泉があるらしいし、醤油はないみたいだが塩と胡椒は木になるらしい。胡椒はまだしも、塩が木になるっていうのはかなり興味深い。まあ、味見をしたところ『NaCl』って感じでマグネシウムとかも含む、海水から作った塩よりは美味しくないんだけどさ。魔法なんてものがあるのだから、煮詰める作業とか簡単にできそうな気がするのだがどうしてしないんだろうね。

さて、話はずれてしまったが目的は酢の物である。出来上がった酢の物はかなり美味しかった。どうやら酢がいい物だったみたいだが、これならきっとファルも喜んでくれる……はず。


「カランさん、ファルはどうですか?」

「ええ〜、ついさっき元に戻ったけど見られたのが恥ずかしくて布団の中に潜っちゃったわ〜」

「今なら入っても?」

「ええ〜、服も着てるし大丈夫よ〜」


きちんと確認をとってから中に入る。こっそりと中を覗き込むと、ファルはどうやら布団の中で丸まっているらしい。きちんとノックしないからこんなことになるんだよな…。姉も妹もいなかったし、思春期な女子とこんなドアがどうこうって気をつけないといけなかったことなんてなかったような……いや、一度だけ渡辺がうちに来たことがあったな。その時は委員長がラッキースケべを期待して色々仕掛けてきたからな。これからはあの時
並みに気をつけよう。


「ファル、ほんとにごめん。二回目のノックなしだった。てっきり着替え終わったから似合ってるとかどうとか言ってるんだと思ったんだ。申し訳ない」


俺はしっかり頭を下げる。何ていうか、前読んだ本じゃ主人公は覗いてしまってもなあなあで済ましてしまうことが多かったけれど……。普通お巡りさんに突き出されても文句言えないのだからしっかり頭下げるべきだよね?


「それはね〜、ファルシアちゃんへの下着のことよ〜。これがとっても〜、似合ってて感動したのよ〜。少年〜、感想は〜?」

「そんなこと言わなくていいですっ!」
「おや、カランさんはご飯が要らないようですね」


横から無駄口を挟んだカランさんに、布団から顔を出したファルと俺とが口々に言った。


「ごめん少年~、でもこのままじゃファルシアちゃん顔出さないでしょ~?まあ~、顔出したから良いことにしてよ~」


ただ変な茶々を入れただけではなく、きちんとくるまっていた布団を押さえて、また布団に隠れてしまわないようにしているあたり本当にご飯が食べたいらしい。


「ファルごめん、怒ってるよな?」

「…いえ、怒ってはいませんよ。ただ、とても恥ずかしいんです。親以外誰にも裸とか下着とか見せたことありませんから」

「ごめん、これからは絶対ノックするし。二度とこんな事態を起こさないと約束する」

「はい、お願いします…」


布団の中に引っ込めずに顔を真っ赤にしたまま、ぽつっというファル。そこに、カランさんが更なる爆弾を投下してきた。


「何かしてもらったら~?女の子の裸を見た罪は重いわよ~?」

「ちょっ!カランさんが言います…か……」


抗議をしようとしたが、ファルの膨れた頬とむすっとした顔つきに俺の言葉は尻すぼみになってしまった。


「…ケントさん、してくれないんですか?」


……このファルの顔に断れる奴は最低だと思う。いや、その裸とか覗いている俺はもっと最低か。


「ああ、出来る範囲なら何でもやるよ、約束だ」

「じゃあ、何か一つ考えておきますね!」


一気にファルが笑顔になってくれたので良しとするが……。何頼まれるんだろうね。


「どちらかっていうと~、今布団の中にいるのって~、着ている服が可愛すぎるからかしら~」

「あ、あう…」

「……」


俺は反応に困る。そんなこと言われても、ファルが顔真っ赤にしてたら無理に引っ張り出せないしな。
これ以上は話をずらしてしまうに限る、さっさと飯の用意にしてしまおう。そう考えて俺は二人に言った。


「飯の準備はもう出来ているから、食べよう。酢の物はそこそこ上手いと思うぞ」

「スノモノ~?何かしら~?」

「昨日とはメニューが違うのですか!」


二人で食いつくところが違うのね…。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「美味しいですっ!さすがケントさんです!」

「……」

「それは良かった、これぐらいならすぐ出来るから教えてやれると思うぞ?」

「嬉しいです!」

「……」


ファルは昨日と同様料理に意欲を燃やしているが、まだ布団を巻いたままだ。そんなに恥ずかしいんだろうか?ある意味、着ている服が気になる。一方、カランさんは食べ始めてから完全に無口である。食べる量も半端ではないが、何となく断れる雰囲気でもないからそのままよそっている。なんか怖い。と、口の中をごっくんと飲み込んでカランさんが口を開いた。


「……少年~」

「な、なんですかカランさん」

「このエルフの里で~、コックにならな~い?」

「…そんなに美味しかったですか?」

「ええ~、これならリリーちゃんあげてもいいわ~」

「何言ってんですかアンタ」


あまりの話の正反対っぷりに俺は呆れながら言い返す。昨日の態度から考えたら論外だろう、俺の眉毛がピクピク動いているのが分かる。
そのとき、カタッという音が聞こえ横を見ると、ファルがうつむいて持っていたスプーンをテーブルの上に置いている。周りが少し黒いオーラを纏っているのは気のせいだよな?


(カランさん何言ってるんですか!)

(い、いや~、ファルシアちゃんがここまで怒るとは予想以上なのよぉ~。周りはすんごい魔力よぉ~、何であの子こんなに魔力あるのよぉ~)


俺が小声でカランさんに抗議すると、意外と本気な感じで泣きついてきていた。どうやら周りの黒いオーラは魔力の固まりらしい。


「……ケントさん。リリーと結婚でもするおつもりですか?」

「い、いやそういうわけじゃ…」

「でも、今の話ってそういうことですよね?」

「あ、それは…」


ファルは何も動いていないんだが、鬼気迫るものを感じて俺は後ずさる。


俺、何も悪くないよね?
何でこんなことになるかね?





次回は4月1日投稿予定です。

嘘じゃないですよ!!

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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