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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第03章 エルフの里

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第22話

結局俺とファルは同じ部屋で寝ることになった。あれだけ身の危険を感じるような発言を意図せずとはいえしたというのに、同じ部屋で寝るよう強硬に言うとはこれいかに?って感じなんだが…。


「落ち着いて休むべきなのはケントさんです!」


の姿勢を崩してくれなかったので、俺も同じ部屋になった。それどころかベッドを譲ろうとまでしてきたので、風呂場から大量のバスタオルを出してきてこれにくるまって寝ることにしたわけだ。

夜にふと目が覚めるたび、その尻尾がゆらりゆらりと揺れているのを見るわけだけど、まあなんとか夜は無事過ぎていった。


俺の自制心よく頑張った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



朝の5時。たとえ世界が変わっても、俺の起床時間は変わらない。目が覚めて身を起こした時には俺の脳みそはすでに通常運転に復帰できるのだ。これも師匠による訓練のおかげである。
ベッドのほうに目をやると、ファルは身体を丸めて寝ているようだった。猫がこたつの中でくるまっている様子を思い出し、ほほえましい気持ちになる。やはり猫の要素を持っているのだろうか?今度のどの下をくすぐってみたい。

そのまま身を起こし、部屋の外に出て毎日の鍛錬をする。軽い筋トレにストレッチだ。特にストレッチは毎日やらないと体が硬くなってしまう。体が柔らかいとスポーツができる、などという話があるがそれは少し違う気がする。体が柔らかいというのは確かに関節の稼働域が広いということではあるのだが、それがスポーツに適性があるということでは必ずしもないだろう。まあ、格闘技においては体が柔らかいというのはかなりのアドバンテージになる。実際、俺は雑技団もびっくりするくらい関節の稼働域が広かったからなあ。

そんなことを考えながら軽くストレッチを済ませ、筋トレをし、朝の日課として瞑想とともに手を合わせる。これで30分そこそこだから後30分で朝飯ができるだろう。6時にはファルも起こして、朝飯を食べておかないとな。


「おかゆに野菜炒めだから…今日は伝統的な和食な朝飯と行きましょうか」


米は炊ける。卵もある。なら、卵焼きと焼きじゃけに澄まし汁という感じのメニューで決定だ。実際鮭らしい魚もいたしな、一尾丸ごと冷蔵庫の中に。


そんなこんなで朝飯を作り始めていると、誰かがこの家に向かってやってくる気配がする。昨日の感覚と同じだから、おそらくカランさんだろう。俺は飯を作っているし、結局俺がいたところでドアを開けられるわけでもないのでそのまま鮭を焼くほうに神経を向ける。すると、バタンッ!と音を立ててドアを開ける音が聞こえたと思うとひょっこりとこちらをのぞく気配がした。間違いなくカランさんである。


「やっほ~、昨夜はお楽しみだった~?」


その瞬間、俺は手に持っていたニンジンをその声に向かって投擲していた。右手にあった包丁を投げなかっただけ俺は大変良心的だろう、うん。


「あ、あっぶな~い!なんてことするわけ~?」


「あらあらすいませんねカランさん。わざと外してあげたのですが、これは鼻の頭に当ててほしかったみたいです。右手の包丁であたってみますか?」


俺は続いて包丁を投げる姿勢を取る。実際当てるのもなんなので人参は鼻をかすめて台所の扉に刺さっているのだが、普通なら怖いはずだ。


普通の人参なら刺さるわけがないのだから。


「当然、女の子の敵だからでしょう。いくら娘が大事だからって知りもしない女の子をあてがうとか何考えてるんです?」


俺は包丁を構えながら言う。まあ何よりどこも怖そうなそぶりを見せることなくふにゃふにゃしているカランさんが不気味でしょうがないのだがな。


「あらあら~、手を出さなかったのでしょう~?私は旅の仲間は近くの方がいいと思って~、気を利かせただけなのよ~?」


嘘つけ、流石にあれだけの親バカっぷり見せられてあんたの言うことを信じる奴がいるかっ!

と言いたいところだが、言っていることを否定する材料がないから反論ができないのが痛い。


「ところで~、何でキュトロが木に刺さるのよ~?普通こんなこと起こらないでしょ~?」

「簡単ですよ、キュトロ自体に魔力を込めて強化してるんです」

「…植物に魔力突っ込んで~、強化しちゃったなんて聞いたことないわあ~」

「じゃあ俺が第一号ということで良いですね、はい」


俺が何かこっちの常識からはかけ離れたことをしているというのは、もう何度もファルに言われてるから大丈夫なので。
こんな言い合いをしている間に俺はさっさとキュトロという人参を回収して澄まし汁を完成させてしまっている。隣の部屋ではファルがそろそろ目を覚ます頃だろうし、ちょうど良い時間帯にできあがったと言えるだろう。俺は台所のすみのテーブルをだし、食器を並べていく。とそこで、カランさんがもぞもぞしながら口を開いた。


「ねえ少年~、私にもそのご飯分けてくれな~い?」

「嫌です」


ま、即答するわな。
族長サマにご飯出さなかったら怒られるかもしれないけど、俺としては許せないからな。少なくともファルに謝ってくれなきゃ何か親切にしてやろうとは思えないね。


「え~、昨日のおかずとかでもいいのに~」

「やっぱり覗いていたのですか親バカさん」

「いや~、最初はね~。でももう~、あのとろっとしてるおかずが食べたくて食べたくて~」


昨日の時点で様子をのぞいているだろうという想定は出来ていたのだが、カランさんの話によると五感で感じることの出来るほどの精度の高い探索魔術を使っていたのだという。ところがそのせいで俺の作った飯の香りや見た目に魅了され、食べたくてもふれることすら出来ないという生殺しだったのだとか。結局朝早くにこっちに来て何事もなく食べようと思っていたらしい。


「甘ちゃんですね。カランさん、俺が異種族相手の()()をもてないという原則の例外のようなものって分かってたんじゃないですか?」

「え~、何のことかしら~?」

「とぼけるのはやめて下さい、そうじゃなかったら昨夜はお楽しみだった?とか聞いてきません」

「あらあら~、よく分かるわね~?」

「ファルにきちんと話して謝って下さい。ファルが受け入れたら、鮭以外は分けてあげますよ」

「ファルシアちゃ~ん!」

「……はやっ」


俺がファルに謝るように言ったとたん、カランさんは隣の部屋へ行ってファルのもとに飛び込んでいった。


「ファルシアちゃ~ん!ごめんね~?」

「えっ!どうして族長様がいらっしゃるのですか?」

「細かいことはいいのいいの~。何よりね~、知らない馬の骨にリリーちゃんを渡すのが嫌だったの~。だから~、閉じこめちゃってごめんなさいね~」


はしょったな。
まあ、ちゃんと謝ってるしいいんだけど。


「ええ、何もなかったですしいいですけど…。ケントさんと私に()()()()関係を強いたかったのですか?異種族だというのに、そんなことが成立するのですか?」

「それはね~……。リリーちゃんや少年にもにも言わなきゃいけないから~、一緒でいい~?あ、リリーちゃんも起きたわよ~。体はあまりうごかないみたいだけどね~」

「ほんとですか!!会わせて下さいっ!」

「その前に~、服と朝ご飯ね~。リリーちゃんも昏睡から起きた後一旦睡眠に移行してるし~、あと一時間後には起きるわ~」

「そうですか…。わかりました、待ちます」

「ありがとうね~。服は…これとかで~」

「えっ、こんな上等なものを!ダメですっ、普通でいいです!」

「ダ~メ、私からのプレゼントなのよ?受け取りなさい、エルフ族長として命令します」

「は、はい…。ありがたくい、頂きます…」


無理やりすぎるがまあ、説明の義務を果たすつもりはあるらしいしここはこれでいいだろう。澄まし汁は足りるしご飯も十分だ。鮭無しも淋しいから何か足そうかな…。


「かわいいわよ~、ファルシアちゃ~ん!」

「あ、ありがとうございます…」

「さあ、ご飯ね~!ご一緒してもいいかしら~?」

「あ、ケントさんが作ってくれているので…。私個人としては恐れおおいことではあるのですが、作っている人に聞いていただければ…」

「やった~!少年~、私にも~!」


まあ、服もあげたなら許してやろう。軽く目玉焼きでも作ろうかと思ったが、まあいいや。


「はいはい、もう出来たから持って行きますよ」

「えっ!ちょっと待って!」


その制止の声はドアを開けたその瞬間だった。
そして俺の目に映ったのはファルのお着替えシーンである。


「あ、あう、あ…」


顔を真っ赤にして口をパクパクさせるファル。
真顔なカランさんを見ればわかるが、どうやら計算でやったことではなく俺のフォルトなようだ。


「ついてねぇなあ、俺……」


次回投稿は3月30日の予定です。

野菜が魔力を込められて堅くなっていますが、こんなの出来るのは謙人だけです。

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


http://ncode.syosetu.com/n4562cu/


よろしければ、こちらもどうぞご覧ください。

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