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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第03章 エルフの里

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第20話

美しいエルフの里の風景に言葉を失っていたのは何分くらいだっただろうか。カランさんもニコニコと微笑みながら、俺のフリーズの時間に付き合ってくれていた。


「素晴らしく幻想的だ…」

「うふふ~、そうでしょう~?やっぱりうちの里の誇りだからね~、この風景は」


ほんと、世界遺産級じゃないか?富士山での初日の出より俺は今、感動した気がする。


「えっとね~、早ければ明日にもリリーちゃんは起きると思うし~、とりあえず今日は休んでおいて~。そこの家が来客用だから~、そこでゆっくり休んでちょうだ~い」

「あぁ、ありがとう」

「明日9時くらいには誰か迎えによこすわね~。じゃあ良い夜を~♪」


カランさんはそう言って、世界樹の方へと歩いて行った。俺はカランさんを少しの間見送り、姿が消えたのを見届けてから言われた家に近づいてみる。


「しかし、すごいよなぁ。こんな幹が太い木もあまり見たことがないけど、そこに家があるって、なあ…」


つぶやきながら階段を上る。実はこの階段、この家の木の一部である。切りだしたり、取り付けたりしたわけではなく本当にこの家の木の一部なのだ。


(やっぱりここは違う世界なんだな。本当にファンタジーだよ)


昨日一日魔法だの何だの試したり戦ったりしておきながら、ファンタジーを感じたのはエルフの里を見てからのような気がする。結局魔法俺使えないし。


「おおぉー…」


玄関の扉を開けると、そこには窓はないようだが柔らかな緑の照明で照らされ明るい部屋があった。靴を脱ぐ場所があったので、ここの習慣はなぜか日本スタイルだなと苦笑する。扉が三つあって一つは開けっぱなされており、そこには少し大きなベッドが置かれているのが見えた。見た感じふかふかで、スタイルも前の世界のものと同じである。休息への飽くことのない探究は結局どの世界でも同じものになるということだろう。


残り二つの扉は全く同じデザインだった。そこで何気なくベッドの部屋の隣の扉を開けてみた先には。




ファルが全裸で立っていた。


そして流れてくる温かい湯気。
時が止まったかのように感じてしまうこの瞬間。



「…ケント、さん?」

「…この部屋は風呂付か」


俺はさりげなく視線をそらし部屋から退散しようとしたが、その視線の先にはエルフの素晴らしい技術のおかげか曇っていない鏡があり、同じく目を逸らしていたファルと鏡越しにまた目が合う。彼女の尻尾はちょうど背骨の付け根、尾てい骨あたりから顔をのぞかせているようだ…って、違う違う!渡辺のとき以上に今はかなりアウトォォッ!!


「……すまん」


俺が謝罪を口にした途端、ファルは顔を真っ赤にしてしゃがみ込んだ。いやいやと首を振っているせいで綺麗になった銀髪がひらひらとしたかと思うと、ぱふんっと音を立てて猫になってしまった。

(確か、精神的にきつかったら変化しちゃうんだっけ。だが、普通に立派なものが……。)

そんなことを頭の片隅に思い浮かべた瞬間、銀色の塊が顔に跳んできて貼りついた。


「ふがっ!」


思いっきり鼻に衝突されて涙目になったが、その時視界に入ったのは爪を振りかざしていたファルの姿だった。


「ふしゃーーーーっ!!」


ばりっ。


そういえば、思いがけず変化しちゃったときは猫並なんだった。


俺は頬を思いっきり引っ掻かれながらファルの言葉を思い出していたので、見てしまった罰として甘んじて受けることにした。

しかし、地味に痛いな猫の爪。





がりがりと引っ掻いてくる数秒を耐えたあと、俺はさっさと風呂のある部屋を抜け出し扉を閉めた。きっと少し時間をおいたら元に戻るだろうし、その時には自分で開けられるだろう。猫のままじゃあドアノブはつかめないだろうしな。
しかしもうすでにファルが案内されていた、という家に俺が案内されたのはただの失敗、手違いだろうか?いや、ありえないな。あのカランさんのことである。ファルにしておけなどと大真面目に言うくらいだから、こんなハプニングが起こることを期待してこの家に案内したに違いない。


「うん、野宿しよう」


一瞬で俺は決断し、玄関に向かう。一応族長さんらしいからさん付で考えているけれど、やっている内容が幼稚すぎて頭が痛い。馬鹿親にもほどがある。
脳裏に残るファルの姿を振り払い、俺はそそくさとこの家を出ようとしたが…。


「…開かない…」


流石と言うべきか、扉が完全に周りの壁と一体化している。何かの魔法でもない限り、壊さずにはこの家から出られないのだ。そして、俺は魔法が使えないときたものだ。


「はあ……徹底的だな、族長サマ」


俺はため息をついた。リリーが起きるのを見たいだろうファルがいるのに、壊して出るという手段はとることができない。しかも、翌朝は起こしに行くと伝えてあるという用意の周到さである。俺にはもう、取れる手立てはなかった。


「ファルに謝って……。気まずいなぁ…」


今晩のことを思うと、胃が痛むような気がした。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



どうしたらいいのか分からないのでとりあえずベッドの部屋に戻り、ぼーっとしながらファルが落ち着くのを待つ。すると十数分後には洗面所の扉が開き、ファルが姿を見せたのだが…。


タオルを巻いただけの姿だった。


先ほどの失敗を繰り返さないために俺は亜音速で後ろを向き、見なかった見なかったと頭の中で必死に唱える。


「…ごめんなさい、ケントさん。さっきは無茶苦茶に引っ掻いてしまいました」

「いや、見たのは俺が悪いし」


というか、煩悩にまみれた俺への天罰でしょう、うん。


「それよりも、なんでタオル一枚?ちょっと、その…大胆じゃない?」

「あう、え、あの、それは…」


あ、そういえば…


「…もしかして、替えの服がなかったり?」

「…はい。奴隷が服を複数持つなんてあり得ませんから…」


俺が奴隷の首輪つぶしちゃったからもう奴隷じゃないけど、それでも服を持っているはずがないよな…。


「カランさんに頼んで何か服をもらおう、明日には来てくれるみたいだし」

「じ、実はさっきまで来ていた服はメネアさんに没収されまして…。なんか、『ごゆっくりどうぞ』って私をお風呂に入れて去って行かれたんですけど」

「…こりゃ、確信犯だな」


どうやらゴールインまでさせてリリーに虫がつかないようにしようという魂胆だろう。どうせ何か覗く仕組みなんかが完備されているに違いない。


「確信犯、ですか?」

「ああ、カランさんなんだがファルが先に行ってからさ、何か突然俺がリリーにまあ、なんだ、 ()()()() ちょっかい出したんじゃないかって責めてきたんだよ」

「えっ?でも、異種族間での()()()()関係はあり得ないって聞きましたけど?」


ファルがびっくりしたように言うが、あり得ないというのはどういうことなんだ?
その疑問をファルに聞くと、ファルは説明してくれた。


「えっと、この世界には人族、獣人族、エルフ族、魔人族の四つの種族がいます。ですが、種族が混じったこどもは生まれることがないんですよ。そもそも種族を超えて魅力を感じるというのが滅多にないそうです。だから私も奴隷の時に無理矢理されることはなかったんです。私は奴隷になるまで知らなかったんですけど、このことはかなり常識の部類に入るそうなので、エルフが知らないなんてことはないと思いますよ?」


確かに子孫を残せないのだから、異種族に魅力を感じないというのは大変明らかな理由なんだろうが…。


「俺、ファル見ちゃってかなり魅力的だったのはどういうことなんだ?」


さっきの瞬間に見たのはかなり理想的なプロポーションで撫でてみたかったり…げふんげふん。
今はそういう話じゃなかったとファルの方を見ると、


「……」


ドン引きして俺の方を見ていた。

…今の言葉、かなりヤバイな。本人の前でいうセリフじゃなかった…。

投稿遅れました、すみません!

次回からかなり更新ペース落ちてしまいます。色々と仕事を抱え込んでしまいまして…。

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


http://ncode.syosetu.com/n4562cu/


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