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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第02章 こんにちは異世界

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第19話 幕間2

今回は短いです。
私は、一くんが病室から出ていったのを見てからそのメモを開いた。何となく、誰にも見せてはいけないような気がしたのだ。何でと聞かれると分からないんだけどね。

紙は普通に病室に置いてあったものだった。そこに書かれていたのは、私がずっと気になっていたことだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



私が中学一年生の頃のこと。
富士山に家族で観光に行ったときだそうなのだが、男に襲われた記憶があるのだ。実際、そのショックのせいか私はそれよりも前の記憶がない。私の持っている一番古い記憶が男に襲われる寸前なので、あまり気分の良いものではないけれど…。
その時、私はあり得ない現象を体験した。幽体離脱というのだろうか、世界が止まっているような中私だけが体から抜け出してぷかぷか浮いていたのだ。
そこでは男が私を襲う寸前で、ああもうダメだって思ったのだけれど、そこにひとりの少年が飛び込んできて助けてくれたのだ。それを見てほっとしたとたん、強烈な眠気に私は眠り込んでしまったので彼にお礼を言うことすら出来ておらず、それが気になっていたのだ。
私が目覚めたのは二年近く経ってからだし、そのことを人に話すなんて出来るはずもなかった。幽体離脱をしましたなんて、言ったら私は退院どころか別の診療科に移動させられていただろう。
だから、()()()()()()()()()()()はずだ。



なのに、紙に書いてあったのはその人のことだった。


神野 仁さん。


もう亡くなってしまっているけれど、その人が私の恩人なのだという。親切にもそのメモは、そのお墓の場所まで書いていてくれた。


退院したら、お線香をあげにいこう。


そう私は心に決めたが、ここでふと思う。
この紙を書いたのは誰だろう?そして、なぜ私はこの紙に書いてあることを信じようと思ったのだろう?


普通は信じられないし、ただの悪戯だろうと判断するはずだ。それなのに私はこのお墓へお参りしよう、なんて考えてる。

この紙に書いてあるように、まるで()()()()()()()()()()()()()()……。




絶対に私は何かを忘れている。



私が確信した瞬間だった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「はい、今日から微分についてやっていく。ここからはかなり『高校数学』って感じになってくるから、ここで出遅れるとかなりつらいことになるぞ?予習はやっているだろうが、まずは教科書からだ。93ページを見ようか…」


私は一週間で退院することができた。しかし、私は昔から体が弱かったと両親から何度も言われていたのに、こんな回復が早いことがあるだろうか?さらにはそもそもどうして私は西高に一人で行ったのだろう?
混乱しっぱなしの私だけれど、取り敢えず今日は紙にあったお墓に行ってみることにしているのだが…。


「出席番号で当てるからな。37番、一番の問題。25番、二番の問題。28番、三番の問題。はい、前に出て解けよー」


入院してた人に当てるものなの??
まあ、予習は済ませてあるから良いんだけどさ…。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



午後3時20分。放課のチャイムがなる時間だ。


「未菜~、帰りにカラオケ行かない?せっかくの退院祝いに、どう?」


みんなは私が撃たれたとは知らない。なぜか一くんだけ知ってたけど、彼は言いふらさなかったので知っているのは西高にいた人と、一くんだけなのだ。まあ、一くんは私が西高に行くって知っていたからそこで想像したらしいんだけど。みんなは体の弱い私が軽く入院していたのだろう、というくらいにしか思っていないみたい。


「ごめんね、嬉しいんだけどちょっと行かなきゃいけない場所があって…。明日、とかじゃダメかな?」

「うん、全然いいよ?予約入れとくから、明日行こうね!駅前のいつものとこ!」

「うん!」


仲のいい友達が数人から誘われるけれど、まあお墓参りに先行くって決めてたし明日に延ばしてもらう。何歌おうかな?



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



一人で墓地に向かう。夏も近いとはいえ、夜のお墓に一人で行くのは精神的にキツいものがあるからね…。
行きがけに少し小さいけれどお花を買った。お線香を家から持って来てあるので、きちんと手を合わせるつもりだ。
心持ちはやめに歩きながら、私はお墓の間を縫っていく。そして、歩いて数分後。

紙にあったお墓の前にたどり着いた。
読み方は分からないけれど何か厳めしい戒名が彫られているけれど、私の目に止まったのはそこじゃなかった。

お墓の足元にあった小さな額縁。
そこにあった写真は、間違いなく私を助けてくれた少年の姿だった。

この恩人に感謝の気持ちを伝えよう。そう思って私はお墓の周りに生え始めていた雑草を抜き、お墓に水をかける。
持って来たお花をさし、お線香をあげて手を合わせた。


(助けていただいてありがとうございました。今は健康…はい、元気な気持ちで過ごしています。生きていらっしゃる間にお会いできなかったのは少し残念ですが…。)


今までのことを軽く報告したあと、私は再度お花の角度を整えてここから立ち去ろうとした。

ここまで来たら間違いないだろう。私は確実に誰かを忘れているし、その誰かにこの恩人のことを話している。何か、ではなく誰か、を忘れているんだって。


徐々に空が赤くなる中、私は墓地をあとにする。誰かがいない、という気持ちは強くなる一方だったけれど、そこには何の手がかりもない。そう思いながら歩いていると、出口そばのお墓の横に刻まれている字に目が吸い寄せられた。


『辰野家ノ墓』


なんとなく目にとまったお墓はとても目新しかった。つい最近立てたものなのだろう、しんみりした気分になる。
まあ身体が弱いとはいえ、今は今を楽しもう!
そう切り替えて私は墓地を出る。


(明日は何を歌おうかな?でも予習あったよね…。数学はさっさと終わらせておかないと)
久々のカラオケに少し胸を弾ませつつも、私は数学の予習に今晩は費やすことにした。


絶対明日当たる気がするんだよね。

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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