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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第02章 こんにちは異世界

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第15話

俺とファルは手早く準備を済ませる。水はあるので山の中の食べられる草を集め、まとめてリュックに放り込んだ。


「これくらいで、何とかなると思います。後は私が猫になってこの鞄に入れば良いのですね?」

「うーん、容量的に猫サイズでも入らないかもしれないな…。俺が魔力で覆うアレって、やっぱり怖いか?」


ここで問題発生である。俺の鞄はそんなに大きい方ではないので、食料を入れたらパンパンになってしまったのだ。猫のファルを肩に載せていても、魔力で覆っておけば安心なのはあの穴での一連の出来事でわかっている。そこで聞いてみたのだが…。


「…えっと…」


ファルは分かりやすく顔を引きつらせた。どうやら、やっぱりあのジャンプは怖かったのだろうか。


「ごめん、なら取り敢えず食料を抜いておいて、その場で調達しようか」


俺はそう言って鞄の中身を整理し直そうとしたが、その手をファルは押しとどめた。


「いえ、嫌というわけではありませんし、前回怖かったのですがまあ、背に腹は変えられません。ケントさんは乱暴なことはしないと信じていますし、その案で行きましょう」




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



俺はエルフの里に向け、昨日無駄な魔術の練習をしていた草原を突っ切っていた。なるだけ揺れないように気をつけてはいるが、それでも時速40キロそこそこで走っている。
恰好としては、結局俺は鞄をお腹向きにかけ、背中にはリリーを背負うことにした。ファルはリュックと俺のお腹の間に体を入れ、顔をリュックとの隙間から出している。
しかし、これだけの荷物を担いでもほとんど重さを感じない。魔力を使っていないというのに、筋力の上昇には驚くべきものがある。俺としてはなかなか便利がいいのだけれど、また気持ち悪がられるのは嫌なものだ。


「本当に、足速いですね…。」

「ファル、猫の姿でも喋れるのか?」

「ええ、魔力切れや精神的にきつい状況のときの獣化でなければしゃべれますよ。というか、その時の知能は本当に猫並です。ですから今なら途中で方向の指示もできそうです」

「だったらさ、今の俺ってこの世界じゃどう思われるか分かるよな?異常な感じ?」


俺としてはかなりこれは重要事項だ。どれくらい力を抑えるべきなのか分からないし、目立ちたくないからこそエルフの里に行く前にその辺りの力加減は出来るようになっておく必要がある。


「そうですね…。真竜とばれたら間違いなく怖れられて、下手したら討伐隊が組まれると思います。でも、それがばれないなら達人なのかなと思われるくらいで済むと思いますよ?昨日に比べて魔力量もかなり少なく感じますし、そのおかげで恐怖感もありません。感じられる量はエルフと同じくらいですし」

「あれ、そう?」


そう言えば、昨日この世界に来た時に比べて魔力がかなり少ない。具体的に言うと、八分の一くらいだろうか。俺としては原因は間違いなく治療だと思うのだが、それを言ったらまたファルが気にするだろうし黙っておこう、と考える。別に魔法が使えないのだから魔力があってもどうってことはない。それに、身体強化は魔力効率が良すぎるのだ。もう死にかけている誰かを治すほどの魔力は残っていなさそうだが、それでも今の魔力があれば俺自身は問題ない。魔力で覆うのは、魔力消費と違って体と繋がってるからまず減らないし、俺の能力は全部、魔力の使い道がないんだよな。


「ええ、ですが誰かとパーティを組んでSランクにまで到達したら、もうどんな技をふるってもそういうものだと納得されると思いますよ?」

「パーティ?」

「ええ、この世界はパーティを組むことで、魔物退治などの依頼をこなすんです。パーティが強ければ強いほどランクが上がり、ランクに応じて手に入る情報が違ったりするんです」

「そうか…。ランクって何があるんだ?」

「そうですね、SからGまでありますよ。Bは50組、Aは20組、Sは10組いて、順位が付けられています。Cから下は雑然と並んでいますね。Dランクにいたら宿屋などでかなり良い待遇をしてくれるそうですよ」

「なるほど…」

「ええ、ですからケントさんもリリーをエルフの里まで連れて行ったら、首都に行くといいと思います。そうしたら引く手あまただと思いますし、生活も安定するはずです」

「勧誘があるってことか」

「はい」

「まあ、今はファルとエルフの里を目指すことに集中するさ。後のことは後だしな」

「…そうですね、運んでもらっている身ですけれどよろしくお願いします」


ファルは色々と話をしてくれたが、俺としたら首都でパーティ勧誘を受けるつもりはない。少なくとも、化物扱いはやめてと言って、それを守ってくれるファルは俺としたら渡辺の次に話を聞いてくれた人なのだ。拒否されないなら、ファルと一緒にパーティを組めると嬉しい、と俺は思った。



そんな感じで数時間走っていると、ファルが眠たそうに欠伸をするのが見えた。

「方向はこっちであってるんだろ?だったら少しの間寝てるといい。魔力で覆っとくから落ちたりもしないから」

「…ふぁい」


ファルがそのまま眠り込むのをちらりと見て、俺はさらに揺れないよう気をつけながら走った。

リリーはまだ、意識が戻らない。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



ケントさんが真竜である、ということには本当にびっくりしました。お話の中では、真竜は横暴を極め、気に入らないことがあったら周り中にその苛立ちをまき散らしていました。
もうこの世にはいない、伝説の存在だったはずなのですがネームプレートは嘘をつきません。私はそんな相手を騙してしまったのだと思うと、横にいたリリーを殺してしまうと思いました。
それでも、ケントさんは私に話してくれました。口に出したい話ではなかったはずなのに、少し過去のことを話してくれました。
私も、ただ突然毛の色が変わっただけでひどい目に遭わされていたのに、私はケントさんに同じことをしてしまっていたのだと気づきました。
きっと、ケントさんはお話の中の真竜とは違います。作ってくれたお粥は本当に美味しかったですからね。

そんなわけで、私たちはリリーのふるさとであるエルフの里へ向かっています。昨日余りにびっくりして、怖かったのでほとんど眠れていなかったのですが、ケントさんも揺らさず走ってくれるので私はうとうとしてしまいました。


「方向はこっちであってるんだろ?だったら少しの間寝てるといい。魔力で覆っとくから落ちたりもしないから」

「…ふぁい」


辛うじて返事を返し、私は眠り込んでしまったのですが…。





……夢を見ました。

見たことのない服を着た幼い子供たちが駆け回って遊んでいますが、露骨に一人が仲間外れにされています。


「…ケントさんだ」


見たことのない風景でしたが、何故かケントさんがどれか分かりました。これはきっと、ケントさんの記憶です。魔力を通じ私に流れてきてしまっているのだと思います。
だからでしょうか、


「…つらい…」


そのときに思ったのであろうつらい思いが伝わってきます。こんなに幼いときにこんな風に避けられたら、ひねくれた人間になってしまってもおかしくないと思います。でも、ケントさんは真っ直ぐなままなのですから、どれだけ辛かったことでしょうか。
私も外見の変化だけで扱いがごろっと変わってしまいましたが、それを経験していながらケントさんにあんな態度をとってしまったことは恥ずかしいです…。


「…あれは、今のケントさん?」


いつの間にか場面が変わり、今着ている服と同じものを着ているケントさんが、よく似たデザインの服を着た可愛らしい少女と歩いています。その風景は、訳もなく私を刺激しました。


「ここは、ケントさんのいた世界なのでしょうか?あんな可愛らしい女の子と仲がよかったのですね…」


そう呟きながら、ケントさんの思い出の風景を見つめます。これから和やかに少女とデートでもするのだろうと思ったのですが、目の前で少女は怪我を負い、その場に崩れ落ちました。
そのとたん私に流れ込んできた悲痛な感情は私にとっても余りにつらいものでした。それこそ、幼い頃の思い出とは比べものにならないくらいです。


「…もう、見られませんっ!!」


私は目を閉じ耳を押さえて、その場にしゃがみ込んでしまいました。こんなつらい思いをしているなんて、知らなかったのです。もう二度とケントさんにあんな態度をとらない、そしてあの少女の隣にいた時の笑顔を、ケントさんが私の隣でも浮かべられるようにしよう、と心に決めました。

あんな態度をとってしまった、罪滅ぼしに…。
100mを9秒で走ったらちょうど時速40キロです。ちなみに謙人はこれより早いペースで数時間走っていることになります。


ボルトもびっくりってやつですね。


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現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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