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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第02章 こんにちは異世界

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第12話

少し流血描写があります。苦手な方はご注意下さい。
「儀式を始める」


そう宣言したリーダーの顔は、破滅への狂気に染まっていた。


「空間をつなぐ銀色の獣人によって開けられた扉からの偉大なる力をお借りし、巫女たるエルフの光を反転させ、闇たる魔王として覚醒させるっ!!
我らの悲願が叶うぞっ!」


「「「「オウッッッ!!」」」」

その声を皮切りに、地面に描かれた魔法陣が黒い光を放ち始める。その原料の魔力はすべて、獣人のファルシアから奪われていた。


「あああああああっっっっ!!」


ファルシアが苦痛のあまり目覚めて絶叫するが、それを聞いている周りの盗賊たちは何も感じない。彼らの目的は悪魔の召喚、そしてその第一歩たる魔王の誕生である。そのためなら何でもする集団がこの盗賊たちであった。


「ああああっっ!!」


さらに絶叫を続けるファルシアのあちこちから血が流れ、それを受け取った魔法陣が歓喜の色を表すかのように点滅した。そして次の瞬間、魔法陣から真っ黒な魔力が噴出し始める。
それらは最初靄のようだったが、空中で蛇の形を取るとそのままリリアーヌの元へと襲いかかった。


「きゃああああああっっっ!」


蛇は彼女の身体を傷つけることはなかったが、意識が戻り、ファルシアよりも大きな苦痛の声を上げるリリアーヌ。その蛇はいまだに地面の魔法陣とつながっており、そこから黒色の魔力が送り込まれ続けている。ファルシアの身体から生み出される魔力もどんどん減っていて、命も尽きかけようとしていた。


(こんな死に方は嫌ですっ!誰か、誰か助けてくださいっ!)


そう心の中で叫んだファルシアの心には、見たことのない服に鞄を背負った少年が浮かぶ。今は痛みよりも寒さを感じるほどに生命力を魔法陣に奪われたファルシアだったが、人の気配を感じてうっすらと目を開けた。そこに映ったのは、投げ組のリーダーを殴り飛ばす少年の姿だった。
その姿は、心に浮かんでいた姿と同じものだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



俺は数分後には山に着いた。途中で少女の絶叫が二つ聞こえて、これはまずいと足を速める。

俺の感覚ではこの山の中にいるのは俺を含めて12名。内2人は少女たちで、1人は俺だから3人をたたきのめせばよいと心に決めた。
ここは日本ではない。手加減をするつもりはなかった。

気配を殺して後ろに立ち、手刀をたたき込んで気絶させる。なかなか気付かないのでこれ幸いとやっつけていたら、陣の周りに立っていた男たちを5人撃破したところで他のやつらが気付いた。

この間も少女たちの悲鳴は続いている。
陣から出てきた蛇はさすがに気持ち悪かった。絶対に触りたくないタイプの禍々しさを持っている。魔術がどうなるかは分からなかったので、手を出すことができない。

そうこうしてるうちに、猫少女を蹴り飛ばした男以外の全員を沈めたところで、魔法陣の動作が終わるのを感じた。
とりあえず鳩尾に強烈なものを一発ぶち込んで、どうでもいいリーダー格は気絶させておく。
術中には何が起こるか分からず飛び込めなかったので、終わった気配を察知して猫少女を魔法陣から引っ張りだした。

意識もなく体のあちこちが裂け、出血量が甚だしい。魔力で視力を強化すると、さらに身体に内包する魔力と生命力が枯渇しているのが見て取れた。

これをほっといたら死ぬ。
そう直感した俺は、リーダー格が持っていたナイフで手首の血管を切る。さすがに大きな血管を切ったら結構な量の血が出て、それと一緒にかなりの魔力が持って行かれた。
しかしその分、彼女の身体に注いだ血は光を発し、傷をいやしていく。
ある程度傷の治りが安定したことを見届けて、俺は腕に力を込める。今度は俺の腕の傷口がすっと閉じ、なかったことのように見えるほど回復する。

「魔力が半分無くなった…」

そう俺は呟く。そういえば渡辺のときには俺はどれくらい魔力を注いだんだろうか。感覚的には同じくらいの量ではあるのだが。



そして、もう一人の少女のほうに目を向ける。
外傷はなさそうだが、拘束していた縄はあっさり千切れ飛び、髪の色は緑からどぎつい紫に変わっている。肌も白から灰色になっていて、目は真っ赤に染まっていた。さらには額に黒い蛇が巻き付いている。魔力強化した目で見ると、そこから禍々しい魔力が彼女の体を縛って操っているような様子が分かった。


「悪魔チックだなー。やっぱり、これが目的か?」

「キエエエエエッッッ!!」


それに答えるかのように、少女は奇声を上げた。どうやら意識がないらしい。それと同時に、地面からぬらぬらと光る触手が飛び出してくる。魔法陣の発光は地面が割れたことで止まったが、少女はその様子を変えることはない。


「乗っ取られたかな?しかし、元の姿のほうがよっぽどいいぞ?俺たちの世界でならミスコンに出れるクラスだと思うぜ?」


俺は襲ってくる触手をよけながら言う。当然、後ろの猫少女を襲おうとするやつは遠慮なくたたきつぶした。

「魔力が少ないから節約気味になっ!」

俺はそう言うと、触手の根元が集まっているエルフ少女の背後に回る。ちょうど少女の腰のあたりに、触手の根が突き刺さっていた。


「よっと」


俺はその位置に手刀を音速近くでたたきつけ、一刀のもとに切断する。


「ギィヤアアアアアアッッ!!」


絶叫するエルフ少女。めちゃくちゃに鉤爪となった両手を振り回すが、その時には俺は上数メートルの高さに跳んでいる。


「ださいぞー、その鉤爪」


その声に反応して、彼女が鉤爪を上に突きだしてくる。しかしこの速度なら、本当に魔力抜きでも何とかなるレベルだった。


「悪魔もどきさん、引導を渡させてもらうぞ」


あっさり正面に回った俺は、ごめんと呟きながら彼女の頭を鷲掴みにする。


「やめてっ!!殺さないでっ!!」


後ろから猫少女の絶叫が聞こえた。いや、こんな可愛い子を殺すつもりなんて毛頭ないのだけれど。
俺は右手でエルフ少女の頭をつかみ、左手で繰り出してくる鉤爪をさばきながら言った。


「殺すつもりないから、安心してくれ」


取りあえず頭に巻き付く蛇を剥がそうとしたがびくともしない。殺さないと言ったからには無理やりも出来なさそうだし…。
悩んでいる内にも手の鉤爪は攻撃してくるがあっさりいなす。今は…そうだな、頭を鷲掴みにしてぶら下げているんだが、悪魔少女は鉤爪を振り回すだけなのだ。


「魔王にしては攻撃がお粗末だな。触手潰されたらただのだだっ子か」


そんなことを言ってはいるが、少し攻め倦ねている。どうやってこの蛇引き剥がしてやろうか…。
助けを求めて後ろを見ると、猫少女はまた意識を失っていた。


…どうしよう。



そのとき、頭に巻き付いていた蛇の口が開き、俺の腕にかみついた。


「痛っ…、何しやが…る?」


魔力の残りほとんどが流出したことで気がついたが、その蛇に視線を向けると疑問系になってしまった。

吸い出した魔力がまずかったのか、痛みに悶えているらしい。攻撃して自滅したようだ。
しかし俺の血も結構抜けている。つまり、真竜の血はあの蛇にとって猛毒か…。


そうこうしているうちに少女の暴れるのが止まり、徐々に肌の色が白く戻っていく。それに応じて蛇も身悶えを小さくし、痙攣するばかりになっていった。
髪の毛も緑になり、蛇の体積も小さくなっていって…。


エルフ少女は元の姿に戻り、俺に頭を掴まれたまま脱力し、カランッと音を立てて少女の額から真っ黒な石が落ちた。嫌な感じのする魔力が詰まっていたので、これが根源らしい。


「…えー、終わり?何だかなぁ…。こいつを始末すれば終わるかな?」


最早何がしたかったのか分からない悪魔もどきだった。あっさり自滅って、どうかと思うよほんと。
別に俺戦闘狂じゃないからいいんだけどさ。

残っている魔力はこの世界に来たときの100分の1位だ。取りあえず、この石を消滅させるくらいは残っている…と思う。


「よっこいせっと…」


俺はエルフ少女を地面に寝かせて石を拾い上げると、手の平に魔力をのせて握りつぶす。

バラバラに砕け散る石と、そこにあった魔力が俺の魔力に食い荒らされる感覚。


「これでおしまいですか…あ~、アイツ等がいたじゃん」


周りを見回し昏倒させた盗賊たちを思い出して、まだまだ続く俺の労働にため息をついたのだった。
感想・評価お待ちしています。

2015/07/14 一部ファルシアの名前がフィオになっていたのを修正

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


http://ncode.syosetu.com/n4562cu/


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