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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第02章 こんにちは異世界

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第11話

とりあえず見渡す限り広々とした草原に着いた。まあ、山を一つ下りていることになるが細かいことを気にしてはいけない。どうやら俺は高速道路で並んで走れるくらいの速さになったらしい。

今度あっちに帰ったら名神高速走ってみようか。
走らないけど。

さて、何をすることなく立ち尽くしていたが俺の荷物は以下の通りだ。

・制服
・腕時計
・水1.5リットルのペットボトル
・塩一瓶
・写真
・リュックサック
・スマホ

もうちょっと何とかなりそうなものではあったが、俺としてはこれだけあったら十分すぎるくらい十分である。これだけあれば、富士山の樹海で快適に俺は生活できる。経験済みだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



さて、ここからは俺の現状把握である。
こっちに来てから、身体の中に魔力らしきものが存在することは身をもって体感した。というか、数千メートルからの落下で無傷という時点で、俺の魔力のおかげで助かっていることは分かっている。
そこで、俺の力はいったいどのようになっているのだろうか。自分の力を異世界で発揮する、というこの状況に俺は少し興奮していた。
だって異世界だもん、男子なら少しは興奮するでしょ?


まず、魔力抜きで挑戦してみた。
全速力で走ると、時速80キロくらい出た。うん、間違いなく高速道路走れそうだ。
さらに石を投げたり、蹴ったり、持ち上げたりしてみたが、大体地球にいたころより一回り強くなっていた。
一回草原の中に巨大な蛇が顔をのぞかせたが、俺の顔を見たとたん全速力で去っていった。俺ってそんなに恐怖を与える顔はしていないぞ?全長4メートルくらいで、俺の身体くらいの太さがある蛇だったからたぶん魔物、とかいうやつだろう。


続いて、異世界定番の魔法に挑戦しようとしたが、そこでふと気付く。
魔法の使い方を知らないのだ。
怪我が治せたということは魔法を使える可能性はかなりある。しかも、魔力があるのだから魔法は使えるのだろう。
ところが使い方がわからない。身体を強化することはできても、雷を落とすとか地面を揺らすとか、the 魔法っ!というのができないのだ。
数時間言う言葉を変えて粘ったが、一切できる兆しは見えなかった。

「もういい、使えなくても戦えないことはないし!」

かなり拗ねたくなる状況だった。
やっぱりジジイは気が利かない。



続いて、真竜という存在なのだからドラゴンの姿に変身できないかと思ったのだが…。


「まず、真竜ってどんなフォルムしてたんだ?」


それもわからない。変な形になって戻れなくなっても困るし、俺は早々にこれをあきらめた。というか、わざわざ竜の姿になる必要もないし。ないものはできなくてもよいのだ、うん。

しかし、次にジジイにあったときにワサビたっぷりの刺身でもごちそうすると心に決める。泣かす。

ついでに、竜なのだからドラゴンブレスーッ!!って言うのができないかも試した。

「ドラゴンブレスっ!」

すると、魔力が口に集まってきた。これは成功か?と思って口を開くと…。

「…げふっ」

げっぷが出た。たまったエネルギーはただ無くなっただけである。
あれ?
何度か試してみたがどれも結果は一緒だった。どうやらドラゴンブレスもできないらしい。


うん、俺って真竜だそうだけど、どこも竜っぽくない。



結局、俺ができるのは魔力で身体強化だけらしい。ところが、これは捨てたものではなかった。
足が速くなるとか、頑丈になるとかそれだけではなかったのだ。
目に魔力を込めれば視力がよくなるし、耳なら聴力が良くなった。ただ単に強化するのではなく、俺のイメージに合わせて変わるらしい。
因みに、足に魔力を込めて全力で疾走したら音を超えた。地面はへこみ衝撃波で周りの草が細切れになったので、これは町中では使えなさそうだ。
高速道路を走ったら車を巻き上げてしまいそうだ。

しかし全力で身体を強化していたら周りから慌てて動物が逃げていくのが分かった。強化に費やす魔力を調節して、動物たちが逃げなくて済むようにする練習をしていたら、いつの間にか夕方になっている。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「…うん?」


俺がそうつぶやいたのは、目に魔力を集めて視力を強化していたときだった。遥か遠く、俺がさっき出てきた山の中腹で、何かが動いたのだ。
20キロも離れていて見えるわけがない距離を、魔力強化はなかったことにする。
どうやら、盗賊団の連中が少女を一人、誘拐してきたようだ。縛られて担がれているが、大きさ的に少女だろう。
連れて行った先には魔法陣らしきものが描かれており、そのそばに銀色の子猫がちょこんと座っていた。

「あれ、盗賊が飼ってた猫なのかよ」

可愛らしかった猫のいけてない首輪のセンスは、どうやらあの盗賊たちのものだったらしい。
その魔法陣の真ん中に、縛りあげられた少女が投げ込まれる。そのとき、薄い緑色の髪の毛が分かれ、先のとがった耳が露わになった。

「…エルフ?」

少女はかなり可愛らしかった。これをいじめてたらいけないだろうに…。
するとそこに猫が駆け寄り、縄に歯をあてた。噛み切ろうとしているのだろうか。それを見た男が駆け寄り、猫を思いっきり蹴り飛ばす。どうやら何か言っているが、耳は強化していないので聞こえなかった。

「…動物虐待だ…ん?」

俺はそうつぶやいたが、少し信じられないものを見てその現場を見つめる。

猫が人の姿になって、血を吐いていた。銀の髪、耳、尻尾がついているから間違いなく猫は彼女だろう。彼女に蹴った男が近づき髪をつかんで魔法陣の中に放り投げた。
彼女はまた果敢にもエルフの縄をほどこうとするが、縄にふれた途端、首輪をつかんで七転八倒する。

「…ということはあの首輪は奴隷か何かか?で、彼女が獣人ってやつになるのか?うーん、奴隷とはえげつないことをする」

日本元在住者としては奴隷制度に好ましい思いが持てない。しかし郷に入れば郷に従え、変革を起こす気はない。
まあ、俺は奴隷は要らないけど。
俺としては、穴の中の出来事を考えると少女が悪者のようには思えない。

「とりあえず穴で俺の心を癒してくれたお礼に、あんな可愛らしい女の子二人をいじめてる大人をやっつけに行きますか」

俺は彼女なんてできたことはないが、あんな可愛らしい女の子を見殺しにするわけにはいかない。男がすたるというものだ。


「見張りもいるだろうし、何が起こるか分からない魔力は抜きで行きましょうか」


たかだか20キロほどだ。ちょっと急げば五分以内に着くだろう。
そう決めると俺は視力強化をやめ、山めがけて走りだした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



私は運ばれてきたエルフを見て愕然としました。彼女は私の村で、唯一私を敬遠しなかった少女、リリーでした。
私を売ると決めたときリリーは遠くの村まで治療をしに行っていたのです。お別れができなかったのは残念なのですが、こんなところで再会したくはありませんでした。
しかも、彼女を悪魔の依り代にするというのです。

それだけは絶対に阻止する。
そう思って頑張ったのですが、あっさりリーダーに見つかり、蹴り飛ばされました。

「このブス猫っ!」

痛さのあまり変化が解けてしまい、そのまま血を吐きます。
ゲホゲホと咳込む私の髪を掴んで、リーダーは魔法陣の中に私を放り込みました。

「邪魔をするな」

魔法陣の中で私はリリーのそばまで放り投げられました。リリーは意識がない、そう気づいて私はリリーの縄に手を触れました。

そのとたん、首輪がギュッと締まったのです。


奴隷の首輪。


主人の指示に逆らった場合、ただ締まるだけではなく魔術的に直接、神経に痛みを流し込む装置です。それを私は、身を以て体感することになりました。


「誰か、誰か助けて…」


そう呟いて、あまりの痛みに私は意識を失いました。
高速道路の真ん中を、車と並んだスピードで走ってみたいとか思ったことのある人はいませんか?

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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