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怪異妙奇譚伝 作者:Kt

壹譚目

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9/22

 俺は仕事場近くにある小さな公園で待っていた。まだ朝の9時前だというのに、幼児たちがあちらこちらで元気に走り回っている。

「あのぉー」

 俺は顔を上げる。

「おぉ、ごめんな忙しいのに」

 そこには、西がいた。

 「先輩、でいいんですよね?」眉をひそめながら訊ねてくる。

「あぁ」

 まあそういう反応になるよな。

「なんでお面つけてんすか? それに手袋も……」

「実は——昨日帰ってる途中で蜂に刺されて、すごい腫れちゃってさ、とても人様に見せれる状況じゃなくてさ」

「大変じゃないですかっ!」

「あぁ……いやー参っちゃうよな、ホント」

 実際にそうなら「参っちゃうよ」の一言で片付けられるはずないが。

「アレ? 声、変じゃありません?」

 ギクッ
 そうか、声も変だったのか……自分では気づかなかった。
 どうする?——どうする、俺?

「それも蜂のせい」

 咄嗟には思いつかず、諦め半分で行ってみた。
 そんなわけないだろ? これじゃまるで、赤ずきんとオオカミだ——と、自分にツッコミを入れながら。

「そうなんですね……初めて知りました」

 よかったぁー……もう半分が叶った。
 記者としてどうなんだってくらい、知識が足りないところが西にはある。普段は「おいおい……」なことばかりだが、今回ばかりはそれに助けられた。

「てか、そんなにヤバいんなら早く病院行ったほうがよくないですか?」

 ——そうだっ!

「じゃあ今から病院行ってくる。
 だから編集長に遅れますって伝えておいて」

 しばらくしたら、自宅療養しろと言われたとかで誤魔化せばいい。原稿さえあれば最悪行かなくても、「原稿は送るんで」って言っておけば大丈夫だろう。

「分かりました」

 よしっ!——心の中でガッツポーズ。

「助かる。
 で、頼んだものは?」

「はい。即白骨に関しての資料ですよね?」

 手に持っていたバッグから青いファイルを取り出し、渡してくる西。
 早速、中を軽く見てみる。パラパラめくっていくと、最初から最後まで埋まっていた。
 これだけあれば十分だろう——

「ホントありがとう。恩にきる」

「なるべく早めに返してもらえると有り難いです。まだ今月号の記事書き終えてないので」

「できるだけ早く返す」

「代わりと言っちゃなんですけど……1つ聞いていいですか?」

「何?」

「なんでこの資料が必要なんですか?」

 えぇっと……

「実はー……即白骨事件が今俺の調べてる人喰い女の事件と関係があるみたいなんだわ」

 完全なる嘘っぱち。だが、状況も状況。嘘も方便。

「それで、ちょっと情報を頭に入れておきたくてな」

「なるほど。
 でも、ギブアンドテイク。なんか分かったら俺にも教えて下さいよ?」

「ああ」

「じゃあ俺帰りますね」

 あ、思い出した。

 「あ、あと」去っていこうとする西を呼び止める。

「1つ調べておいて欲しいことがあるんだが、頼めるか?」



 西は「分かりました。調べてみます」と、来た道を戻って行った。

「上手くいったな」

 振り返ると、後ろの木に隠れていた例の2人が出てきていた。

「なんとかね」

 俺は再び資料を開く。

 「あっ」早速見つけた。

「どうしました?」

「昨日起きた即白骨について書かれてる」

「一緒にいたあの女か?」

「それもあるんだけど……」

 そこにこう記されていた。「即白骨はセーラー服を着用」と——

「被害者は学生だ」
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