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怪異妙奇譚伝 作者:Kt

壹譚目

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十三

 被害者の家を後にした俺らは、タクシーに乗るため、大通りを目指した。
 理由はもちろん、四六横丁に向かうため。
 何かしら手がかりがあるはずなんだ。実際に起きたこと、そして記者としての直感がそれを訴えている。

 「あのブレスレットが即白骨事件と関連している——そういうことだよね?」歩みを進めながら、俺はトー君に尋ねる。
 横では、イチ君が新しいガムを口に入れていた。包まれてた銀紙を捨てるかのように握り潰し、ポケットに突っ込む。

 「断定はできません」トー君はメガネを外す。同時に、ポケットから紺色のハンカチを出すと、少し顔を上げ虚空を見て「ですが……」と続ける。

「仮にそうだとすると、被害者同士に接点がなかったと警察が発表したことについて頷けます。警察も流石に購入した物までは調べませんし、現場からなくなっていれば調べるどころか気づきようもないですからね」

 メガネレンズを磨き始めるトー君。

 着実に近づいている——トー君の言葉の内容から推察できたこのことは、俺に希望を湧かせてくれた。

 今までは真っ暗な場所をただ闇雲に歩くように、俺はただがむしゃらに手当たり次第に調べていた。
 ブレスレットの発見は、そこに一筋差し込んだ希望の光だった。
 でも、光はまだ薄く細い。いつ消えるか分からない不確実さが残っている。

 今の俺にできるのは、あのブレスレットが怪異と関連しているということを祈り、そして見つかるよう尽力するだけだ。

 大通りに出ると、運良く斜め左前でタクシーが人を降ろしているところに遭遇。
 「すいません」と俺は慌てて呼び止め、人のいなくなったタクシーに乗り込む。
 1人助手席に乗ればいいものの、なぜか3人仲良く後部座席に。しかも、身長的に1番デカいはずの俺が真ん中。狭い……

「どちらまで?」

 「四六横丁へお願いします」足元にある出っ張りにどう足を置こうか悩みながら、俺は運転手に場所を伝えた。

 「あぁ……あそこですか」メーターを操作する運転手が意味深に呟く。

「何かあるんですか?」

 さっきからの繋がりで何か掴めるのではと思い、前のめりにして訊ねる。

「いや、あの辺りは車の進入が禁止されているんですよ。近くまでにはなってしまいますが、それでもよろしいですかね?」

 あぁ、成る程。

「大丈夫です、お願いします」
 そう応えると、タクシーはカチカチとウインカー音を鳴らし始め、そして動き出した。



 「昔は栄えてたのに、今は見る影もないよ」——四六横丁について、北さんがこう嘆いていたのを思い出す。
 その言葉通り、四六横丁は今はシャッター街として知られている。俺もそのイメージしかない。

 以前は、駅から離れている上、住宅地のような細めの道に入るなど、立地条件としては悪かったものの、昼はリーズナブルな食事処が、夜は煙で汚れたようなメニューを壁一面に並べていた居酒屋が何件も営業していた。
 そのため、朝から夜中の2時3時まで煌々と電気をつけられており、「とりあえず困ったらこの辺りに来れば時間を潰せる」と言われるくらいの栄えようだったらしい。
 だがバブル時代に駅周辺の大規模再開発が行われた際に複数の商業施設が誘致され、それに伴い全国展開しているようなレストランや居酒屋の大手チェーン店がその付近に乱立。
 結果、「わざわざ駅前にあるのに離れたこの辺りにまではね……」と足を運ばなくなった。景気不振の波が一気に横丁を襲い、それからさほど経たないうちに、殆どの店が暖簾を下ろしてしまったという。

 おかげで、酒の好きな——正確には、居酒屋が好きなのかもしれない。洒落たバーには意地でもいかないと言ってたし——北さんとさえも呑みに行ったことがない。



 ふと、俺は窓側に首を傾ける。

「どうかした?」

 「あ?」窓に肘をついているイチ君が振り向く。

「いや、そのなんか……喋らないなーって思って」

「あぁ……ちょっとな」

 イチ君は再び体勢を戻した。

 「喋らなきゃおかしいのかよ?」とか言い返されるかなって思ってたけど、何もなかった。ただ眉をひそめた。しかも、怒ってるというわけではなさそう。どちらかというと何かに対して迷っているような、少し重めの表情を浮かべている。

 「……何か気になることでもあった?」少し心配になった俺は少し覗き込むようにして尋ねる。

「いや……何も」

 何か隠しているのか、考え事をしてて邪魔されたくないのか、それとも本当に何も無かったのか――どちらなのかは俺には分からないが、それ以上は聞かなかった。ただ、ガムを噛んでいるはずの口が動いていなかったということは確認できた。

 記者という職業柄、何か含みがあるのではないかと一度思ってしまうと、いつも気になって怪しんでしまう。必要なスキルであり、迷惑なスキルだ。
 今回においてもそう。「別に知りたくなかった」と言えば、それは完全な嘘になってしまう。

 だけど、誰しも言いたくないことぐらいある。あって当たり前だし、なかったら不気味。
 俺だって記者である前に人の子だし、2人には命を救ってもらったという返しきれない大きな借りがある。

 だからそれ以上、俺から訊くのはやめた。
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