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怪異妙奇譚伝 作者:Kt

壹譚目

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11/22

 あの空き地から少し歩くと、大通りに出た。そこからさらに100メートルぐらい先にあった小さめの喫茶店に俺らは入った。

 イチ君が「あっちにしようぜ〜」と大通りを挟んだファミレスを要望してきたが、無視。タイムリミットは刻々と迫っている。今は1分1秒が惜しいんだ。無駄な時間は消費したくない。

 レバー式のドアノブを下に倒し奥に力を込め開ける。ドアに付いたベルが鳴り、奥から男性店員がやって来た。4人であることを告げ、店の奥にあるボックス席に案内される。
 外見からは小さめに見えたが、中はそうでもなく普通の大きさだった。4つあるボックスの他にカウンターが6つと4人席テーブル幾つか。奥まで広がっているみたいで正確な数は分からないが、少なくとも7組はある。

 成り行きで俺とトー君、イチ君とエンドウさんが隣同士に。で、俺とトー君が奥。
 寿命を吸われている影響からか、上手く体に力が入らずドスッと落ちるように座ってしまう。だが、ソファが衝撃を吸収してくれたおかげで大きな音がなることはなかった。

「じゃあ、アイスコーヒーで」

 テーブルに置いてある卓上メニューをチラ見して、注文。店員は注文表に記入する。

 「どうぞ好きなの頼んでください」エンドウさんに一言。

「えっでも……」

「遠慮せずに」

「……じゃあオレンジジュースで」

 店員は続いて記入。

「2人は?」

「僕も同じのを1つ」
 トー君は人差し指を立てて注文する。

「んじゃ、ハンバーガーセットのポテト山盛り、飲みもんはコーラで」
 指でメニューをなぞりながら注文するイチ君。

「注文は以上でよろしいですか?」

 イチ君の「はーい」で店員は去っていく。

「……えっ?」

「大丈夫だよ。ポテト山盛りはランチタイム無料だ。追加料金はない」

「いやそういうことじゃなくて……」

「心配すんな、余裕で完食できっから」

「そういうことでもないんだけど……」

「んだよー
 文句あっ……りますか、おじいちゃん?」

 あっ——同時に向けたぎこちない笑みで俺は気づいた。

「いや、ないよ。イチ……郎。
 ハハハハ……」

 自分で作った孫設定、すっかり忘れてた。
 エンドウさんの顔を見ると、怪訝そうに見ている。
 マズい……怪しまれてる……

「早速ですが、昨日何か変わったこととか不思議なことはありませんでしたか?」
 蝶番辺りを掴んでメガネを整えたトー君が質問を切り出してくれる。

「変わったことですか?」

 よかった……疑心がそれた。

「はい」

 俺は慌てて手帳とペンを取り出す。

 「特になかったと思います」エンドウさんは左手で右手首辺りを撫でながら応える。服の袖に当たり擦れる音が鳴る。

「昨日はいつも通りに一緒に帰って、好きなアイドルの話とか来年ある受験の話をしてました。
 なので尚更、小夜がこんなことになったことに実感が湧かないっていうか、受け入れられないっていうか……」

 エンドウさんは色んな感情が入り混じった表情を浮かべながら、ふいにケータイを取り出し、操作し始めるエンドウさん。

「3日前に撮りました」

 ケータイをこちら側に向けて置き、見せてくれたのは、エンドウさんが自らシャッターを押した自撮り写真だった。
 2人ともセーラー服姿であること、背景に黒板が映っていることから学校で撮影したものだと一目で分かる。顔をくっつけ、満面の笑みを浮かべている。幸せそのもの、といった表情。

「こんなに元気だったのに、なんで……なんであんなことに……」

 エンドウさんは深く俯く。
 まだ自分の中で整理がついていないんだと思う。
 事件が起きてからしばらく経った今でも、その上、その大多数が被害者とはなんら関わり合いのない人ばかりなのに、世間はまだこんなにも混乱してる。
 エンドウさんは近しい人をつい昨日亡くした。当然の反応だ。

 全員の飲み物が運ばれてくる。ハンバーガーは後もう少し、だそうだ。

 「金山さんのことは、ニュースか何かで?」店員が去ってから俺は質問を続ける。

「いや……実は今日小夜と遊ぶ約束してたんです。
 土曜の午前授業もなかったので、映画行ったり洋服見たりして1日過ごそうって。
 昨日の帰り道ではどこに行くかっていうのも話しました」

 イチ君が大きな欠伸をする。

「それで、今朝待ち合わせ場所で待ってたんですけど、いくら経っても来なかったんです。
 でも以前に寝坊したことがあったんで、最初は『また遅刻か』ぐらいにしか思ってなくて、前みたいに電話かけたりしたんですけど、それでも出なくて。
 やっと繋がったと思ったら、相手が小夜のお母さんで、それで……昨日亡くなったと、知りました」

 成る程。

「では、ここ最近金山さんに何か変わったことや気になったことはなかったですか?」

 「おっ!」見ると、ハンバーガーがやってきた。
 目の前に置かれ、「おっひょー!」とテンションを上げるイチ君。

「んじゃ、いっただきまーすっ」

 空気も読まずイチ君は大きな口でパクリ。
 次第に笑みが無に変わっていく。

「……今朝食べたほうが美味しかったわ」

「どうですか?」

 俺は無視して、顔をエンドウさんの方に向ける。

「うーん……」

 再び左手で右手首を擦るエンドウさん。

「些細なことでもなんでもいいんです。
 何かありませんでしたか?」

 俺は藁にもすがるような思いで質問する。

「多分なかったと思います。少なくとも私は分からなかったです」

「そう、ですか……」

「すいません、力になれなくて」

「いえ……
 もし何か思い出されたりしたら先ほどお渡しした名刺の番号に連絡いただけますか?」

「はい」

「あと、先程の自撮り写真頂いても?」

「どうぞ」

 俺らは一旦エンドウさんと別れることにした。まだ調べたいことは沢山ある。
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