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贈る唄
作:うみ


ーこれは、
私の初めての恋の物語ー


憧れの高校に入学できた、春の事だった。



私は、ゆみ。



今日は、制服が可愛い高校で、そして姉が卒業した高校で、すんなりと推薦合格し迎えた入学式。


まだ中学生の気分が抜けていない私を、新しい制服が高校生へと変えていた。



長ったらしい入学式も終わり、体育館に張り出されたクラス分けの名簿に一つ一つ目を通し、名前を探す。





一年五組。


あった!!


中学からの友達が少ないクラスで、多少不安はあったけど、
私の楽しみは、何と言っても、中学から決めていた部活だった。



体育館を出て、教室に向かう途中ー・・・



沢山の部活の勧誘で、道はごった返し、様々なユニフォームの色、色、色・・・。





私は、この高校で歴史あるという、あの有名な部活の団体を目で追う。



私が
唯一、中学から入りたがっていたのは、空手だった。



なぜって、中学の時の何かの講演会での警察官を見た時から、かっこいー!と一目惚れしたから。


あんな、かっこいー人になりたい!!



それなら、格闘技!


と勝手に考え、悩んだ挙げ句の空手だった。



勧誘してくれる先輩は、いないかな〜。



期待しながら、教室へと向かう。



でも、勧誘されなかった・・・。



だよな〜・・・。






その日の格好は、部活をやりそうな格好じゃなかった・・・。



ミニスカに、ルーズソックス、ローファー。。








だよなぁ。


私が勧誘だったら、話かけないもんなぁ・・・。



いいや!!
それなら、自分から行くべし!





私は、全ての日程が終わった、夕方、空手の道場へと向かった。



「アイッ、アイッ、アイッ!!」





道場に近付くたびに大きくなる、活気の声。





沢山の人たちが練習に、真剣だった。





それに圧倒されながらも、私の中に燃えているモノは変わらない!



勢いよく、道場のドアを開ける。



一瞬、みんなの動きが止まる。



冷や汗する私。



「失礼します!
今日、入学した、一年のゆみです!入部したくて来ました!」



はっきりと聞こえるように、そして大きな声で言った。



近くにあった椅子に座って、見学するように言われ、言われるままに部活の風景を目に焼き付ける。






全国出場を伝統としている分、
物凄い練習内容だったけど、とっても惹かれるものがあったんだ。






練習を見学して終わった頃、私のやりたい!と言う気持ちは、益々盛り上がっていた。



「明日から
参加させて下さい!」



そう言って、練習時間を聞き、道場を後にした。次の日から、学校が終わると、真っ直ぐに向かうは道場。



まだ、
道着がない一年生は、
新しい体育着に、先輩達が来る前には、何かと準備をやっておかなければならなかった。



下っ端と言う事もあって、掃除などやる事も多かった。



一年生の頃は、
特に何も大きい変化はなく、ただ、毎日が、慌ただしく過ぎていったような気がする。



でも、
その慌ただしい中に、1番面白くて、ムードメーカー的な先輩がいて、いつしか、その人の事を目で追っている私がいた。

その先輩の名前は、
優先輩。



優先輩の最初の印象は、歓迎会で
広い先輩宅に部員全員、泊まった夜、
テンションが最も高かった人で、とっても面白くて、この人、お笑い芸人になれる!という印象だった。



それから、この人と、話してみたい!って思ったんだっけ。



部活で、休憩の時に水を渡したりして、
ちょくちょく絡んでたっけ。



それから、
みんなよりは大分
遅かったけど、私が携帯持つようになって。


何となく、
女の子に壁を作っていた優先輩には、
アドレスを聞けなくて、優先輩と一番の仲良しだったカズ先輩に、
優先輩の事、色々きいちゃお〜!!
と言うこんたんで、
カズ先輩のアドレスを聞いた。



その夜、早速、
私は、カズ先輩にメールする。



「今日も、練習お疲れ様です!」



送信。



5分後・・・。





メール受信。



「だれ?」ん?



「今日、アドレス交換した一年のゆみです!
カズ先輩、登録してて下さいよ〜!」


と、送信。






またまた、受信。



「俺、優だけど・・・。」





そのメールを見て、
凍りつく私・・・。





どうしよう!!



取りあえず、
速攻で、
「すいません!
間違えました!」
と返信した。





・・・どうしよう、
怖い。。



ただでさえ、
優先輩と話しないのに!



次の日、道場に行くと
カズ先輩が、優先輩に怒られていた。






「お前、勝手に、人のアドレス教えんな!」






でも、カズ先輩のお陰で強引だったけど
私は優先輩に、
「お疲れ様です」のメールを送る事ができるようになったんだ。



相変わらず、
優先輩の反応は
素っ気なかったけど
返してくれてた事に嬉しかった。



そして、それと同時に、部活では、あんまり話さなかったけど、
優先輩に少しずつ惹かれていく私がいた。











高校生になって初めてのクリスマスが来た。





でも、勿論、
その日も練習。





寒いのに
外を走る事になっていた。





嫌々、走る。





風は冷たいし、寒いし、鼻は痛い!!



最悪ーッ!!





そんな気持ちで
走っていた。





すると、後ろから
肩を叩かれた。


「はい?」






振り向くと
そこには優先輩。





うわ〜ッ!!
何何!?



テンパっていたら、
優先輩が、








「ゆみさぁ、
明日、誕生日って言ってたよねー、何かあげてやるから期待しててな!」



そう言って、私を追い越して走って行ってしまった。









はい!?



何ですか!?

何!?
この気持ち!!



この展開!!



期待しておこッ!!



ワクワクして夜は
眠れなかった。



もしかして・・・

優先輩・・・



両想いーィ!?



妄想だけが
膨らむ夜だった。








次の日、
ワクワクドキドキしながら、道場へと向かう。



練習中も、

いつ貰えるのかな〜。

みんなの前で渡されたりしたら失神だよな〜。



そう考えてばっかりで
練習に身が入らなかった。



練習も終わって、
期待が膨らむ私。






そして、
帰る準備を始める優先輩。





ええッ!?



そのまま、
帰ってしまうんですか、あなた!!





ちょっと!
ちょっとちょっと!






平然と帰り始める、
優先輩。








めちゃめちゃ
妄想していた私にも
腹が立ったが
そうさせた、優先輩に
非常に
ムカついたので、


「優先輩♪
何かお忘れではないでしょうか?」



と私は笑顔で、
帰ろうとする優先輩を
引き止める。






一瞬、?マークを出す。



忘れてたのかよッ!








そして、いかにも
今、思い出したかのように、



「あっ!
ゆみの誕生日だよね!
ちょっと待って!」



と何やら、
カバンの中をガサガサし出す。もうッ!
忘れてなかったじゃない!



忘れたフリしてたんだね!





と、
ニヤける私。






「はい!
手出して!」








緊張しながら、
手を出す私。









「はい!プレゼント!」





飛び上がる程、嬉しかった私は、笑顔で手のひらを見る。






そこにあったのは、









・・・フルーツのど飴。



・・・一粒。












WHY!?





「じゃあね!」



そう言って、手を振り帰って行く
優先輩。





呆気に取られ、1人佇む私。






はい、期待してた
オバカさん〜♪





だよね〜!
付き合ってもないのに
わざわざ、プレゼントなんて買わないわな〜・・・!






でも、もうその頃には、
優先輩を目で追わない日はない!と言う位、
好きな気持ちは高まっていた。そして、
あの貰った一粒のあめ玉も勿体なくて食べられなかった。









それから、稽古納めと言う事で、道場の掃除があった。



その年、最後の部活だった。









優先輩は、窓を拭いている。






実は昨日、
いつも恋愛相談する友達のミカと2人で
優先輩に、何かあげたくて、そしてこの気持ちに気付いて欲しくて、

学校帰りにメンズショップに行って、優先輩に似合いそうなニット帽を選びに行った。






優先輩に
似合いそうな帽子ー・・・!!






彼女になった気分で選んでいた。





やっと選んだ帽子を
店員さんに丁寧に包んでもらう。






またまた、ワクワクして眠れなかった夜だった。








そして今、
それを渡すタイミングを私は探していた。









何って言おう!?









考えている内に、タイミングはやってきた。








「いつも相談にのってもらってますから、あげます!」って意味の分からない理由で、ニット帽を渡す。






驚く、優先輩。





・・・走って逃げる私。








その頃、親と喧嘩して、携帯を取り上げられてた為、
長い間、優先輩とはメールしていなかった時だった。














そして、あれよあれよと大晦日になり、仲良くなった部活の友達にカウントダウンをやろうよ!って誘われて、
海に行った。








すると、そこに
見覚えのある人がいた。



何でいるの!?






それは、優先輩だった。






友達が、私の気持ちに気付いていたらしく、
気を利かせたのか分からないけど、
このカウントダウンに、優先輩とカズ先輩も呼んでいた。






恥ずかしかったけど、
嬉しかった。そして、優先輩を
よく見ると、私があげた帽子を着けていた。





思えば私、帽子をあげた日から優先輩に会っていなかった。









あの日から、久々に見たんだなぁ。






そう考えている内に、
カウントダウンは始まった。






3、2、1。





あけましておめでとう!



海の上の船の船笛と共に、年が明けた。





周りが、この嬉しさに騒ぎ始めた。





そして、その空気に
のまれてみんな、テンションが高くなる。






ふと、優先輩を見る。












ええッ!?



何やってんですか、
お兄さん!!






優先輩は、どこから持って来たのか、カズ先輩とお酒を呑んでいて酔っ払っていた。






そして、フラフラと1人でどこか行ってしまった。














大丈夫かなぁ。。



心配だけど、追う事ができない私。多分、不安な表情してたんだと思う。






そばにいた友達が、
「ゆみ、優先輩、酔っ払ってるから、1人で歩かせたら危ないよ、見てきて。」後押ししてくれた。






急いで、後を追う私。








見つけた。



優先輩は、海が見渡せるブロック塀にポツンと座っていた。






恐る恐る声をかけてみる。
「あの〜・・・。
優先輩、大丈夫ですか?」


優先輩、振り向く。





「ゆみ?
こっちに座りなよ。」





怖いよー。。
緊張しながら、
微妙に30cm
あけて隣に並んで座る。



何も話せない位に固まっていた私。






すると、優先輩が、
「寒いねー。」って言いながら、私の手を取って、さすり始めた。






うわー!
何でいつの間に隣にいるの!



そして、この衝撃的な行動で、緊張感はピークに達していた私は、それからの記憶が、今でも全く思い出せない。









でも、一つだけ言うなら、これで、もう後戻りも出来ない位、優先輩にハマっていた。









そして、学校が始まり、一緒に行動していた同じクラスのサキに重大発表をした。






優先輩に告白する!って。






サキは、恋愛の話が大好きで、サキが話す事の、殆どが、
誰々がカッコイイ!!そういう事ばっかりだった。そんなサキは、私が恋をした事に興味津々で、
やっと、ゆみが恋をした!と喜んでくれた。






でもね、それが、今思えば、厄介な事だったんだよね。。








私、サキが、おしゃべり魔だとは知らなかったんだ。






サキは、サキの同じ部活の先輩に、

「先輩、優先輩って、同級生ですよね〜、
あの先輩の事、私の友達が好きで告白するらしいんですよ〜、
しかも、優先輩、かっこいいんですよ〜、私、見ましたから。
先輩、知ってますか?」って言ったもんだから、



サキが話した、
その先輩は、
周りじゃ有名の、
恋多き女と呼ばれていて、
なんと、優先輩を探し出して一目惚れをし始めた。





そして、得意の猛烈なアピールを開始。






もう、私が入る隙間もない程に凄かった。








その先輩は、自身の部活が終わっては、道場に来て
優先輩にやたらと話かけに来た。



同級生だから、敬語も使わない。
だから、普通に会話してて見てて羨ましく思った。



遠征に行って来ては、
「お土産だよ!」って渡していて、
バレンタインには、
「優が、呼び出されたらしいよ!」
と男子の先輩が噂していた。






もちろん、負けじと
私もあげた。



でも、
あの先輩に比べたら
私は、蟻んこだった。


そして、やって来た
ホワイトデー。



優先輩から、お返しにもらったのは、芸人っぽいセンスを生かしたのか、何か得体のしれない仮面。。






やっぱり、恋愛対象じゃないんだな、
もう、ダメだ。。
私の恋は終わった。





そして
ライバルが強すぎた。。



そう感じたものの、
このうやむやを晴らそうと、当たって砕けろ精神で、告白を決意した。






それは、
私が二年生に進級し、


彼がインターハイを控えた頃だった。





もう、優先輩は引退してしまうんだよな、
見れなくなってしまうんだよな、
寂しさ、切なさが、どんどん強くなっていく。






そして、4月7日、
告白を決行した。









優先輩に、
「お話したい事があります」
と電話で言う。






すると、
「今、どこにいるの?
俺、そこに向かうよ!」



場所を告げる。





30分後、校則で禁止されているバイクに乗り、
優先輩はやってきた。



心臓がバクバクし始める!!



そういえば、告白の言葉、考えてないッ!!



やばい!
どうしよ・・・。






挙げ句に、呼び出したのを後悔までし始める私・・・。






ええい!!
もうどうにでもなれ!!






「・・・少し、いいですか。。」

と話を切り出した。





「どうしたの?」ここで、最後の勇気を振り絞る。





「あのッ!
優先輩が、好きなんです!」











・・・。

















・・・。












優先輩、ポカーンってしてる。。








そして、

シーン。。









何分か過ぎた。









この空気に
耐えられなくなり、
私が口を開いた。








「あの〜。。
すいません。。なんというか、
返事だけでも聞かせてもらっても良いですか?」












すると、優先輩は、



「ちょっと待って。
時間が欲しい。」








予想もしていなかった
展開に、


私、



へっ?!





時間?!





WHY?






すぐ出る答えっしょ?



良いか、ダメかの2つに1つだよ?





ダメなら、今、言ってよ〜!


頭は、訳が分からず、チンプンカンプン。






でも、
時間をあげる事しか、あの時は出来なかった。

















そして、
あの衝撃的な告白をした日から1ヶ月が経とうとしていた。











なんだかなぁ〜・・・。






普通、
こんなに待たされるもんなの、告白の返事って。。








もう、
時間も経ち過ぎていて、これは、自然消滅だな!うやむやだけど、忘れなきゃいけないんだ!
と、葛藤する毎日だった。









そんな時、
あのサキがやってきた。









「ねぇねぇ!
聞いた?!
私の先輩が、優先輩に告白したらしいよ〜!」








・・・。






・・・そうだったんだ。





やっぱり、あの先輩かぁ。
同級生の方が良いよね。話も合うだろうし。






私の恋愛、終了ー!!

お疲れ様でした。今日も気まずいけど、
部活は部活で割り切らなきゃ!






気持ちを切り替え、
そして、道場へと向かった。





あれから、なるべく、優先輩を見ないようにしていた。





意識しないように、練習に取り組む。









そして、
いつも通りのハードな練習も終わり、
最後の柔軟体操をしている時だった。






突然、隣にいた友達が、



「ゆみ〜、今日、部活終わったらさ、優先輩が道場で待ってて欲しいんだって。」





ん?
何で?



もう振られたも同然だし、理解できてるからいいよ・・・。





こんなに待たせてた事を直接言って謝るつもり?






これ以上、傷つきたくなかった。











それでも、友達が一緒に近くまで付いていってあげるから!と、

重い足どりのまま、
制服に着替え、
みんなが帰った暗い道場に向かった。





優先輩は、もう
そこにいた。









「ごめんな、呼び出して。」






「・・・はい。」









「聞きたい事があって。自分から言いにくいんだけど、、
あのさ、まだ、俺の事、好きかな?」



「・・・。」



何が言いたいんだろう。

私、今、頑張って
あなたの事、忘れようとしているのに。








「あの〜・・・。
私、1ヶ月待ってたんですよ。
普通、付き合うなら、付き合うで、すぐ返事ってくれますよね。
私、
優先輩に無理して、
好きになって欲しくなかったから、返事、早く欲しかったんです。
あの、大晦日に、
手をさすってくれた事だって、私があげた帽子を付けてくれてた事だって、もしかしたら、両想いなのかな、って期待してたんです。
勘違いしてたんですよ!優先輩に告白してから、すぐに返事が貰えなくて、私、
もしかしたら取り返しのつかない事してしまったのかな、優先輩を忘れなきゃって、悩んでたんです。
それに、あの女の先輩に告白されたんですよね。聞きましたよ。」





私は、もうヤケになっていた。





だって、どんな想いで
この1ヶ月を待ってたかって、
言わなければ良かった・・・。
って後悔が押し寄せる毎日だったから。








すると、優先輩は、





「本当にごめん。あの人の告白なら断ってる。
ゆみが、まだ、俺の事、想ってくれてるなら、付き合いたい。」






え?





私?






ポカーン。。


何?





私と、付き合う?








はいィィ〜!?





考えてもいなかった
シチュエーションにびっくりして、状況が読めてなかった。





でも
嬉しかった。






けど、待って。
確かめたい事、あった。「じゃ、何で、1ヶ月も待たせたんですか?」






「それは、、
俺、ぶっちゃけ、クリスマスの時から気になってたんだけど、前の彼女の事とかあって、人を信じたくない!もう、恋したくない!って思ってたからさ、傷つきたくなかったんだよ。

だから、自分の中、整理するのに時間がかかった。
あと、本当、
1ヶ月も待たすつもりはなかったんだけど、
あまりにも、ゆみが、俺を避けるもんだから、嫌われたと思って、話かけられなくて。」





優先輩の気持ち、
聞きながら、
安心した。



そして、
私を選んでくれて、ありがとうって、そう思ったんだ。






私達は、
告白した日から
ちょうど1ヶ月後の
5月7日、付き合った。









そして、
あっという間に
インターハイがやってきて、優先輩が引退する最後の日になった。








試合が終わって、学校に戻って打ち上げをし、解散となった。








「最後の部活だから、
一緒に帰ろう!」
そう言われて、
誰かに見られないようにコッソリ一緒に帰った。





一緒に歩いてる時、
もうこうやって帰る事もないんだろうな、と淋しさに駆られ、ポロポロと涙が出た。








こうやって、思い出になっていく事が、私は怖かった。






優先輩に、
そんな気持ちが悟られたのか、
「大丈夫だから!」と何度も慰められた。






そして、どこかに座って落ち着こう!となり、
学校の裏門の階段に腰掛けた。









今思ったら、
大袈裟に感じるけど、あの時、優先輩しかいない!と感情が突っ走って、恥ずかしかったけど、言った。












「優先輩、
私のファーストキスになって下さい。」












夜の静かな学校で、
私は初めてのキスをした。
それは、付き合って1ヶ月経った初夏の頃だった。





優先輩が
引退してからと言うものの、大学を受験する優先輩、選手となった私、お互い、忙しい日々が続いた。



そして、あっと言う間に12月がやってきた。






クリスマス。



優先輩は、バッチリ休みを取ってくれていた。



そして、部活が終わって久々にデートする。






優先輩は、サプライズプレゼントを本当によくやる人だった。





いきなり、ギターが登場した時にはビックリしたけど、この日のために練習したんだ!って、


クリスマスと一緒の日に誕生日の私に
バースデーソングを披露してくれた。






ーお金もない、
時間もないけれど、
今日は君がこの世に
生まれた日だから
今の僕にできる
たった一つの贈り物。君の心にこの歌が
届きますように
優しい笑顔曇らぬようにこの歌を贈りますー





そして、お揃いの
シルバーのアクセサリーをプレゼントしてくれた。






私、幸せ者だな、って実感してたんだ。



優先輩からもらった
アクセサリー、お風呂も寝る時も、外さなかったんだよ。









そして、また時間は過ぎていき、今年も終わろうと大晦日の日はやってきた。









優先輩は人手が足りないとバイトが入っていて、
私は、いつもの部員メンバーと、去年の場所へ再び行った。



もう大晦日だなんて、
月日というのは、
恐ろしい程早かった。






そして、カウントダウンも10分前と迫って来た頃だった。






携帯が鳴る。



優先輩からだった。






「今、バイト終わったよ!ゆみ、今どこにいる?」






「去年と同じ海だよ。」





「わかった!
今から行くから。」





へぇ!?


驚きを隠せなかったけど、友達に、
今から優先輩が来るらしいから、ちょっと抜けるね!
と言い、去年、優先輩と座ったブロック塀に一人向かう。






一人で座って黄昏ていると、再び携帯が鳴る。





「どこにいる?もう少しでつくから」





「去年、二人で座ってた所にいるよ!」





電話を切り終えた時には、


23:59となっていた。






こりゃ、間に合わないだろうな。






今年も、終わる。






周りでは、カウントダウンを始める人達も出始めた。






3、2、1。





去年と同じように
船笛が鳴り響く。






「……みッー!!」
後ろから声が聞こえた。



振り向くと、
すごい速さで優先輩が
走って来た。






「優先輩!!」

笑顔になる私。





そして、次の瞬間、


私は、腕を引っ張られ、気がついた時にはキスされていた。





今年最初のキス。


ドラマみたいで
恥ずかしかったけど、思い出に残る年明けだった。



付き合う、って楽しい!



本当に、青春、って感じがした。





優先輩は、本当に
優しくて、かっこよくて、最高の彼氏だった。



そして、
お互いが休みの日には、よく、海へ行った。

優先輩は、
1人でも行く位、海が大好きだった。



あの海の広さが
心を落ち着かせてくれる、って。



それから、私も海が好きになって、晴れた時でも雨の日でも、よく連れて行ってもらった。






隣には、優先輩がいてー。


それが、当たり前になってきていた。






でも、時間って、
止まらない。



いじわるだと思う。






もう、日付は3月に差しかかっていた。



3月1日は、
優先輩の卒業式。



その日が来て欲しくなかった。



前日に、
「最後の制服デートしよ!」
と、お誘いがあり、
私の部活が終わるまで
図書館で待っていてくれた優先輩と帰った。





記念に!
と、プリクラも撮った。






なんだか、
離れたくなくて、
夜遅くまで、

私の家の近くの公園で
お喋りしてたね。






家に帰って、
とっても叱られたっけ。でも、全然怖くなかった。



恋のパワーって
恐ろしいね!そう思ってたんだ。












次の日、



〜♪♪



携帯の着信音に
起こされた。





「〜・・・もしも〜し・・・。」






「ゆみ?
ごめん!起こしてしまったか!?」



声の主は
優先輩だった。








「ううん〜・・・
大丈夫だよ・・・
どうしたの〜・・・?」

寝ぼけまなこな私。






「あ〜・・・
今日、俺、卒業式だから、これで学校が最後だと思うと寂しくなって。。だから、随分と早いんだけど、実はもう、学校に向かってるんだー!」






「ええ!?」





時計を見ると、
まだ7時前ー・・・。





それにしても
早過ぎでしょ!?






そう思いながらも、
「そうだよね〜!
寂しいよね!
よしっ!今から私も行くから待っててね!」そう言って、電話を切った。









ダッシュで準備して、
7時半には、学校に着いた。






でも、優先輩の姿は
なかった。






あれ!?

おかしいなぁ、っと
携帯に電話する。






ーおかけになった電話は電波が・・・





えー??
何それ!!



一時間経っても、優先輩は現れなかった。








もうっ!!

カメラも、写真沢山撮ろうって、用意してきたのに〜!!






不機嫌になりつつある私に、携帯は鳴る。









カズ先輩からだった。






「もしもーし。」








「ゆみかっ!?
優が、朝、車に引かれて、病院に運ばれたらしい!今、優の兄貴から電話が来た。
ゆみ、早く優の所にいけ!!」












言われた事は、
そんな感じだったと思う。何を喋ってるのか分からなかった。


一緒に、
優先輩を待っていた友達とタクシーに乗って、
教えてもらった病院についた。






受付で、名前を言って
場所を教えてもらう。









なんだか、
嫌な感じがした。


重い足取りで、
部屋につく。






扉を開けると、
優先輩の寝顔があった。





そして、そばには、
初めて見る、優先輩に
雰囲気が良く似た人が三人立っていた。



優先輩の
お母さんらしき人が、目を真っ赤にして
優先輩を見ていた。






私は、状況が掴めなかった。

立ち尽くしていると、





「・・・ゆみちゃん?」と声をかけられた。






「あ、はい・・・」






「・・・優、
トラックに引かれて、即死だったんだ・・・。。」















え?





今、そこに寝てるのに?


友達が
そばで泣き始めた。



信じられなくて、
私は涙も出なかった。





後から、
沢山の親戚の人達が来て、私たちは、病院から出るしかなかった。






嘘だと思いたくて、
メールを問い合わせしてみた。






0件。





それでも、実感はなかった。

家に帰って、
優先輩から電話が来るのを、ずっと待っていた。



でも、
いつの間にか、眠ってしまっていた。



次の日、
カズ先輩から、
優先輩の葬式の詳細が
送られてきた。



部活生、みんなが参列する事になっていた。






みんな、私を気遣っていた。



写真に写ってた優先輩は、卒業アルバム用として学校で撮った個人写真だった。





はにかんだ笑顔で
こっちを見ている。






優先輩・・・。






頭の中は
空っぽだった。





放心状態って、
この事を言うんだと思った。



「・・・ゆみちゃん!」



帰ろうとした私を、
優先輩のお母さんが呼び止めた。






「これ、優の制服のポケットに入ってたらしくて、ゆみ、って書いてあるから、渡しておくね。
今日は、ありがとう。」


と、ちょっと血痕が付いた、折り畳まれた白い紙切れを渡された。









開いてみる。



それは、一枚にビッシリ書かれた手紙だった。









「ゆみへ。
おはよう。突然の手紙で
びっくりしたと思うけど、俺、今日、卒業するから、この手紙が最後になると思って。

ゆみと出会えて、本当に良かったって思う。
学校生活が、とっても楽しかった。
ゆみと付き合ってからの事、一つ一つ、思い出してしまう。

俺が落ち込んでたら、元気になれるよ、って
レモンのキャンドルくれたり、風邪引いたら、これが一番効くから!って薬持って来てくれたり。ゆみの、さりげない優しさが好きだよ。
ゆみは、恥ずかしがり屋だから、好きとか、あの告白以来、言ってくれないけど、俺は、好きだぜ!
これから、俺は大学生になって、忙しくなって、今よりもっと会えなくなるけど、ゆみの事、大事にするし、好きだから!だから、ゆみも、俺を忘れないで!って言ったら、縛り付けてしまうよなー。だから、言わないでおく。でも、好きな人が出来たら言えよ!
俺、近くにいてあげれないから、ゆみに寂しい思いさせてしまうだろうし。
でも、やっぱり寂しいなー!
1人で卒業したくないなー。お願い、一緒に卒業しよう?(笑)無理だよなー!俺が、あと一年遅く産まれれば、って最近、よく思ってる。でも、ゆみがいるから頑張るよ!
じゃ、先に行くぜ!
優 」



涙が止まらなかった。
声を出してないた。





優先輩!
最後まで、名前呼べなかった。
「もう彼氏なんだから、先輩って呼ぶな」って言ってたけど、
優、って呼ぶのが恥ずかしくて、
何か用がある時は、
優先輩の近くまで行って、トントン、って肩叩いて呼んでた。



私、最後まで・・・。



ゆみを一番に乗せたいから、って買ったばかりの車、私と会えるまで、誰も乗せなかったんだよ!って言ってたね。


私の部活が忙しくて、
一緒に帰ろう、って言われてたのに、帰れなかった事も多かった。いっぱいいっぱい、寂しい思いさせてたよね。






優ー・・・
ごめんなさい。



優の葬式が終わってからも、私は部屋から出なかった。








友達が、新しい学年のクラスを教えてくれたり、
「明日、一緒にいこう!」って誘ってくれてたけど、前を向く事が出来なかった。








死のうと思った。






でも、いつか優が
ひょっこり現れるんじゃないかと考えると死ねなかった。






優の死を受け入れたくなかった。


ある時、
先生から電話が
かかって来て、
出席日数がギリギリだと言う事を遠まわしに言われた。





それ程、沢山、休んでいた。


そして、仕方なく学校へ再び通い始めた。





毎日を、ただ流れるように過ごして、





私は卒業した。














そして、
4月になった。



私は大学生と言う道を選んだ。





優が、行きたがっていた大学。優の代わりに受験した。



そして、優の代わりに学生になった。





優の死を
受け止める事は、まだ出来ていない。





優が、
18年間生きて来た事、私の彼氏だった事、この世に存在していた事、絶対に忘れたくないから。


「じゃ、先に行くな!」


優は、そう言った。



優は、きっと
このどこかにいて、

「引退とか卒業とか、いつも、俺ばっかりが先だよな!」って不満そうに言ってたから、
実は、大学に先に行ってて、私に見つからないように隠れてるんだよね!






優、サプライズ好きだもんね!









いつか、優を見つけた時、私は言うよ。





「優、サプライズし過ぎ!!」














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