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僕のかっこ悪いヒーロー
作:水田



第1話:僕らの日常


 夜、9時を過ぎると居間には誰もいなくなる。
 僕は両親と3人暮らしなのだが、この時間になると父は書斎に籠もってしまい、母は寝てしまうからだ。
 だから、僕が台所から食物を失敬しても誰に見咎められる心配はなかった。食料がいつのまにか減っても、母はそれ程心配していないようだし。
 それでも、京さんが大食らいだったら不審に思ったかもしれない。その点は京さんが小食だったので助かっている。
 僕は食パン2枚にマーガリンを塗り付けたのと、牛乳をコップ一杯持って、2階の自分の部屋に戻った。
            「おー、賢一。悪いな」
             部屋のドアを開けると、僕のベットに寝転んでテレビを見ながら京さんが全然悪いと思っていなさそうな間のびた声でそう言った。
 僕はテレビとベットの中間にある小さなテーブルに持ってきた食物を置く。テレビに映っているのは今人気の連ドラだった。
            「京さんてさ、こういう刑事もの好きだよね」
             犯人を追う主人公を見ながら僕は言った。
 京さんと僕の趣味はまったく違っていて、僕は学園ものが好きだったりする。
            「あー、好きだぞ。なんつーか、このドキドキする感じがたまらん。刑事はいいぞ、刑事は。賢一も警察になれ」
            「いやだよ。僕なんかじゃ無理だ」
             小さく呟いた僕の言葉を聞いているのかいないのか、京さんは僕が持ってきた食パンをばくばくと食べ始めていた。
            「うーん。マーガリンだけってのは味気ないなぁ。ジャムとかないのか?苺の」
            「今はないよ。今度買ってくる?」
            「おう、頼む」
             京さんは最後に牛乳を一気に飲むと、また寝転んでテレビを観だした。
 食い入るように画面を見つめる京さんは子供みたいで、とても僕より5歳も年上には見えなかった。
 京さんは毎日8時半から9時の間にやってくる。庭木を上って部屋に入り、僕が用意した質素な夕食を食べ、11時頃にどこかへ帰っていく。
 いったい、いつからこの関係が始まったのか、もう定かじゃない。
 でも、京さんに出会った日のことは鮮烈に覚えているんだ。


 他の連載を差し置いて、何をやってる!と怒られそうだけど、賢一君と京さんの話をぜひ書きたくなってしまったのです。     すいません。他もちゃんとやります。











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