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孤独経路-1
「なあ、将来何になりたい?」

突如、肩を組んでいた不良少年が質問する。
先ほど、八咫烏は正樹に半ば強制的に一緒に教室を出ていたのだが、もともと擁は多くを喋るタイプではなく正樹も特別話し上手というわけでもない。
つまり、会話が途絶えていたのだった。

別に八咫烏はこの空気を気まずいと思うわけが無く、とりとめも無いことを思案していた。しかし、どうやらというかやはり、正樹はこのような空気は苦手のようで、校門が近くまで見えてきた所でこの状況を打開しようと喋りかけたのだった。

しかし正直、八咫烏としては迷惑、というか邪魔だった。
自分は人と喋ることに向いてないのはわかっているし、考え事をするのが好きなのだ。いや、詳しく言うとそれは間違っているか、正確には人間関係を保つのが苦手、相手のことを考えるのが苦手なのだ。それを別段、変えようとも思わないし、変えれるとも思わない。

しかし、そんなことを正樹に幾ら話したところで意味の無いことはわかっているし、声に出すのも面倒くさい。
かわりに、大きなため息をついて、気分を切り替える。少しばかりの思考の後、不良少年の問いに答える。

「そうだな……特に決まってないし、今決めようと思わないが、自衛隊に入るのはヤダ。疲れそうだし、メンドそうだし」
「そうか?でも、そこなら俺たちの能力が発揮できるだろ?」

にやっと笑って力瘤をつくる金髪バカ。
どうでもいいが、コイツは見た目が派手なので名称がつけやすい。
なぜか侮辱気味になってしまうのが難点だが。別に他意はない、容姿を忠実に名に反映させるとそうなるだけだ。つまり、こいつの見た目が悪いからそうなるのだ。

どうでもいいことを考えながらも、正樹の言うことに思わず笑ってしまう。
同意の笑みなどではない。そんなこと思うはずも無かった。




なんだ、こいつもか―――――




「奴らは別に俺らの能力に感謝なんてしない。ただ『利用』するだけだ」

別に正樹の意見は珍しいことではない。寧ろ、異能者にしても超能力者にしても能力保持者は、自分の能力が生かせるところで仕事をしようと目指す。折角、百人に一人の能力、使わなければ意味がないだろう。
当然、そう考えるのだった。
八咫烏の考えはそんな想いを真っ向から否定するようであり、彼の性格をしらなければ正気を疑うかもしれない。
彼の性格はかなり捻くれていて、それは自他共に認めていた。といっても社会不信ではなく、ちゃんとした理由を持った上でのことだが。

だがそんなこととは別に驚いて、正樹は横を向く。それほどまでに彼の言葉は感情がこもっていなかった。いや寧ろ、自分の激しすぎる感情を抑えるために敢えて無感情に言っているように聞こえた。そうしないと爆発してしまうから――――。
だから、横の友達(やしお)が何時ものように面倒くさそうな表情をしているのを見て心底ほっとしてしまった。

と、そこで校門を抜ける。そのときチラッと学校名を刻んだ石碑が見えた。


『特殊技能専門学校』


特殊技能―――――――異能者と超能力の能力のことである。世間からの目が厳しい今、批判を少しでも防ぐためにこのようなオブラートに包んだような名称にしたのだ。

そこまでして恐れるとはね、思わず笑えて来てしまう。
恐れているというのは俺たち能力者のことではない、能力を持たない一般人のことである。

爆発能力者自殺事件の後、世論は一気に引っくり返った。

『能力者はその能力を社会に活かせ』
『一般人と一緒に生活するのは危険すぎる』

などという意見はまだまだ軽いほうで、果ては

『能力者は禁固すべき』
『超能力者はなるだけで犯罪だ』

などと言われた。

別にその時代に生きたわけではないが、その話を人伝いに聞いても呆れてしまう。
もともと、能力者は個人で言えば、一般人と比較にならない戦力差がある。人間兵器と言い換えてもいい。
兵器が一般人と同じに生活できるわけもないのだ。ただ事件が起こるまでは『平等』という甘美な響きによって、危険性が麻痺していたのだろう。
政府も能力者が危険だと感じたからこそ、自衛隊の意見を真っ向から否定することは無かったのだ。人権を認めないことはともかく、国の戦力として数えるべきだというのは、確かに一理あったのだ。
そもそも――――――

「おい、擁く〜ん。おきてるか〜い、親友を残して逝ってしまうのかー」

意識が現実に戻される。気がつくとかなり歩いてきていた。
たかが学校名でここまで考えこむとはね。思わず自分に呆れてしまう。
自分の性格を変えようとは思わないが、せめて他人と一緒に帰るときに考え込むことはやめたいものだ。

「すまん、どうやら君の声が自動的にシャットアウトされるようだ。俺の耳はデリケートなんでな」

お詫びをかねて一言。
普通に謝ってもいいが、こういったほうが正樹が喜ぶのだ。

「うっ、相変わらずだな。お前はこっちだったよな?じゃあ、そろそろお別れだ」

T字路に差し掛かったところで手を上げて反対方向に歩き始める。

「やっと一人の時間が取れるな。ああ、肩凝った」
「ははは、ホントにひでえな。まあいいや、じゃあな〜」

金髪の不良は後ろにいるため確かめるすべはないが、十中八九笑いながら手を上げているだろう。だから俺も手を上げてやった。
そしてお決まりのセリフ。

「ああ、じゃあな。……円藤寺」

なんとなく、苗字にしてみた。意味は本気で無い。

「円藤寺って何だよ。名前で言えよ、擁。友達だろ」

友達――――――今度は否定しなかった。


とんっ


足を地面に軽くぶつける様な音がする。
振り返るとすでに彼の姿は無くなっていた。

「そういえば、瞬間移動能力だったな――――――」

出会ってまだ一ヶ月たたない友人の情報をいまさらながらに思い出す八咫烏。

「……なら俺について行く必要ないだろ」

当然の疑問に「友達だろ~、擁ク~ン?」という声が聞こえてきそうだった。

――――俺にはストーカーにしか感じられないけどな

友達想いの金髪耳ピアスの心遣いは変態行為として見なされていた。
・異能者と超能力者の違い

異能者というのは生まれながらして能力を持っている人。
超能力者というのは後天的、人工的に能力を得た人のこと。

今は能力者に厳しい社会でわざわざ超能力者になろうという人はほとんどいませんが、爆発事件の前にはそれなりに評判が良かったので超能力者になる人がいました。

ちなみに円藤寺正樹くんは超能力者。上の説明と矛盾しますが、後々説明すると思います(≧▼≦)


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