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あらすじ あのカエル、次邪魔したらシメる 以上!
第四話 変態の名前はカラクでした
 

 小窓から気持ちのいい日差しがさんさんと降り注ぐ、時間は昼と夕方あいだ頃。石の部屋から拾った剣はマリとヨミが用意した鞘に収まり、窓際に立てかけてある。

 上等な銀の細工が施された美しい鞘に光が反射して美しいのだけど何の飾り気のない刃身だけが取り残された立派な剣。

 一人光喜は部屋で木製のイスに座り、テーブルに肘をついて頬杖をしてボーッと考えていると少し離れた村の中心から楽器と人の声が風に乗って掠れ掠れに響いてくる。祭りでもあるのだろうか。

 それより重要なのは瞼に浮かぶのは地球、それも日本…家族のこと。一人になると不安が胸の中から沸いて出てきて光喜を蝕む。

 『こんなに悠長に構えて良いのか?』『浦島太郎みたいに帰れても、もう知っている人は皆死に絶えているのでは?』『家族が死に物狂いに探してくれているかも』

 次から次へ、暗中模索の俺に投げかけてくる、だから光喜は頭を抱えた。流石に時間が経つにつれ重いプレッシャーがのしかかってきた。今はこの待遇を受けているが明日はどうなるか分らない身だ、彼らが何らかの期待あって俺をもてなしてくれる。

 しかし俺にそんな事ができるとは思えない。

 ため息をつくとコンコンと光喜のいる部屋のドアからノックする音がした。

 「どうぞ」

 返事をすればドアが開く、マリかヨミだと思っていたのに入ってきたのは意外にも赤毛の眼帯の男だった。そういえばコイツの名前、まだ知らないな…。

 「食事を持ってきた」

 眼帯の男は木のおぼん片手にドアを閉めた。

 「うん…」

 元気のない光喜の返事に眼帯の男は食事を乗せたおぼんを机に置くと軽く光喜の頭を撫でた。

 「?」

 今の今まで彼に光喜を気遣うそぶりなんぞ一度も見せなかったのに眼帯の男の意外な行動に驚く。

 「お前の家にすぐに帰れる、そう落ち込むな」
 「は?ちょっ…どういう意味だよ、帰れるって地球か?すぐ帰れるのか、つか今日帰れるのか!!」
 「落ち着け、今日は無理だ。ただ明日にはお前の生まれ故郷の異世界へ帰せる、とにかく食事をしながら長老の話の続きを話そう」

 男は光喜の向かい側に座ると目で食事を取れと急かす。

 視線を下へ移すと木のおぼんに乗っている食事はパンにスープ、ハーブがたっぷり振りかけられた骨つき肉とお茶。種類は少ないが、一品一品の量が多いので光喜が食べきれるかどうか。

 「いただきます!」

 現金な俺は目の前の食事と男の好転になりそうな話に先ほどとはうって変わってテンションがあがってたりして。急いでフォークとナイフを持ってがっつき始める。

 うげ、お肉ラム肉(羊)だ。やわらかくて美味しいんだけど臭い、だからハーブがたっぷり掛かってたんだな。

 「なあ、話してくれよ」

 俺が肉を食ってるのを、ただ見守っていた男へ声をかけた。

 「そうだな…持ってきた食事が食べられるようで安心していたところだ」
 「そりゃどうも、食文化の心配か?俺が落ち込んで喉も通らないって心配か?」
 「両方だ、柔軟性のある気性で助かる」 

 結構気配りできる男じゃないか、俺の男への株はちょっと上がったりして。この際、暗に能天気な性格といわれても男の視線が俺の胸に向かって動かない事実も許そう。

 「カラク・ジーバン、それが俺の名前だ。覚えておけ」

 この世界へ飛ばされてなかなかの時間が過ぎたのにやっと男の名前を知った。
カラク、カラク、と口の中で何度も繰り返し記憶する。

 「んで、カラクさん。地球へ帰れる方法を重点に話を続けてください」

 ちょい嫌味をこめてそう呼ぶと、ふっと軽く笑われる。その顔もサマになるんでむかつく。

 「ああ、長老から賢者の話は聞いたな?それが此処の世界へ連れてこられたのはお前が女神の娘、または女神の化身だからだ」

 うん、そこまでは長老さんから聞いた、続きはパネトーネのアホに邪魔されてしまった。

 「女神は原罪の霧を浄化することが出来る、お前の持っているその剣でだ」

 窓際に立てかけてある剣へカラクは視線を移す。

 「そもそも原罪の霧ってなによ」

 お行儀悪くスープを咀嚼しながら聞く。

 「女神信仰にある天地創造の伝説にでてくる悪しき霧だ」

 カラクは静かに、俺の目を見て神話を話し始めた。

 


 世界がまだ女神と世界樹しかないころ、女神が世界樹の枯れ葉を集め大地をつくった。次に世界樹の枝に空を引っ掛けて太陽と月と星を置いた。こうして大地と空が誕生した。
 そして女神が世界樹の若葉を一枚むしり、細かく砕いて大地に蒔くと動物と植物と人間へ姿を変えた。
 最後に女神が世界の災厄をぎょくに閉じ込めて世界樹の枝にそっと置くと、誕生した大地と空から災いが消えた。

 大地と空にいる生き物は災厄を玉に閉じ込めたおかげで平和に暮らしていたが、世界の外側に暮らす竜が太陽に反射して輝く玉を見つけると食べてしまう。 
 口の中で砕けた玉は黒い霧となって噴出し竜は慌てて吐き出すと大地と空へ向かって霧が舞い落ちた。
 霧を浴びた生き物は悪しきものになって災いを起こす。それを見た女神が一粒の涙を流す。

 涙は一本の剣となって霧を浄化できる力を持ち人に与えたが、剣の所有をめぐって人間の争いが絶えないので女神は自分の血から一人の女を産むと、その女にしか剣を使えないよう封印した。
 
 

 「………という話だ、霧を浄化できるのは女神が造った神剣だけ、神剣を使えるのは女神だけ、剣を扱えるお前を奉る。俺たちは原罪の霧からお前に浄化を切に願いたい」

 女神の血から生まれたから娘、または生まれ変わりで女神そのものという解釈の違いは地方によって違う、光喜にとってどうでもいい問題だ。ついでに一番支持されているのは女神の生まれ変わりのほうらしい。だから皆俺を女神って呼ぶのか。

 「はーい、質問。俺の母ちゃん女神じゃなくて、一般の人間だぞ?」
 「そこまでは知らない、ただお前が女神であることは変わらない事実。その剣がお前の手にあるのが何よりの証拠だ、諦めろ」

 諦めろって…、人事だな。

 「まあ、大体自分の立ち位置は分った。そんで重要なのが俺の帰り方なんだけど」
 「心配ないこの世界「ノア・レザン」には五つの帝国がある、そして王宮は半分お前のためにある神殿だ」
 「ワオ!俺ってすごい奉られてない?」
 「ああ、どんなに権力や軍力があっても女神に仕えると誓わなければ賢者から玉座に相応しいと認められない。ひいては国の皇帝として認められない、賢者に祝福を与えられて正式に王冠が与えられその者は王となる」

 位の順は上から神である絶対最上位の女神、次に賢者と皇帝、皇帝と賢者は位としては同等。それから貴族、民。という具合に分けられているらしい。この世界には確かな身分があって人は平等ではないようだ。

 民主主義の時代の日本に生まれ育った光喜にはその隔たりがピンとこない。

 「よく分らない」
 「一度に覚えてもらうつもりはない、明日でも皇帝から聞くがいい」
 「会えるの?皇帝って…王様だよね一国の」

 光喜は目を丸くして驚く。簡単に会えるのだろうか?政治とか忙しそうなイメージがある。

 「勿論だ、会わなければあちらから押しかけてくるだろう。それにお前の生まれ故郷に帰してやるのには王宮の神殿でないと帰せない」
 「どのくらいの距…(肉を飲み込んだ)離?」
 「夜に発ってから明日の夜明けほどだ」

 うーん…遠いのか近いのか判断ができねぇ、こっちの移動手段はよくわからない。

 「てか、なんで夜?今から出発しても…」
 「今はだめだ、パネトーネの警護兵がお前の監視をしている。外にお前の部屋を見張っている奴がいるぞ。アイツが尾行して城につくなり奴がお前を連れて帰ったと宣言するだろう、そうすれば皇帝でも奴に褒美を与えなければならない上にお前に引っ付いて回る。奴が褒美として欲しがるのはお前の世話や教育という名の所有権だ。面倒な種を自分から蒔きたくない」

 光喜はパネトーネの顔を思い出し、顔を渋らせる。

 ノア・レザンの全てから信仰され切望されている女神の信頼を勝ち取ったと周囲に公言できたのなら王宮内の発言力は高まるだろう。そんな奴に利用されるのは光喜としても謹んで辞退したい。

 ラム肉は珍しいからすっかり全部食べた、そこで手を置く。

 「随分親切にしてくれるんじゃないか?アンタも俺に付きまとえば恩恵の一つでもあやかりたいクチ?」

 カラクは一つため息をつく。

 「そう思われるのは承知のうえだが面として言われると堪えるな。……結論から言えば違う」
 「俺にその辺の是非が判断できませーん」

 わざと茶化した口調でカラクを挑発する。カラクの少しの上から視線&つれない態度のお返し。光喜の意図を知ってるかのように眉を少し顰めた。

 「俺は女神を利用することはない、お前の意思と安全を全てにおいて優先する」
 「なんで?」
 「俺は…いやこの村の人間はエグゥテの民だ。エグゥテは女神に生涯身を捧げ、どこの国に属さない世界を放浪している民。つまりお前の下僕のだよ」

 光喜は微笑を保ったまま、テーブルの上にあるお茶を啜った。

 「え?なんだって?」
 「もう一度言う、お前の下僕だ、俺も双子姉妹も長老も…」
 「だーッ!待って、もっと詳しく説明してくれ。さっぱり分らん」
 「普段は女神の祠や遺跡を、世界をめぐって信仰を説きながら旅をする一つの場所に留まることはせずにな、この村もかつて先祖が造った駐留所のひとつだ。そして女神が降臨後は女神に仕えるのが使命とする」 
 「マジかよ、立派な町じゃん。これがたまに立ち寄るだけなの?」
 長老の家も立派だ、上から見た町の叙景も普段は放置されているとはとても思えない。
 「そうだな、大小さまざまな規模でエグゥテの民は世界中にいる、俺たちだけでない。おそらく前のエグゥテの民が旅たってそれほど時間は経ってないのだろう」

 へーたくさんいるんだ、エグゥテって。

 「もう一つ質問、だったらあの素っ気無さは何だったん?ツンレデ?男にされても萌えないよ」
 「ツン…?それは何か知らんが、必ず何者かが我々を監視しているのは簡単に予想できた、賢者が女神召喚を行ったという知らせがあった後、急ぎ女神に仕える一族がこの土地を訪れる。馬鹿にでも予想できるだろう?俺たちのエグゥスが女神を迎えにあがると」
 「そりゃ…怪しいね。女神がここに来たぞって宣言しているもんだ」

 会話の間に飲み干したお茶をテーブルに置く。

 「放り込まれたお前に初対面で優しく接すればお前は俺を慕う。そうすれば奴らは俺の回りをうろつくはずだ、それでは困る」

 女神に近い人物をこちら側に取り込めば女神を引き入れるのが楽になるというアホな打算らしい。現にあんなに光喜に親切にしていたマリとヨミが顔を出さないのはパネトーネの配下達に付回されているのだとか。

 それもわざとカラクから目を逸らす為にマリとヨミが当て馬になっている。どうりで初対面では敬語だったはずが口調がかわった。それも第三者が見ているのを前提にしてのことだったようだ。

 「ご苦労なことで、そんなに俺を取り入れたいかね?」
 「お前は自分の価値を認識していない…とにかく今夜村の者たちが祭りに乗じて騒ぎを起こす手筈だ。監視の目がそれたときに騒動にまぎれて此処を発つ」
 「あいよ」

 光喜は窓に寄りかかっている剣を見ると。

 「俺の荷物なんて拾った剣だけだし、この身一つでどこへでもいけますよ」
 
 カラクは光喜に頷く。
 
 「では、深夜に迎えにいく。それまで誰が来ても扉を開くな」
 「ほい、了解。しっかり連れ出してね」

 ふっと軽くカラクは笑う、ホントに美丈夫な男だ。むかつくくらい男の俺から見てもいい男だと思う。

 「安心しろ女神の御名とお前の乳に誓って無事成し遂げよう」

 バキューンと効果音が入るくらいアイツの視線は俺の胸へ。

 ……うん、笑顔で前言撤回。
アホな小説なので深く考えないで読んでくれたら幸いです。


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