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あらすじ 生真面目な騎士エーリオとであった、以上
第二十五話 砂に沈む宿で


 エーリオを加えた俺たちの昼食は続いている。宿の主人…モールドさん、本人から自己紹介を受けたわけじゃないがエーリオとの会話を横から盗み聞きして名前は覚えさせてもらった。

 モールドさんはまだ二階の俺たちが使う部屋の細かい掃除なんかをやっているのでまだ食事をしに降りてきてない。

 「ところであなた達はどうしてこの街に?」

 エーリオもモールドさんと同じ質問をする、そりゃ特別用事がないと砂漠化の進む街に用はないだろう。しかもエーリオ達が健康で砂漠を越えられるもの達を先に避難させているので半分以上の人が去った街なのに。

 俺はどうやって言い訳を作ろうと考えあぐねる、カラクは旅人として興味本位で街に寄ってみたで通じるかも知れないが俺はどう見ても旅人には見えない。
 
 しかも俺の肌は真っ白で普段から炊事なんかをしてないので指先まで綺麗、つまり普段の生活で仕事をしないで暮らしていけるという証明になる。

 魔法文明が発達したノア・レザンでは機械文明がそれほど重視されていない。まっとうに暮らしている大勢の人は中世の機械文化レベルで、子供から大人まで働くのが常識だ。

 俺の年くらいなら勉強と家の手伝いで男の子なら、薪割りとか生活の一部の感覚でするし、女の子なら炊事の手伝いや掃除とかね。

 だから自然に肌が日焼けしたり手が荒れたりするのだけど、俺の肌の綺麗さは貴族とかやんごとない身分だといっているようなもんだ。以前シナモンが一般市民の服を着ていた俺をどこかのお嬢か?と聞いてきたのを不思議に思ってモラセスに聞いてみた事があるので自覚している。

 俺が困っているのを察したのかマリがエーリオに向かって。

 「光喜様はカゼインの豪商のお嬢様でございます。私たち姉妹は光喜様にお仕えするお側仕え、こちらのカラクは旅の警護で雇われたしがない傭兵ですわ」

 ちょっとカラクに悪意があるような口調でマリは嘘の説明をした。カラクは肩をすくめたが別に言い返さなかった。

 俺はちょっとカラクに寄りかかり。

 (カゼインって何処?)
 (隣の国の名前だ…)
 
 手短に俺と同じくらい小声でカラクは答えてくれる、万が一にもガレット国の街にある令嬢といって嘘だってバレるより、隣国の令嬢だっていったほうがエーリオも詳しくは知らないと思ってマリは設定を作ってくれた。

  少しだけ、目を細めたエーリオは直ぐに顔に笑みを乗せた。

 「やはりどこかのご令嬢であられたか」

 マリはエーリオに笑顔で続ける。

 「はい、わたしたちは光喜様の遊学に隣国ガレットを旅しようと…それでヴァニーユに寄ってみたのですがこんな悲惨なことになっていようとは…」

 エーリオは手にしていたスプーンをお皿に置き、真剣な眼差しで俺たちを見て言った。

 「この最近のヴァニーユは皆さんが見た通り異常な速度で砂漠が広がっているのは分かっているね、特に一つだけ残った森には何人もの街の人が失踪している危険な場所だから間違っても行ってはいけない」

 光喜はお茶を飲んで口元を隠す、意味は無いが嘘をつく後ろめたさからじっとしているのが気まずかった。それに森が危険なのは知ってるし、行っちゃった。

 時間短縮に直接行ったのも、俺たちの敗因だよな~次から情報を収集したほうがいいよね。

 カラクは腕を組み、視線だけエーリオに向け。

 「いつから砂漠化が加速した?」
 「数ヶ月前から…前から燻られるような砂漠化はあったのだけど、栓を抜いた様に一気に大地の栄養があの森に吸われて、逆に森の木々は異常な成長をみせているよ」
 
 肉を切り分けながら、光喜は疑問をエーリオに訊ねた。

 「どうして怪しい森へ街の人は入ったんだ?ほっときゃ危険はないんだろう?」
 「それは食べ物の確保のために。森があるなら動物もいるかもしれないってね」

 少しだけエーリオは俯き、さらに口を開く。

 「でも誰も帰ってこなかった…モードルさんの息子さんも狩へ出かけてから帰ってない。それで兵をつれて救助しに森へ行ったけど…あの有様では」

 エーリオも森へ入って自分の目で確かめたのだろう、俯き手を膝の上で握り締めた。

 「正直……もうこの街は限界なんだ、僕の私財を使って何とか食料を集めていたけどパネトーネ殿下に見つかり成算のない金を使うなら渡せと勅命がきた。それでも殿下の目を盗んでやってきた援助金も底をついた今、一人でも多くの人を避難させなきゃならないのに!」

 少し沈黙が降りた、エーリオははっと我に返り熱くなった自分に対して照れ隠しのように。

 「ゴメン雰囲気わるくしちゃった」

 と軽く微笑んだ。

 そんなエーリオに一番早く声をかけたのはまたもや意外なカラク、しかも。

 「気にするな」

 なんて気を使っているし、絶対コイツなんかたくらんでいる。自分の味方なのに疑う光喜はじと~とした視線をカラクに向けていた。

 「確か以前この街に来たときに聞いた話だが、近くにある溶岩洞を利用した避難所の保存食は?」 
 「良くご存知で、保存食はもう既に全部持ち出し現在は地下洞窟に何もないな」
 「なるほど」
 
 一言呟くとカラクは洞窟の有無が聞きたかったのか、もうエーリオに興味をなくす。やっぱりコイツ善意で食事に誘ったんじゃなくて100%情報収集に使うためにエーリオを引き止めたんだ。

 光喜は声には出さずに心で呟く、ついでに羊の肉を口に放り込む。カラクらしくて逆にすっきりした。

 俺たちはエーリオ相手に食事を続けた、モードルさんが二階の掃除を終わらせてやっぱりエーリオの説得を右左に避けてエーリオが肩を落として帰るまで一階にいたが、部屋がもう使えるなら俺たちは二階へ移動した。疲れているのもあるが俺は早く頭の布取りたいから。 

 「へ?ちょっと待って、何で俺とカラクが別の部屋なわけ?いや別にアイツと同じ部屋になりたいって意味じゃないんだけど…」

 俺の部屋と案内された部屋は三人部屋だった、しかもマリとヨミとの同部屋。ちょっと前まで男だった俺には当然カラクと同じ部屋だとばかり思っていた。

 マリとヨミはそれはそれは素晴らしい笑顔で答える。

 「「あんなしがない傭兵と同じ部屋では光喜さまが穢れます」」

 嬉そ~うにされてもな。じゃなくて!!

 「俺は男だって!!マリとヨミと一緒に寝られない……!って何で三つのベットを一つにくっつけてんだよ!!!」

 マリとヨミは光喜の存在など無視して、ウキウキと三つあるうち真ん中を中心に左右のベットをくっつけた。

 そうか俺たちが飯を作っている間に機嫌がなおったのがコレか!!マリとヨミは掃除の特権を使って自分たちで部屋を選んでいた訳ね!!だから聞いてよ、俺は!!

 「俺は男だ!!」

 「「光喜様~ささ、こちらへどうぞ」」

 2人に示されたのは真ん中のベット。俺の自己主張など爽やかな春風のようだ、どこかへ飛んでいく。

 ああ、俺の存在って…。部屋は綺麗に掃除されていて素朴な雰囲気が落ち着ける部屋なのにベットから漂う威圧感は何ぞや?

 光喜が背を向けている外部へ続くドアから軽いノック音がした、返事を待たずにドアが開かれカラクがいた。

 「騒がしい、外まで声が響いているぞ」
 「だってアレみてよ」

 俺がベットを指さす。

 「ある意味では男が喜びそうな状況だ、よかったな。しがない傭兵には羨ましい限りだ」

 コイツどうこうするの面倒だからって軽く流しやがった。しかも最後のは嫌味だろう!

 「なんだよ!もう何の用だ、お前!?」 
 「腕輪にしまいこんだ酒をだして貰おう、エグゥテの酒だアレを餌に宿の主人から正確な避難用の溶岩洞の場所を探る」

 俺はちょっと首をかしげた。しかしエグゥテの酒とは卑怯な、絶対モードルさん酔いつぶれるぞ?酒好きそうなパネトーネの兵士ですらベロベロになる威力を持っているんだからな。

 「何で?」
 「溶岩洞は巨大でな恐らく森の遺跡の下まで続いていると先代の守護者が言っていたのを覚えている、うまく行けば森の中心部に短時間でいけるはずだ。地上では森に近づくだけで襲われるだろう」

 フーンと光喜は分かっているのか分からないのか、そんな返事をした。

 カラクは黙っていたが真っ先に狙われるのは光喜だった。原罪の霧は女神である光喜を求める、先の凶鳥のときのように。だが無駄な動揺を誘うので本人が気づくまで黙っているつもりだった。

 そして出来るだけ遺跡の近くにまた行かねばとカラクは考えている、そこにきっと森にとり憑いた原罪の霧…核となる本体がいるはず。

 考えられる安全かつ効率のいいルートがあるならば。

 「行ってみる価値はあるだろう、さあ出せ」
 「ほいっと」

 光喜が腕輪をさわると宝石からライトのように光の線が出て、出したい場所に光を向ける…今回はカラクの足元へ光を向けて固定すると、宙にSFチックなパソコンに似た画面が出てきた。

 その中で酒を選択して、酒の一覧が表示され更にエグゥテの酒を決定すると、酒ビンじゃなくて小さな木製のタルが現われる。

 それを拾いもう背を向けるカラクに「おい助けろ!」と叫びそうになったが後ろから伸びる双子姉妹の手に俺の両手を掴まれ。

 「「さあ、光喜様!湯浴びをいたしましょう」」

 あっなんかデジャブ…。俺が最初にエグゥテの町に着いた時を一瞬思い出した。

 俺とカラク会話中に双子姉妹が割り込んでこなかった理由が、彼女らの背後にある浴室だと一瞬で理解した、ついでに彼女らは既に真っ裸、俺はあの浴室が地獄の入り口に見え。

 階段を降りるカラクの背後から光喜の悲鳴が響く、まったく煩い奴だといわんばかりに呆れた顔のカラクはタルを片手に1階にいる宿の主人に向かって行った。

***

 光喜の腕輪から携帯のアラーム音に似ている音が響いた、光喜はベットから身を起こして腕輪を触るとアラーム音は止まる。腕輪の機能に目覚ましまで装備されているなんてファーロウは気が利くね。

 う~んとベットの中で背伸びをして今の状態を寝ぼけた頭で改めてみる。俺の両サイドには下着一枚でとってもセクシーなのにキュートな寝顔のマリとヨミ。

 ぴったり引っ付いてよく俺は熟睡できのが不思議、普段一人で寝ているから誰かが横で寝手いる感覚になれていないんだけど。

 それよか双子姉妹の気配にもう俺が慣れつつあるのかもしれない…。深く考えるのはよそう、不毛。

 まだまどろむマリとヨミから華麗に脱出した俺は手際よくパジャマにしている薄い服を脱いで、いつもの白の衣調の服を着て、昨日頭に巻いた長い布を自分流に不恰好に巻き純白の髪を隠し一階に降りた。

 そこには既にカラクが長方形のテーブルのイスに座り、テーブルに肘をついて片手で頭を押さえている。どうやら頭痛をこらえているようだった。

 「は?どうしたカラク」
 「……絶対に騒ぐなよ……暫くしたらおさまる…あの狸め…」

 テーブルには薬臭いお茶が置いてあって半分までなくなっていた、昨日酒を持って降りた様子から二日酔止めのお茶だと思う。奥の台所から朝飯のいい匂い、唸るカラクをほっておいて部屋を覗くとモードルさんが昨日作ったスープを違う材料と調味料を加えて味を変える調理をしていた。
 
 そんでモードルさんは超ピンピンしている。ああ…カラクが酒負けしたのね、あんたどんな肝臓してんの?カラクは決してお酒に弱くない、俺の爺ちゃん秘蔵の焼酎をバンバン飲まされても次の日はケロリとしていたのを知ってる。

 改めてこの人は何者…?

 「おはよう、よく眠れたかね?」

 じ~と見つめていた俺にモールドさんが挨拶をしてきた、俺も「お早うございます」と返事を返し。

 もう少ししたら朝飯ができるのでテーブルで待っているように言われ、マリとヨミが二階から降りてくる頃には食事の準備が整い。味付けの変わったスープは味に飽きがこなくて全部平らげた。

 約束の食材をちゃんと昨日の内から分け渡したのでそれを使ったのだろう、ケチって昨日のまま出せばいいのに客として満足させる心構えがやっぱりプロなんだな。と感心させられた。

 でもカラクはスープだけで他に出てきたパンやサラダなんかは食べなかった。スープを啜るのが精一杯という感じだし。

 元気の無いカラクは始めてみたが宿を出るあたりになるとちゃんと復活して、いつもの調子が出たみたいで先ほどまでうだれていた顔など知りません~みたいな顔をしている。
 
 モードルさんは宿の玄関まで見送ってもらい、俺たちは朝一で多大な犠牲(主にカラクの酒に強いというプライド)を払って手に入れてくれた情報を元に溶岩洞へ向かう。

***

 ヒポグリフと大蛇から降りて目的地の洞窟につく、相変わらず周囲は砂漠と化した石と砂だけが放置された世界。何度も思うけどコレが元は緑豊かな土地だったとは想像がつかない。

 それはともかく、洞窟内部に砂が入らぬよう薄い石の蓋を退かすとポッカリ暗い穴が俺たちを迎えてくれる。

 地下の溶岩洞に続く道は階段になっている、これを下れば天然の洞窟へ行き森…俺としてはジャングルの近くまで歩いていく作戦だ。

 街から出た俺は早速頭に巻いている布を取ると、白いマントのフードを頭から被ってから洞窟に向かう、だって洞窟の中は寒そうな風が流れているから。

 毎度のように魔獣2体に待ってもらって、その洞窟に入り後から嵐でも来られて生き埋めされるのは御免だから蓋をまた元通りに閉めて俺はヨミとマリにはランプを、俺は百円ショップのライトを取り出して明かりをつけた。

 賢者ファーロウに会いに行くときの街の百円ショップで買ったヤツだ、こんなことも有ろうかと予備電池も持ってきている。

 ん?俺の地元の町で買えばいーじゃん?馬鹿野郎あるわけねーじゃん俺の住んでいる町に!!

 二つ腕輪から取り出して一つをカラクへ投げ渡し、片手でカラクはキャッチして電気をつけた。

 洞窟は横式で奥が見えないほどに続いている、方角からして森がある方向にあるのでカラクの言っていた先代の守護者の教えは正しいかもしれない。

 奥へ進み五分もしたら誰かが物を置いた形跡や暫くの時間住めるように改良されている人工的に掘られた後なんかも見つけそれらを無視して奥へ更に進む。

 俺日本人だから洞窟とか想像すると水が滴っていたりする鍾乳洞とかだったがこの洞窟はとってもドライ、ただひたすら黙って奥へ進むとヒュッと風を切る音がすると思ったら俺の足元に一本の矢が地面に突き刺さった。

 ライトとランプを向けると弓矢を構えたエーリオが、昨日の穏やかな顔を一変させて鋭い眼差しでこちらを見据えている。

 「やはり来たか…」

 もう既に新しい矢を弦に乗せ、いつでもこちらを射れる状態だ。

 「どうして?」

 俺はできるだけ刺激しないように訊ねてみる、俺たちとエーリオが争う理由が無い。

 「君たちはカゼインから来たって言っていたよね、でもカゼインは五日前に内乱が起こっている。それで皇帝陛下直々に国境を閉鎖せよという勅命がくだった…内乱の難民がガレットへ流れ込むのを防ぐためにね」

 キリキリと矢を乗せた弦を更に引く。

 「それに伴い役所からカゼインの旅券で金を引き出すのを禁止された、君たちの持ち物からして金を引き出さずに移動しているとは思えない」

 カラクはゆっくりと刀を背中から抜刀し、双子姉妹も身構えた。

 「さて君たちは何者かな?」

 エーリオの声が洞窟に静かに響く。 
カラク敗退の酒飲みは一区切りしたら番外編でもつくって上げたいです。
珍しく押されるカラクと余裕な宿の主人とのやり取りを書きたいので宿の主人とはあっさりお別れです。
小説を早く上げると宣言してこの体たらく…スライディング土下座で許しください。


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