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黒い剣の異世界譚 作者:青葉 夜
33/63

EX00 - 勇者様の日々。

「おおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
「ハアアアアアアアアア!!!!!」

ギャッ!!
火花を散して剣と剣がぶつかり合う。
鍔迫り合いをさせる事はせず、弾かれるに従って距離を開く。

「風は集い鎚と成りて!!」
「光よ!!」

右手を掲げて、目覚めた力を声に乗せて放つ。
放たれた光は、不可視の風とぶつかり、無害な風圧にまで拡散させる。

「――っ!?」

慌ててその場から飛び退く。
直後に地面が爆発。――違う。相手の剣が地面を抉り取ったのだ。

「おおおおおおお!!!!!」
「――っ、チィッ!!」

迫り来る剣。此方の退避運動に合わせた追撃。こんな体勢で力ある打撃を喰らっては、耐えようなんて無い。

剣で地面を叩いて、無理やりに飛び退く軌道を変える。

「!?」

相手は追撃しきれない。そりゃそうだ。こんな動き、無茶にも程がある。本来なら、こんな無茶な動きはしないのが正しい。けど、そんな事は言ってられなかった。
着地と同時に膝を曲げ、即座に相手の側面へと突きを放つ。

「せあああっ!!」
「オオオオッ!!!」

然し、それと同時に相手側も此方の位置に向かって剣を振り放ってきた。
視界には捉えられていないはずだが、それでもこの剣の軌道なら俺に当たる。

不味い。そう思った所で。

「其処まで!!」

そんな声が、訓練所に響いたのだった。





「お疲れ様です、アキラ様」
「うん、有難うアリア」

アリアに渡された手ぬぐいで額の汗を拭きながらお礼を言う。
ウェストリーの王宮。その一角に用意された、騎士達の訓練所。そこでの訓練は、中々にハードな代物だった。

「矢張り勇者様は筋が良い。何か武術でも収めておいでで?」
「ええ、一応少しだけ」

さっきまで俺の訓練の相手をしてくれていた騎士……クリストファー……なんちゃら。駄目だ。思い出せない。まぁ、要するにクリスさんが、そんな風に尋ねてきて。

「ほぅ、どのような技を?」
「いえ、態々語るほどのものでもないんで」

言って、誤魔化す。なんだかこの御仁、機会があれば俺の事を探ろうとしてくるので、警戒している。大和も気をつけるよう言ってたし。

俺が扱う武術。……それはまぁ、言ってしまえば剣術だ。けれども、此処でそんな事はいえない。

「……そうですか。まぁ、もう暫く訓練を続ければ、この城でも筆頭の剣士になれますよ」
「あはは。ではそれを目指せるよう、ご指導お願いします」
「ええ、喜んで。勇者様の指導が出来るなどと、光栄の極みです」

言うクリスさん。なんだか皮肉はいってるなぁ。
俺の剣術とは、まぁ日本ならではの剣術だ。つまり、刀を武器とした剣術なのだ。
けれども、此方の世界で俺が使うのはもっぱら西洋刀。形が違えば扱いも変わるわけで。
俺としては刀の扱いに慣れすぎてしまっている所為で、どうしても剣に対する違和感がぬぐえずに居た。
そんな説明をするのも面倒だし、剣術を扱う割には……なんて言われるのも癪だし。

「アキラ様。そろそろ行きましょうか」
「え、ああ。うん。それじゃ騎士クリス。さようなら」
「ええ、さようなら勇者様」

言って、クリスさんに見送られて訓練所を後にする。
訓練所から少し行って、城の廊下に入った途端。がばっと腕に何かがしがみついて……ってまぁ、アリア以外に居ないんだけど。

「……アリア」
「だって、早くアキラ様にくっつきたかったんですもの……」

少し攻めるような口調の俺に、アリアは拗ねた様な、可愛らしい顔で此方を見上げてくる。

「でもね、キミはお姫様でしょ? こんな所でそんなのはどうかと思うよ?」
「……大丈夫よ。この辺り、この時間なら人は滅多に通らないから」

そんな情報要らないよ……。
なんて思いつつ、アリアの顔を眺める。と、その顔に何処か何時もと違った色が見えて。

「最近アキラ様、メイド達から色々アプローチ受けてるじゃないですか」
「……?」
「それで私、アキラ様が取られちゃうんじゃないかって……」

メイドさん……あぁ、キキちゃんのことかな?
この間ちょっと廊下に紅茶を零したところを、俺の光の練習ついでに浄化してみたときに縁のできた、可愛らしいメイドさんだ。
ついこの間も、言葉の勉強中に差し入れを持ってきてくれたりと、ありがたい存在なのだけれども。

「あー、いや、その……」
「……いいんです。アキラ様は私のことをなんとも思っていないのはわかっています。けれども私は、アキラ様をお慕いしているんです……」

なんていって、アリアは俺の腕を放してしまう。
……そんな言い方をされては、ねぇ。

「俺は、アリアの事、大事な子だと想ってるよ?」
「あ、アキラ様……」

なんといっても、アリアはこの国の王女様で、俺の身元引受人であり、俺に魔術を教えてくれるお師匠でありと、何かと俺を助けてくれる少女だ。
いわば家族のようなものではないだろうか。
言って、アリアの手を取ると、白くて小さい可愛らしい手が、ほんの少し赤らんで。

「アリアは、俺をよんだろ? 俺を召喚して、俺にこの世界を教えてくれた。右も左もわからない俺を、アリアは手をとって導いてくれたじゃないか」
「アキラ様……」
「アリアは如何でもいい子じゃない。少なくとも、俺にとっては大切な子だよ」

言って、アリアの手を握る。
と、見る見るアリアの顔が真っ赤に染まって言って。……って、あー、もしかして俺、またやらかしたか?

「アキラ様……」

真っ赤になったアリアは、何処か蠱惑的な瞳でこちらを見ていて。
……うぅ、ヤバイヤバイ!!

「ほ、ほらアリア。次は魔術の勉強だよね。アリアが指導してくれるんだろう?」
「……はい。それではお部屋へ参りましょうか」

言って、アリアは俺の手を握ったままずんずんと歩き出す。
……あー、ナンだろう。少し身の危険を感じるんだけど。

「……アリア?」
「ダイジョウブです。バンジ問題アリまセン」

何処が問題ないのか、非情に気になるのだけれども。
……まぁ、面倒だし、アリアに任せておけば良いかな。
なんて、気楽に考えているのだった。





大和がウェストリーから消えて、既に一週間が過ぎた。
最初はアリアが、国の諜報機関に足取りを辿らせる事ができる、とも言っていたのだけれど。
どうやらあいつ、念入りに下準備していたらしく、城を出た途端にぷっつりと足取りが途切れていたのだとか。
まぁ、あいつの事だ。何処かでよろしくやっているのだろうけど。

「それではアキラさま、何か御用がありましたらすぐにお呼び下さいね〜」
「うん、有難うリーアさん」
「なんでしたらシモのお世話も……キャッ♪」
「ブッ―――!!」

笑いながらスキップして立ち去っていくメイドさん。
好意を向けてくれるのは嬉しいのだけれども、ああして明け透けなのは少しいただけない。
もう少しつつしみを持って欲しいと思うのは贅沢だろうか。

「……はぁ」

学校に通う日々。あの頃は、問題沙汰が起きた場合、その大半を大和が引き受けて、俺はその数割程度を引き受ければ済んでいた。
けれども今現在。問題は全て俺で解決しなければいけない。

有難い有難いとは思っていたけれど、居なくなって尚更ありがたみが身にしみる。
……本当に。旅に出るのなら、俺も連れて行ってくれればよかったのに。

まぁ、取り敢えずは俺も、旅に出発する事になったのだけれども。

カノン王立武闘大会。
カノン、と呼ばれる、ウェストリーの隣国で行われる問答無用のバトル大会だそうだ。
剣、槍、弓、魔術、なんでもありの盛大なお祭りなのだとか。

レベルも上がり、良い力試しの場だという事で、クリスさんの勧めでその大会に俺も参加することとなったのだ。
……何となく城の雰囲気もきな臭くなってきているし、丁度良い。

……それに、だ。
なんとなく、大和もそっちに居るような気がする。
能力に目覚めてから得た、勇者の勘、みたいなものなのだけれども。
でも……。

「あいつの行く先って、大体トラブルが発生するからなぁ……」

あいつは俺の所為にしてるけど、あいつだって立派なトラブル招来体質。……いや、この場合、引き寄せられたトラブルが俺なのかな?
まぁ、どっちにしろ。
あいつが行く先には、何らかの波乱が待ち受けているのは間違いないのだ。

「………………」

会いたさ七割、居て欲しく無さ三割。
逢えばあいつは困った事があれば助けてくれるだろう。けれども、あいつの周りに居ると結構な確率で困った事が起こる。
複雑な気持ちで、窓から空の星を眺めるのだった。
表現力不足でなんだか今一。
そのうち改訂したいです。

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