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黒い剣の異世界譚 作者:青葉 夜
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027 - カノン到着!

「はい、そんじゃイーサン、と」

言って、冒険者ギルド“砂漠の狼”の面々の受注書にサインを押していく。
一応依頼達成だ。役に立たなかったとしても。依頼主が出張ってしまったとしても。
任務完了した以上、報酬も出さねばならない。

「えっと、それじゃコレが報酬。纏めてかバラでか、どっちが良い?」
「まとめてで頼む」
「それじゃ、コレを」

闇の中から銀貨を四枚取り出す。コレ四枚で暫くは暮らせると言う大金だ。
キャラバンの連中から半分出してもらう約束ではあったが、連中は有る意味商人らしく、「被害を被って持ち金が」とか「被害は其方の冒険者に原因があるのだし、金額をまけろ」とか言い出した。

まぁ、仕方ないかと思いつつ、残りの馬車と荷物全部灰にされるか銀貨二枚かを(ベリアの火球系上位魔術を見せながら)選ばせた。
連中は快く報酬を折半してくれた。うん、問題は無い。
そんな銀貨を手渡すと、差し出された相手側は少しだけなんともいえない表情を見せた。

「……確かに。しかし、てっきり報酬を渋るかと思っていたのだが……」
「んー? 渋って欲しい?」
「残念ながら、報酬を値引く趣味は無いね」
「さいですか」

アルケミストのミミルが、苦笑しながらそんな事を言う。
モノクルだが眼鏡キャラというだけあって、リーダー格らしい。錬金術師何だし、頭も良いんだろうな。

「然し。貴殿の使う力は凄まじかったな。あれほどの魔術、使えるのは何処かの宮廷魔術師くらいいではないの?」
「んー、俺はちょっとズルしてるから。それと貴殿なんて敬称つけないでね。俺一般人なんで」
「ほほぅ」
「あ、勿論詳細は秘密。聞いても答えないから、聞かないでね?」

釘をさすと、ミミルは少し残念そうに肩をすくめた。

「なら、深くは聞かない。でもそれじゃ、ギルドのお誘いのほうは如何?」
「それも勘弁。何分、目的ある旅なんで」
「そうか、残念。君がいれば大会も随分楽に成りそうなんだけれど」
「さて、如何だか」

言って、握手する。
何だかんだ言って、俺も色々と話し相手になってもらったのだ。
賢い相手と話をするというのはとても楽なのだ。

「それでは、また何処か出会える事を祈って」
「ああ。また星の廻りが在る事を祈って」

手を振って分かれる。
それを確認してか、他の三人と会話していたベリアが慌てて此方へと駆け寄ってきた。
背後に向かって手を振るベリア。なんだかんだで、仲良くなってたしなぁ。

「行くんですか?」
「ああ。俺の依頼もあと少しだしな」
「ヤマトさんの依頼ですか?」

言うと、ベリアはポカンとした表情で首をかしげた。
……おいおい。

「……もしかして、忘れてる?」
「何か受けてましたか? 私が覚えてる限り、もう冒険者ギルドの依頼は受けてなかったと思うんですけど……」
「……銀貨二十枚。ちゃんと支払ってもらうからな?」

言うと、何のことかわからないといった風に首をかしげるベリア。
が、唐突に何か思い出したように、あっと口を開いて。

「……そういえば、私もヤマトさんに依頼してたんでしたっけ」
「そもそもの目的もカノンだったけどな。ベリアの護衛は個人契約の依頼だな」

言いつつ。街の路地に少し入り込む。

「ランド。そこ頼むな」
「ガ!」

俺の言葉に頷いて見せるランド。
遅れて続いたベリアが少し不思議そうな顔をするが、それを無視して。
人目がない事を確認する。此処なら大丈夫だろう。

ズルッ、と闇が伸び、俺の全身を覆った。

「――っ!? ヤマトさん!?」
「ん? ああ、そうか。ちゃんと見せた事はなかったな」

言いつつ、身を覆わせた闇を解く。

「!? 鎧、今ので着たんですか!?」
「ああ。今の闇が俺の能力だな。ちゃんと見せた事無かったから、驚かせたかも。悪かった」

言いつつ、ぐるっと身体を動かして、鎧の調子を確かめる。
温泉掘った宿で洗ったし、匂いも無い。まさに十全だ。

「能力って……異世界から召喚された勇者に与えられる能力……ですか?」
「ああ。といっても、アレは勇者の才能ある人材を召喚するってシステムと、もう一つ対象に眠る能力を覚醒させる……いや、能力者を選定する……かな? まぁ、いろいろな機能からなる複合魔術だったんだし、能力を与えているわけではないと思うな。ま、事故で召喚されても能力は発現したわけだけど」
「……隠してたのはやっぱり」
「うん。コレは流石に勇者なんて呼べないでしょ」

言いつつ、小さく闇を伸ばしてみせる。
この世界でも、闇は悪とまでは言わずとも、光に比べれば親しみの無いものなのだろう。

「なんで鎧を?」
「この方が、相手に舐められずに済むだろ。……ほら、ベリアも」

言って、闇でベリアを包む。
ちょっと怖がったベリアの頭を撫でてやり、その闇が無害である事をアピールして。

「……うわ、ドレスになってます……」
「うん。洗濯して乾かしておいた。鉄板熱してアイロンも当てたし、問題無いと思うんだが」
「大丈夫ですよ。むしろ完璧です!」

それは良かった。アイロンなんて早々手配できるものでもないし、適当な鉄板と闇でアイロンの代用をして、水蒸気ぶっ掛けながら何とかアイロンがけをしたのだが。まぁ、巧く行ったなら良し。

「それじゃ、後は城までだな」
「……はい」

ランドに跨り、腕の中にベリアを座らせる。
なんだか元気がなさそうなので、頭を撫でながらランドに命じて。

「ガルルル!!」
「おう、頼む」

言う間に、ランドはゆっくりと加速して、あっという間に王城までたどり着いてしまった。
もうちょっと感傷を惜しむ時間があっても良いんではないだろうか。

「とまれ! 何者だっ!!」
「俺は冒険者のイーサン。旅の途中、賊に襲われたエネスクの姫君を保護した。此方の城での保護を依頼したい」

槍をガシッと構えた門兵に問われ、そんな言葉を言い放つ。
と、門番は腕の中に居るベリアを覗き込むようにして、その顔をサッと青くした。

「き、北の白髪姫……!? す、すぐに兵士を呼ぶので、少し待たれよ!!」

なんて言って、門兵は慌てて門扉からその中へと駆け込んで行って。

「……白髪姫って?」
「国の人って、銀髪っていっても殆ど灰色が限度なんです。誰が言ったのか知らないんですけど、その中で一番白っぽくて綺麗なのが私だなんて話が出回って、それでそんな名前が……」
「あー、成程。確かに綺麗だもんな、ベリア」

なんて言っている間に、門が開かれる。
その中からあふれ出てくる……兵士兵士兵士兵士兵士兵士!!!
ずらーっとあふれ出してくるのは、今さっきの兵士とは少し装いの違う兵士達。

「姫様、ご無事で!!」
「……マルさん!!」

その兵士の中の、特にゴツい大男。その大男の呼びかけに、ベリアがそんな反応を返した。
……って事は、何か。この連中はエネスク大帝国の兵士という事か。

「なんでマルさんが此処に?」
「姫様の到着が遅かったため、急遽偵察部隊を出したのです。が、途中で姫様の馬車の残骸を発見して……。姫様のご遺体を確認できず、もしかしたらと、現在各所で兵士達が姫様を探していたのです。……ご無事で、本当に良かった」

ありゃ? そんなの居たっけ?
……いや、そうか。俺が表通りを避ける道ばっかり選んでたから、か。
ベリアも一応変装させてたし……あーあーあー……。

「……心配掛けましたマルさん。私はこの通り。このヤ……イーサンさんに助けられて、無事に此処へとたどり着くことが出来ました」

俺をヨイショするベリア。って、そんな事言うと……
ああ、ほら。
城から出てきた兵士’sがいっせいに此方へ向き直り、そのまま膝を突いて此方に頭を下げてきた。

「この度は、我等が姫様をお守り頂き、真に感謝する。貴殿には相応の報酬が支払われる事になるだろう。しばし……」
「否。報酬は契約に従っていただく」
「は? 契約……?」

正直、オッサン共の礼なんて要らないし、第一コレはボランティアみたいなものだ。
言いながら、ランドの背中から飛び降り、次いでベリアを背から下ろす。
ベリアの頭をさり気無く撫でて、ちょんと背中を押してやる。
一度此方を振り返ったベリアは、しかしそのまま兵士達の下へとたどり着き。

「イーサンさん。報酬は、今日は用意できません。けど、明日には用意しますので……」
「承知した。明日昼頃、もう一度此処に来る」

言って、ランドの背へと飛び乗る。
一度だけ背後を振り返る。
少し寂しそうなベリアの顔が瞳に映って。

まぁ、女の子にこんな顔をさせるのは好きじゃないんだけれども。横で怖い顔をしている兵士連中やらもいるし。やっぱりお姫様と親しくされるのには警戒があるんだろう。
他の視線がある此処で正面から関わってしまうと、ちょっと面倒な事にもなるし。

「…………ランド」
「ガルルル!!」

そのまま、カノン王城を後にしたのだった。

更新速度低下。流石に連日更新は無理でした。
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