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黒い剣の異世界譚 作者:青葉 夜
25/63

025 - カノンまで大体あと五日。

「それじゃ、この四人さんが今回の依頼を受注してくれた方々、という事で宜しいですか?」
「ああ。俺達四人で間違いない。ほら、受注書」

頷き、受注書を差し出す四人をみて、こちらも頷きを返す。
受注書の確認もしたし、意思の確認もした。

「それでは、出発しましょうか」

言いつつ馬車に乗り込む。
馬車自体は中古で買い付けたオンボロだ。
かなり安く、乗車人数は五人。御者台含めて六人だ。
馬車を引く馬は、本来二頭は要る筈なのだが、ランド一匹でも行けるらしく―ランドが行けると頷いた―ならばランドに任せてしまおうという事になった。
流石ドラゴン。頼りになるね。

「それじゃ、折角だし自己紹介でもしようか」

御者台でのんびりと空を見ていると、背後からそんな話し声が聞こえてきて。
なんとも和やかな。

「俺、戦士のアッシュ。宜しくな!!」
「私精霊神官のキア。宜しくね〜」

なんともお気楽……ハイテンションな声が背後から響いてきた。
この戦士と神官の二人、元々パーティーを組んでいるらしく、長くコンビで活動しているんだとか。

「ほらヘイス、次お前の番」
「……ヘイスだ」

短く、まさに名前だけ名乗る鎧の騎士さん。
因みに、戦士と騎士の明確な違い、っていうのは無いらしい。
一応誰かに仕えていたりするのが騎士、という風に区別されているらしいが。

「あたしゃミミル。アルケミストさ」

言う、モノクルを掛けた妖艶な女性。
なんとも変な組み合わせの一団だった。

「あ、私はベリアです。で、こっちが……」
「イーサンです。よろしく」

背中に突っつく感触を感じて、自己紹介をする。
まぁ何というか。二人とも偽名だったり愛称なのはご愛嬌だ。

「俺等、“砂漠の狼”ってギルドの仲間でさ、カノンの大会に参加しに行く途中なわけ」
「この任務もカノン行きだし、都合が良かったんだよ〜」

一応挨拶は済ませた。
後の会話はベリアに任せて、再び馬車正面へと向き直る。
正直、馬車の運転はランドに任せておけば十分なのだが、正直俺は人と会話する事がそれ程得意ではない。というか、喋っているだけで疲れてくるほうだ。

「へぇ、じゃぁベリアちゃんは弓を使うのかい」
「はい。独学で、ちゃんと修練したわけではないんですけど、魔術と組み合わせた特殊弓術を少し」
「それは珍しい。私も少々の魔術を齧り、剣と組み合わせて戦うが、しかし弓に魔術を合わせたというのは滅多に聞かないな」
「へー、凄いんだね〜ベリアちゃん〜」

背後から聞こえる笑い声。
どうやら、ベリアは他の面々と仲良くなれたようだ。

「……ガル?」
「ん? ああ、いや。俺相手だとどうしても会話が少なくなっちゃうからな」
「ガルルルル」
「苦手なんだよ、会話」

悪口罵詈雑言の類なら瞬時に浮かぶのだが。
何気ない日常会話、と言うのは何故か苦手なのだ。……根が悪質なのだろうか。

「ガルルル〜……」
「ま、その分お前と会話しておくさ」

言いつつ肩をすくめる。
気使いするランドに苦笑しつつ、のんびりと空を眺めるのだった。





しかし、と思う。
この世界、想像以上に面倒くさい。
いや、俺達は身体能力の上昇やら、特殊能力の開花なんてサービス付きだし、他の……この世界のネイティブに比べれば大分ましなのだろう。

けれども、だ。

「風の精霊よ、我等に加護を!!」
「おおおおおっ!!」
「はあああああっ!!!!!」
「えー……爆薬、は此処じゃ不味いか。酸……も、駄目かな? んじゃ、閃光薬で」

突如、錬金術師のミミルが投げた薬品が中空で発光した。
その光をまともに目にした空の魔物が隊列を乱し、一気に高度を落として。
其処を、アッシュとヘイスが次々と倒していく。

この世界、中々に難易度……というか、魔物が強い。
ナメて掛かると確実に……それこそ十把一絡の魔物にやられることだってありえる。
力押しで勝てなくも無いが、正しい対処方法を作っておく必要がありそうなのだ。

その点、この四人は中々に強い。
前衛は攻撃と防御のスイッチをしっかりこなしているし、精霊魔術の前衛補助、錬金術による敵陣撹乱は見事なものだ。

「アッシュとヘイス、一旦下がりなさい!」

ミミルの指示で二人は一気に馬車へと引き下がる。
その行動には何の疑問を感じた様子も無く、本当に仲間を信頼しているのだろう。

「キア。空を歩むもの(ファラウェイ)を」

言って、小さな木の実の筒のようなものを掲げる。
そこに精霊神官のキアが、何らかの風の魔術を掛け、ソレを確認したミミルはその筒を思い切り投げつけた。


ドオオオオオオオン!!!!!

常識外の速度で投げ飛ばされたその筒は、はるか遠く、大地すれすれを飛行していた魔物の前面に着弾し、その場で大爆発を起こした。
逃げる二人を追って一列になっていた魔物の群れは、見事に爆発に突っ込み、一気にその大半を削り取られていた。

「わぉ、凄」

それでも生き残った数匹の魔物に、今度はアッシュとヘイスが転進。一気に切りかかる。
それを危機と感じたか、魔物は一気に翼をはためかせ、空へ逃げようとして……。

「精霊よ、風の刃を我等が敵へ!!」

ドシュッ、ドシュッ!! という音が響き、キアの翳した手から透明の刃が射出された。
よくよく見れば大気が歪んでいる、その程度にしか目視できない刃は、次々と中空を飛ぶ魔物たちを両断していった。

気付けば魔物は一掃されて。
なんともまぁ、見事な連携だこと。

「はっはっは!! 良い運動になったぜ!!」
「精霊さん、ありがと〜」
「…………………」
「さてと、因みにこの戦闘で報酬が少し上乗せされたりとかはしませんか?」

なんとも面白い連中で。
苦笑しながら報酬を少し足す事を約束しつつ、戦闘で遅れてしまった時間を取り戻すべく、馬車をさっさと発進さたのだった。

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