挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
黒い剣の異世界譚 作者:青葉 夜
11/63

011 - 西へ。

「じゃぁな。達者で」
「ありがとう御座いました!!」
「ふんっ!!」
「………………」

そんな挨拶に、三人は其々の反応を見せて。
ハシットとディスタの反応は予想通りだが、マルベラが地味に手を振ってくれたことには、内心驚いていたり。

そんな内心を隠し、ビシッっと挨拶を極めて、そのまま解散する。
報奨金は街に着いた時点で、馬車の中で配当されていた。

「さて」

とりあえず、城下町を抜ける事は出来た。
今現在の位置は、王城の西南西。ここから数日掛けて西に移動すれば、件のカノンへとたどり着く事ができるらしい。

「……また依頼でも探すか……いや」

言いつつ、街中を適当に見て回り、適当に携帯食料を買いあさっておく。
……マルベラの食べていた干し葡萄。見ていて結構ほしくなったのだ。
何か携帯食料に出来そうな品は無いだろうか、なんて思いながら、その街の市場を見て回って。

……ソレを見つけたのだ。

「いらっしゃい!! 何か買っていくかい!!」
「…………!?」

紙に包まれても分る、日に照らされてすける赤み。
漂い来る仄かな肉の香り。ソーセージ状の細長い形。
……サラミ。
やばい。滅茶苦茶喰いたい。好物なのだ。

「………………………」

巾着の中から銅貨を十数枚だし、それを差し出してサラミを指差す。
と、露天のおばちゃんも俺が何を求めているのか気付いたようで、「あいよっ!」と元気の良い声をあげ、サラミを紙袋へと詰め込んでいった。

「一本オマケしといたから、味わって食べなよ!!」
「…………」
「その代わり、また買っとくれよ!!」

おばちゃん最高。
小さく頭を下げ、そのサラミと財布を影の中へしまい、再び露天を物色しだす。
……うん。今晩宿で楽しもう。



干し葡萄をはじめとしたドライフルーツ。
日持ちの良いとされるパンを各種。スモークサーモンにハムやらベーコン。
スモークチーズもあるよ!!
…………。

「まぁ、こんなところか」

影の中に買い溜めた品物を確認し、呟く。
これだけあれば、いざというときでもしばらくは生きていけるだろう。
因みに、この影の中。直射日光も無ければ、湿度もクソも無い、一種の完全閉鎖空間。
保存食なら、腐る事などほぼありえないと言う。
今の俺は、一種の歩く蔵と化していた。

「……………」

さて。
最低限の医療用具も買ったし、後はギルドで適当に国外へ向かう任務が無いか調べるだけだ。
………なのだが。

もう、とりあえず今日は良いだろう、というような気になってしまう。
正直、初めての冒険でかなり疲れているのだ。
肉体的にではなく、精神的に。

「……はぁ」

やっぱり、自分なんて騙しきれるものじゃない。
なるだけ致命傷を避けるようにはしたが、それでも俺は人を斬った。

「……………………………」

ネガティブに傾きかける心を必死に鼓舞し、何とか平常を保ったまま歩く。
が、やっぱり駄目だ。どこかで一休みしたい。
そう思って、辺りを見回す。

「………む」

見回した先に、小さな広場が見えた。
屋台が並ぶような大きな広場ではなく、子供達が遊んでいる小さな広場だ。
その広場の一角。木陰のベンチに目をとめて、迷わずそこに腰を下ろして。

「………………はぁ」

一息つく。
最近……というか、ここ数日は物凄く忙しかった。
旅立ちの資金を集めたり、覚醒した能力を扱う訓練をしたり、魔術の訓練をしたり。
幸い、資金集めは順調に進み、魔術も能力を触媒とすることでなんとか習得する事ができた。
が、それこそ日中夜までぶっ通しで続けた訓練。
しかも、他人に気付かれないように隠れてやっていたのだから、物凄く疲れる。

そうして、城からの脱出。
そのままギルドで依頼を受け、魔物や盗賊の襲撃から馬車を護衛して。
……うん。疲れた。

鎧の隙間から、店で買った甘納豆を口に運びつつ。
昼下りの晴天の下、静かに休息してその日はすごすのだった。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ