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居合は抜く時も収める時も結構技術が必要です。
練習してても中々うまくできねぇ……
第47話
「さてと……」

 俺は右手にケースを持って久々にダアトの街中を歩く。
 目的地は教会の裏側にある貧困街……普通では通る事のない場所…………
 其処はダアトにとって影となる所だ。

「皆元気にしているかな……?」

 今日は何時も着ていた白衣ではない。
 黒を基本とした服装でだ。
 俺はこれから会う人達の事を考えながら歩を進め続ける……


――――――――――


「ハーミット先生……!!」
「わざわざこんな所まで来てくださり……どうもありがとうございます。」
「お~い、先生が来たぞぉ~!!」
「あ~押さないで押さないで……順番は守りましょうね?」
「あ、せんせ~だぁ~!!」
「せんせぇ~またあそんでぇ~!?」
「こらこら、少し唐突すぎやしないかチビッ子達よ……!?」

 俺はここダアトでの難民・貧困問題についてできるだけ支援を行っている。
 此処の人達は今日とこれからの食事にも気を使わなければならないほど貧しい……
 そんな人達が医者に診てもらえるくらいのお金の余裕なんてあるだろうか……
 一応援助金を貰っているが……そんな物雀の涙ほどでしかない。
 だから、できる限り無償で診察し治療してあげているのだ。
 俺も一応軍所属で給与は貰うに貰っている。
 研究費で幾分か削れる事はあるが……それでも余る事があるくらいにな……
 ちなみに、月給は95000G(約95万円)と前世より少し少ないが結構貰ってる。

「此処の所、脚気になった人は……?」
「はい、先生がおっしゃられた通りにパンや豆類を食べるようにしてから極限にまで減少しました。」
「脚気はそれらに含まれるビタミンB1の欠乏が一番の原因です。肉類を買うのは厳しいので安い食材の方でも十分に直したり予防する事は可能ですから焦らずに……」
「先生、家のお爺ちゃんが昨日から体がだるいと訴えかけているのですけど……」
「そうですね、後ほど診にいきますのでご本人にお伝えしてください。」

 貧困は恐ろしい……滅多に掛かる筈のない病気でさえ簡単に掛かってしまうほど体が弱る事が多い。
 そうなる前には……あれをやるか…………

「えー皆さん聞いてください、今後の為にもやってもらいたい事がありますので……」


――――――――――


「溜まっている泥は掻き出して、そこ……!!今、口は清潔な布で常に覆う事……!!」
「もう使う事のない古布、汚れた物……全員一か所に纏め上げました。」
「よし、細心の注意を払って火を付けて燃やしつくせ。ついでに今付けてる物もな……」
「はい……!!」

 予防対策……これが一番の効果的な物だ…………
 要らなくなった洋服類、排水溝の清掃により病原体を死滅させる。

「ひえぇぇ~!!ネズミ~~!?」
「一匹も逃がすなよ……!!そいつら自体も病気を運ぶ元だ……!!」
「うえぇ……」

 相変わらず思うが……酷いな…………
 援助金だけ渡したりして殆どは大した事をしてない気がするな……教団は…………
 今度上層部に報告書でも出してみようかな……
 一応向こうもダアトの見られ方を悪くさせたくないと考えるだろうし……
 やらないよりはマシだ。

「あの……先生、ちょっとよろしいでしょうか…………?」
「んっ……?どうかしましたか……?」

 考え事をしていると突如横から一組の男女が話し掛けて来た。
 二人を見るに……夫婦か…………?

「娘が4日前から熱を出して……今もまだ下がらなくてそればかりか体中が痛むと言いだしてるんです……診てもらえないでしょうか…………?」
「四日前から……?」

 インフルエンザの可能性もあるが……その病原体はまだ発見してないし掛かったという報告はない。
 だとすると……

「ちょっと危ないかもな……」
「えっ……?」
「いえ、なんでもありません……直ぐに向かいましょう。」

 先ずは診てからだ……それから判断しよう。
 
「お名前は……?」
「オリバーです、こちらは妻のパメラ……娘の名前はアニスといいます。」
「ではオリバーさん、パメラさん……ちょっと別の薬とかを取りに戻りに行きたいので暫く待っていてくれませんか?」
「薬……」
「あなた……どうしましょう…………」
「…………?」

 何か問題があるのか……?

「その、先生……薬代は……必ず支払いますから……ですから……今は少し……」
「私達、今はあまり手持ちが少なくて……今薬のお金を払えるくらいあるかどうか…………」
「あ~そんな事ですか……」

 ちょっと嫌な事を聞いちまったなぁ……

「薬代は結構です……実質俺が今まで行ってきた治療は他ではやられて無い方法なので何というか……正規とは言い難い物ですから。」
「そうなのですか……!?そうは言っても……此処の人達は皆貴方のお陰で元気になれたといえるんですよ……!!」
「効果はちゃんとありますからね……てな訳で……薬代は無理に支払わなくても大丈夫ですよ。」
「ありがとう……ございます…………」

 パメラは泣きながら感謝していた。
 オリバーはそれを慰めつつハーミットに礼をする。
 
「さて、さっそく用意するか……」

 そう言ってハーミットは目的のために走り抜けていくのであった。


――――――――――


「こちらです。」
「……あの…………」
「……!?……す、すみません……!!直ぐに片付けます……!!」

 その後、ハーミットはタトリン達の家へ訪問したのだが……その家を見て口が塞がらなかった。
 そこには……

パサッ……

「……借金の……取り立てによる物ですか…………」
「お恥ずかしいかぎりです……数ヶ月前に一人の男が此処に訪れた時、その人はここの住人の名簿作成に協力してくださいと言いました。」
「それを記入してから……後日、いろんな所からの請求の紙が届くようになりまして……」
「払える訳もない金額にまで……」

 掴んだ紙には罵倒や暴言が書き記されている……
 それもいろんな場所からだ……
 二人はそれらを家から引き剥がして行く。

「詐欺ですね……ふざけやがって…………」
「心配しないでください……!!きっとどうにかなりますよ……!!」
「そうです……私達は常に誠実に生きてきてますからローレライ様のお導きが私達を助けてくださいます。」
「それに……お金に固執しない方が正しく生きる事だと思います。」

 この人達は……人を疑う事をしようとしてない。
 いわば顔のない聖人と同じだ……
 それを利用してゴミ共はうまく騙し続ける……
 まさに悪循環だ……

「ささ、どうぞ中へ……娘はベッドで横になっていますので。」
「どうかアニスちゃんをお願いします……」
「わかりました……お邪魔させてもらいます。」

 今はこの人達の為になにか案を出してる場合じゃない。
 患者が優先だ……

 ハーミットはタトリン達の家に入ると先ず思った事は質素だという事だ。
 テーブルや本棚……目立つ物がそれだけしか見当たらないのだ……
 その部屋を途中として次には階段を使ってこの家の二階へ向かう。
 そして、其処の部屋のドアを開けると……苦しそうにベッドで寝ている少女がいた…………

「アニスちゃん、もう大丈夫よ……教団のお偉いお医者様が診に来てくれたわ」
「ママ……パパ…………」
「アニス……心配しなくてもいいんだよ」
「それでは、診察に入らせてもらいます。」

 ハーミットはベッドの傍にあったイスを使わせてもらい、アニスをベッドから起こして診察を始めようとする。
 しかし……

ググッ……

 アニスは弱々しい力でハーミットを押し返そうとする。

「だめ……そんな事……お医者さん……別に……いいです。」
「んっ……どうしてかな?」
「だって……お金……ないもん…………」
「…………」

 おいおい、この子まだ5歳くらいだぞ……
 お金の心配をするようになってるなんて……それでどれだけ辛い思いをしているんだよ。
 この家族……このままじゃ結構危ないだろ…………

「安心して、そんな心配はしなくても大丈夫だ。」
「…………」
「コラコラ、子供がそういう心配する必要なんてないぞ……?」
「……ホント…………」
「本当だ、嘘はつかない。」
「…………」

コクッ……

 解ってくれたか……さて、始めるか…………



―――5分後……―――



「先生、アニスは……」
「この子は……回帰熱にかかっています。」
「かいきねつ……?」
「虱・ダニによって媒介される病原体による感染症の一種です。最大の特徴としては熱が上がったり下がったりと繰り返す物であり、他の病気を併発する可能性が多く……このまま治療を行わずにいたら……ちょっと危なかったですね……」
「アニスちゃんは……アニスちゃんは大丈夫なんですか……!?」
「この子のはまだ初期であったため、命の危険は問題ありませんでした。治療法としては抗生物質という薬を投与するか……それを足して身の回りの物を清潔に保ち、栄養をしっかりと取る事が大事です。今回は抗生物質を投与しときましたからこれからはベッドのシーツや服を日光でよく乾かしたり付着した虱やダニを叩き落しておくことが大事です。」
「はい、ありがとうございました……!!」

 オリバーはハーミットの手を掴んで感謝の言葉を発する。
 
「いたぁ~~いぃ……」
「あははは、注射よく我慢できたね……偉いぞアニスちゃん」
「アニスちゃん、先生にお礼をいってあげてね。」

 先ほどまでの緊迫感は何処に行ったのか思うくらい家の中は賑やかになり始めていた。
 
 これでもう終わりだな……後は…………
 ハーミットはそう考える……が…………

ドンドンドンドンッ……!!

「オリバーさあぁぁん……いらっしゃいますかぁ~?いらっしゃらないんですかあぁ~?」

 何者かがこの家の前に来てる事が全員に知れた。

「……ひ…………」

ガバッ……!!

「アニスちゃん……?」

 ハーミットはアニスの突然の行動に疑問を持つ。
 何かから怯えるようにして布団を潜るようにして深く被っているのだ。

「あなた……」
「あぁ、大丈夫だ……待ってなさい…………」
「オリバーさん、まさか、奴ですか……?」
「…………」
「……ここは俺に任せてくれませんか……?」
「そんな、迷惑はかけれません……!?」
「大丈夫、大丈夫……こういうのは正しいやり方で対応すればいいですから……♪」
「は……?」
「じゃ、皆さんはここで待っていてくださいね。」

 そういって、ハーミットは部屋から出ていく。
 後ろからオリバーとパメラが何か言っていたが気にせずに進んで行く。
 階段を降り、今だ激しくドアを叩く音の方へと向かう。

「いるんでしょ~?いるならいるで直ぐ出て来てくださいよ~じゃないと……」

バンッ……!!!

「ぶっ……!!!」
「しつこいんだよ……ノックは3回とママに教わらなかったのか……?」

 叩いている途中でも構わずハーミットはドアを助走を付けて思いっきり開く。
 そのため、男は顔を思いっきりドアにぶつけて後ろへよろけて退く。

「何しやがるんだテメェは……!!」
「そっちこそ何してるんだ……病人がいるんだから静かに願いたいものだがなぁ~?」
「医者かお前……?じゃあタトリンを呼んで来い……俺はそっちに用がある。」
「それは何でだ……?」
「これ見ろよこれ……」

 男は一枚の紙を取り出す。
 それは良く見ると証文のようだった……そこにオリバーの名がハッキリと記されている。

「タトリンの借りた100000G……期限が今日までとなってるから今すぐ払ってもらいたいのよ。」
「それは間違いじゃないのか……?本人はお金を貢献した事はあるが借りた事は一切ないと言ってるぞ?」
「んなもんそっちの嘘に決まっているだろうが……俺はちゃんと本人が名前を書く所をこの目で見てるんだ。」
「内容を隠して何でもないようにして騙して書かせたんだろうが……」
「出鱈目言うんじゃねぇぞ……!!こっちにはちゃんと証拠が……!?」
「これの事か……?」

パシッ……!!

「て……てめぇ、返せ……!!」
「あ~、これ偽装も良い所な出来具合だな……もっとうまく作れよ…………」
「このやろう……!!」

 男はハーミットの顔を殴りつけようと拳を振りかぶった……

「何処へ行っても……こんな屑は居るもんだなぁ…………」

ビキキッ……!!

「いぎゃあぁぁぁぁぁ―――――!!!!!」

 ハーミットは男の手首の急所を右手で押さえつける。
 余りの痛みに男は悲鳴を上げ始める。

「正直者は損をする……それは俺だって完全に否定はできないがな……」

ギリッ……!!

「嘘吐きは罰を受ける……それもありって訳だ……」

ギュルルッ……!!!

 手を勢いよく振り下げて男の体を回転させて地面に叩きつける。
 痛みに悶絶してる男をハーミットは冷たい目で見下ろす。

「ぐ……が…………」
「来い……お前にはやってもらう事があるからな…………」

 そういってハーミットは襟元を掴んで引き摺り始める。
 その先は路地裏へと続く……

「な……なにを……しやがる…………」
「なぁに、洗いざらい喋ってもらうだけだよ。手口、真実……その他全てをな…………」
「ひ……ひぃ…………!!!」
「安心しろ……殺すとかそんな物騒な真似はしない。ただ、今後はこんな真似はしないようにと解らせてやるだけさ…………」
「や……やめ……やめてくれえぇぇ…………!!!」
「お前達はそんな人達の思いを踏みにじって人を苦しめて来たんだ……報いが返ってきただけと思いな。」

 そして、そのまま二人は陰に潜むかのように路地裏に入って行った……
 そこで何があったのかは誰も知らない……


20分後……


「……先生、大丈夫かしら…………」
「信じるんだ……パメラ…………」

 二人はハーミットの無事を祈り続ける。
 今まで来てたあの男は粗暴で乱暴な態度で二人を脅してくる人だ。
 もしも、酷い目にあわされていたらと心配で心配でしょうがなかった。

キィッ……

「すみません、今戻りました。」

 だが、二人の心配は気鬱として終わったようだ。

「先生、大丈夫でしたか……!!」
「何処か怪我は……!?」 
「心配ないですよ……内密な話し合いでケリをつけましたから“暫く”はこんな事はないでしょう。」
「いいんですか……!?」
「えぇ、向こうも話の解る人でしたから。」
「先生……何から何まで…………本当にすみません。」
「ですがね、二人も気を付けてくださいよ……?これからはこういう事は他の周りの人によく相談してから物事を決めてください。しつこく迫って来ても追い返すか誰かを呼んで証人になってもらうか……親の貴方達がしっかりしないで誰がアニスちゃんを支えてあげるんですか……」
「「…………」」
「私が出来るのは忠告や助言ぐらいです。後は貴方達の問題です……」
「頑張ります……」
「ですが……その常に他人を思う気持ちだけは忘れないでください。思いを向ける方向を間違えない事を俺は信じています。」
「はい……」
「では、次の診察もありますので……失礼させていただきます。」

 こうして、タトリン家の訪問はこれにて終了した。
 彼らはこの出会いにより何を考え直すのだろうか……

 
 それは、彼ら自身が決める物…………
  
  
 
この世界の取り立てってどんなのだろうか……?
現実チックに仕上げて見ました。
タトリン夫妻の心情だけは自分にとってはなんか読みにくいですね……
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