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オラクル騎士団戦です
第37話
「……物騒な事が起きそうだな…………」

 それは三日後の昼の時であった……
 森暮らしに慣れ、気配に敏感になったハイルが感じた重い空気。
 それは徐々に此方に近づきある。

「ライガ達の様子からして……おそらく人間だな、それも大所帯って所か」

 軽く100人くらいはいるそうだ……
 ライガ達が神経質になるのも頷けるしな。

「しかし、何でまた態々ライガ達の寝床に侵入しようとしてるんだ?こいつ等には人里を襲うような真似は全くないというのに。」

 そうだ、人間を喰うのは運悪く獲物探しの時に見つかった奴か己らの領域(テリトリー)に入ってきた奴らだけにしている。
 ライガ達にも彼ら自身が創り上げた固い掟が存在しているからな。

「もし、ライガの討伐だとしたら……狙いはここだな…………」

 この巣にいる敵の大将ともいえるライガクイーンだ。
 クイーンが殺されればライガ達の総統力が一気に下がり、混乱が生じる。
 再び持ち直すには成体になったライガの雌達が戦ってまたクイーンを出すにはかなりの時間が必要となる。
 
「アリエッタ……ママと一緒に巣に戻っているんだ。ちょっと勝手な事をする奴らを懲らしめてくるからね?」
「…………(コクッ)」

 魔物に情を沸かせるのは本当はいけないのかもしれない。
 人間達にとって魔物は脅威の存在に他ならない。
 だけど良く考えてみたらそれは人間のエゴだと俺は思う。
 何種類かは除くが彼らは欲望のままに相手を傷つけはしないし、必要以上に獲物を獲る為の殺戮も起こしはしない。
 彼らは自然のままに生きてきているだけだ……それに比べて人間はどうだ?自分達が住む為だけに樹を伐採したり、邪魔な魔物を駆逐したりなどとやりたい放題だ。
 
 だから、今回だけは俺はこっちの味方をするぜ……
 少し頭を冷やしてもらおうか……




Side:とある兵士

「よし、全員止まれ!!これよりこの任務の最終確認を行う」

 私は神託の(オラクル)騎士団第三師団に所属する者だ。
 今回此処に来たのはマルクトより依頼されたライガ達の駆除、そして……ライガ達に育てられたとされる少女の保護である。
 なんでも、目撃者が言うに“ライガの群れの中に桃色の髪を持つ女の子がライガに跨っていた”とされている。
 
 ライガは凶暴な魔物だ……人間に懐くなど普通ありえない。
 しかし、もし懐いてるとしてもその少女をライガと一緒にさせるなどとそのままにしてはいけない。
 我々が保護し、ちゃんと人間らしい生活に戻してやらなければならないと師団長よりの言葉だ。
 
「今回の任務は集団体制で行う。マルクトの報告より小団体では危険だと証言されている為だ」

 陣営を作らずにそのまま一直線に進むようだな……
 前後左右からの襲撃の対応はこれでばっちりだろう。

「では、前進!!」

 そして、私達は進み始める。
 巣はここテオルの森の奥深くに存在するそうだ。
 魔物の襲撃に備えていけば辿りつける筈だ……

メキャメキャメキャッ……!!!!!

「「うおぉぉ…!?」」

 何が起きた……!!前方の方から悲鳴が聞こえたぞ!?

「わ……罠です!!何故か落とし穴が掘られていました!!」
「な……何!?」

 落とし穴……なぜそんな物が…………
 まさか、例の少女が……

「むっ……何か足に引っかけたような…………」

ゴシャアッ……!!!

「「ぶおぉぉあああ……!!!」」

 なんと!!次には森の左の方から蔓に巻き付けらるた大木が飛んで来たではないか……!!
 お……恐ろしい…………何て恐ろしい森なんだ

「う……くっ……作戦変更だ!!どうやら足元に幾重もの罠が仕掛けられている!!一定間隔をとっての陣営を形成してすす…………」


「グオオォォォォ―――――!!!!!」


「で……出たあぁぁ!!ラララライガだあぁぁぁ―――――!!!!!」
「た……助けてくれえぇぇぇ―――――!!!」

 何と言う事だ……一瞬にして師団が混乱に陥ってしまったではないか……!?
 何故だ、何を一体間違ったというんだ……!!





Side:ハイル

「あいつらには一応殺さないようにと伝えてあるから一応心配いらんだろう」

 しかし、面白いほどに罠に掛かってくれたなぁ……
 この巣を中心に円状にして獣道の所々に罠を掛けといた。
 これを突破するには相当骨が折れるぜぇぇ~?
 
 この罠は俺が狩りの時にいかに効率よく捉える事が出来るかと試行錯誤の末に完成した物だ。
 材料は殆どが木、石、土でできたエコな物である。
 危険を感じた時点でお前らは俺の罠にはまったんだよ……

「だけど、あれじゃあ完全に防ぐ事はできないだろう……」

 何十人かが罠を通り抜ける気配を感じ取る……運のいい奴らめ…………
 
「頼むぜ……兄弟」
「「ガウッ……!!!」」

 今に解らせてやろう……害意を以ってこの森に入った事が間違いであった事を…………
 
 左手にはランチャー銃、右手に狙撃譜銃、懐に麻酔銃(残り16発)、腰にナイフ一本。
 今の俺の最高装備を以ってお前らを迎えてやろう……
 安心しろ……殺しは俺の趣味じゃない……生かすぐらいはしてやる。

バシュッ……!!

「行くぜ!!」

ギュイイィィィ―――――!!!!!




Side:副師団長

 何て言う事だ……百人余りにもいた団員が一気に20人近くまで減らされてしまった。
 この森は何かおかしい……魔物よりも何か別の存在が居る…………
 検討が付くのが例の少女だが……もしもそうなら天才だぞ!?
 たかが4、5歳の少女が作れるようなレベルではない物ばかりだった。
 
 面白い……意地でも邪魔をするというのなら僕も気を抜く訳にはいかない…………
 何としてでもその少女を僕の“計画”のために引き摺りこみたいものだ……
 魔物を使役する能力……手駒としてこれ程素晴らしい物はない。
 軍人として育て上げれば半無限の魔物の兵隊が完成する。

ガサガサガサッ……!!!

「…………ッ!!!」

 師団長は手を上げて≪止まれ≫の合図を送る。
 それに連なって付いてきてた兵士達も立ち止まる。
 
「(魔物か……いや、音からしてそんなに大きくは無さそうだ…………)」
「クレド師団長、ご指示を!」
「私が確認してこよう……待機だ」
「ハッ……」

 クレドと呼ばれた男は盾を構えて防御に備えたまま音の方へと近づいていく。
 いざという時に用心は越した事はない……
 そして、草木を掻き分けたその先には……

ガササッ……!!!

「グルッ……♪」
「ぬっ……?」

 目の前にはライガの子供がこちらを見ていた。
 けどそれだけで変だとは余り思わないが……そのライガの前の足元にあるのが原因だった……
 石が山盛りに盛られてる場所があるのだ……それも彼の腰元まで…………
 視線をもう一度ライガに向けるとある事に気付いた。

「ガウッ……!!」

 口に蔓を巻き付けた石を咥えているのだ。
 それが確認できるとライガの方は向こう側へと走っていった……
 可笑しなことに……その後には蔓が長く引っ張られているのが解る。
 
ヒュンッ……!!!

 限界にまで引っ張られた蔓が石山から外れて勢いよくライガが去った方へと飛んで行った……

ビキビキビキッ……!!!

 そして、その次には…………

「どうしましたかクレド…………」

 その次の言葉が紡がれるのは終わらせた。
 爆発音のような物が起こったと思ったその次には大量の石が流星群のように彼らの方へと飛んできたからだ。
 
 此処でハイル、限界にしならせた樹の幹と根を使っての広範囲型パチンコを設置させてたのだ。
 クレドは大量の石の多くの一部が自分に当たり、地面に倒れて悶絶していた。
 その後ろでは鎧に当たったり顔にあたったり足に当たったりと多くの兵士達が犠牲になっていた。

「ぐっ…………!?」

 これほどまでに巧妙な罠まで作れるというのか!?
 素晴らしい……素晴らしいぞ!!
 
 副師団長は少しでも自分に当たる石を防ぐために自身の長剣で防ぎながら歓喜していた。
 その笑みには屈辱の文字が見当たらない……

「気を許すな!!動けぬ者はそのまま治癒係の到着を待て!!動ける者は……」
「うっ……」
「イッ……!?」
「ガッ……!?」

ドサドサッ……!!!

「…………ッ!?」

 何が起こった……!?兵達がひとりでに気絶した……?
 ……何か刺さっている。

 その一人に近づいてみると首元に針が付いた何かが刺さっていた……

ジャキッ……

「其処か……!!」
 
 音に反応して咄嗟に初級譜術を放つ。
 しかし、狙いが定まっていなかった為僅かにずれてしまった。

 其処に“彼”はいた……
 怪しげな木の仮面をかぶり、手には見たこともない武器を携えた男が……

「お前だな!!私の団員をこんな目に合わせたのは!?」
「…………」
「沈黙か……それもいいだろう、それ相応の対応をさせてもらおう!!」

 副師団長は手に持つ長剣を横薙ぎの構えにして男に近づいて行った。
 それに反応し、男は右手に持つ武器を彼に向ける。

「(あれだな……!?先ほどの物の出所は……!?)」
「ハアァァッ……!!!」

パシュッ……!!

ブォンッ……!!

 彼は剣の腹を使って風を巻き上げ、男は何かを発射する。
 しかし、今回は彼に分があった……
 巻き上げた風は肉眼では捉え難い何かの進行方向を強引に曲げ、彼の後ろの彼方へ飛んで行った。
 
「…………ッ!?」
「セァッ……!!」

 驚愕している所に彼は剣を袈裟切りに振り下ろす。
 だが、男も反応して後ろへとバックステップして何とか紙一重で避ける。
 右肩から僅かな血を流しながら再び男は彼と距離を取り……そして互いに対峙し合う。

「(こいつ……侮れない…………)」
「(やばいな……いったん巣に戻って態勢を立て直すか…………)」

 それぞれの思考の中で判断が決まる。
 
バシュッ……!!!

 男の方は左から伸びた紐のような物を伸ばし……

ギュイイィィィィ―――――!!!!!

 森の奥底へと消えて行った。

「待て!!」

 一先ず追いかけようとしたが、生身の足では到底追いつけそうにないと判断し立ち止まった。
 
「くっ…………!!」

 迂闊だった……!!第三者の可能性も考慮するべきだった!!
 糞……【あの人】の言うとおりだ!!
 “他人まかせにせずに常に自分自身の判断も大事にしろ”
 そのとおりだ……僕は与えられた情報だけを頼りに全てを決めた…………
 その結果がこうなってしまったんだ……!!
 
「今の内に戦える者だけは態勢を整えるようにしろ!!それからあの男を追う事にする!!」
「それでは、後方の方から応援を呼びましょう……罠から生還できた者達もいるそうですから」
「まかせたぞ…………」

 二度目は通用しないぞ……僕は負けない…………
 今は亡き【あの人】の為にも此処で立ち止まる訳にはいかない…………
 父を……母を……故郷を……そして貴方を亡き者にさせた預言(スコア)に溺れたこの世界に復讐する為にも……!!
 






「あの若造……見覚えがある気がするんだが…………」



 運命は……廻り始めるというのか………… 
この頃の師団は第一師団長 ラルゴ 団員6000人 第二師団長 カンタビレ 団員6000人 第三師団長 クレド 団員6000人という設定です。
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