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雪のお姫様

作者:花凜文学
女子校に通っていたので、女子校ホラーを書いてみました。女の子は精神攻撃が得意だよね。
 雪が降り始めた。
 静まり返った車両の中、南柚子みなみゆずはスマホを固く握りしめていた。
『次の駅で降りて』
 メールには新たな命令と、棺桶のような透明の箱に詰めこまれた友人の画像。これで九人目。気づくと指示された駅に着いていた。やけに綺麗に掃除されているホームだ。ゴミも汚れも一切見あたらない。急に不安になり、柚子は出口へ飛び出した。
   *
 あそこの家、やばいんだよ。アイスに毒を入れて売っているんだって。
 学年中で話題にされているその生徒は、柚子と近いクラスの子だった。女子中学生にとって噂とは、自分たちの枠にはまらないものを異端だと分かっていて、わざと楽しむ道楽だ。怖い場所に自ら入って怖いと言いながら出て行く、肝試しみたいな感覚に似ている。
「雪原さん」
 白く曇っている窓ガラスをじっと見つめながら、廊下に立っている雪原藍ゆきはらあいに柚子は話しかけた。
 藍が振り向いた。ガラス玉のように不安定に揺れる瞳が、柚子の目に入った。
「新発売も美味しかったよ。雪原さん家のアイスは外れがないね」
 藍は一瞬きょとんとしたあと、少し照れ臭そうに「ありがとう」と笑った。
   *
『大通りをまっすぐに突っ切って』
 柚子は言われたとおりに大通りを抜け、住宅街に入った。右を行き、左に逸れて、まっすぐ歩かされてはまた曲がり角を行かされる。こちらの体力を奪う作戦だったのか、やっと目的地にたどり着いたときには完全に消耗していた。
『最後はあなた』
 メールはここで終わった。
 もう雪原さんと会わないで。あの人の気持ち悪さが柚子ちゃんに伝染しちゃう。友人たちの声が一人一人思い浮かぶ。柚子は文章を打った。
『どうしてこんな酷いことをするの』
 返事はすぐに来た。
『愛とは、奪うことだから。私のものになれ』
 雪が吹きつけた。
 柚子は、陰鬱な空気が濃厚に立ちこめている坂の上の家を、キッと見上げた。握りこんだ拳に雪片が当たる。冷たい。痛い。でもそれだけじゃ生きていけないでしょう。
「――愛とは、捧げることよ」 
 鉄の門扉に手をかけ、柚子は勢いよく開け放った。
   *
 その日、関東は記録的な大雪だったという。

   END




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