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精霊幻想記(Web版) 作者:北山結莉

第一章 異世界にて目覚める

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第4話 尋問

 現在、リオは王城の牢屋の中にいる。
 クリスティーナとフローラは兵士達に発見されると迅速に保護された。
 すると、どういうわけか、あれよあれよという間に、リオだけは拘束され牢屋にぶち込まれることになった。
 そこでリオはクリスティーナとフローラがこの国の姫だということを知った。

 それから既に三日が経っていた。
 最低限の睡眠と食事、そしてそれ以外の時間は全て取調べに充てられる。
 ここに来てからというもの、リオの一日はこの牢屋で完結していた。
 体感的な睡眠時間からして、一日のうち五分の三以上は取調べを行っているのではないか。

「知っている情報を吐け」

 三日目にして何度目の質問だろうか。
 聞き飽きた言葉に嫌悪感すら抱く。

「だから言った通りですって。たまたま路地裏を通りかかったところで、あの子達……クリスティーナ様とフローラ様が誘拐されているのを目撃した。そして、俺はそれを助けた。それだけです」

 あの子達と言いかけたところで取調官の顔付きが険しくなった。
 それを察して敬称を付けて呼ぶと、うんざりとした様子でリオは同じ内容の供述を告げた。

「嘘を吐くな。貴様はスパイなのではないか?」

 同じ内容の質問の連鎖が続く。

「違います」

 と、リオは短く否定した。

「なぁ、一応、貴様がクリスティーナ様とフローラ様を助けたということが事実であることは認めているんだ。信じがたいことだがな」

 妙に芝居がかった口調で、取調官の男が語る。

「だからこうして穏便に取調べしてやっている。だが、これ以上手を煩わせるようなら手段を改める必要もある」

 牢獄という環境、長時間にわたる取調べ、しかも取調官の態度は威圧的ときている。
 これで穏便と言ってのける取調官に、リオはある種の敬意すら覚えた。

「へぇ? 具体的にはどんな手段を使うんですか?」

 やや反抗的な目つきでリオが微笑む。
 すると取調官が微笑み返しながらリオの胸ぐらをつかんだ。
 そのまま勢いをつけてリオの顔を机へと叩きつける。

「がっ」

 再度、リオの頭を持ち上げて、またすぐに顔を机へと叩きつけると、口の中を噛んで、リオが出血する。
 せめて肉体を強化してダメージを減らしたいところだが、魔力を操作しようとしても上手くいかない。
 何やら両手に付けられた手かせが身体の魔力のコントロールを阻害しているのだ。

「不自然じゃないか? お前のような子供がゴロツキ紛いとはいえ武装した大人を四人も相手にして勝利する。しかも何の訓練も受けていない孤児が、だ。不意を打ったとしてもおかしい」

 解せない、と言わんばかりに、取調官の男は首を横に振った。

「まるで平民が作った不出来な三文芝居のようだ。私の言っていることがわかるか?」

 親の仇をにらみつけるかのような視線をリオに向けると、髪を掴んだままリオの顔を引き上げる、
 すると、そのままリオの腹部に拳を叩きこんだ。

「かはっ」

 リオの口から小さく呻き声が出たのを見て、男は満足そうに微笑む。
 きっとサディスティックな性格をしているのだろう。
 腹の痛みにリオは顔を歪めた。

「国王陛下はお前に最大限の配慮をしてくださっている。なにせ王族であるクリスティーナ様とフローラ様の両王女殿下を助けたのだからな。当然だ」

 だったらこの仕打ちは何だというのだろうか。
 リオの中で怒りは溜まっていく一方だ。

「だが、貴様は危険でもある。理由は今言った通りだが、怪しい。怪しすぎるのだよ、貴様は。情報を聞き出すためなら多少の実力行使もやむを得ないというわけだ。わかるな?」

 頭を掴んで、至近距離からリオの顔を覗き込む。
 二人の視線が重なったが、リオは小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。

「そんなこと言われても知らないものは知らない」

 リオは何の迷いもなく即答した。
 事実なのだからそれ以外に答えようもない。

「ふん。犯罪者風情に国王陛下の御心を理解しろと言う方が無理か。まぁいい。クズの貴様にもわかりやすいように簡潔に聞いてやる」

 そう言って、挑発するように、取調官の男はリオの顔をぺたりと撫でる。

「要するにな。此度の件の黒幕を教えろと言っているのだよ。いるんだろう? どこぞの貴族とかな」

 的外れな推理に、リオは何度目とも知れぬ溜息を吐いた。

「だから知らないと言っているだろ。実行犯に聞いて、がっ」

 リオが喋っている最中に、取調官がリオの顔面を殴打した。

「実行犯どもはみんな死んだよ。殺された。生き残っているのはお前だけだ」

 その言葉を聞いて、リオが怪訝な顔をした。
 一瞬、自分が攻撃したダメージが響いたのかと思った。
 だが、怪我を回復させる魔法があるのならば、尋問するためにそれを使用しているはずだと考え直す。

「殺されたってなんで?」
「知るか。毒殺だよ。食事に毒が入っていたそうだ。良かったな、お前の食事に毒が入っていなくて」

 疑問を口にすると、取調官の男からそのような事実が語られた。

「っ」

 その言葉に、ヒヤリ、とリオは全身が冷たくなった気がした。
 実行犯を容易に毒殺できるほどに、今回の誘拐事件の黒幕は王城の内部に入り込んでいるのだ。
 だが、どうして自分は殺されていないのか。
 それは、リオが生きていても黒幕たちにとっては痛くもかゆくもないからだ。
 すぐにそう思い至った。
 なぜならリオと黒幕は一切関与していない。
 リオが取り調べられても、黒幕たちにとってはどうでもいいことなのだろう。
 だから、あえて毒殺に及ぶリスクを避けている。
 ならば自分の命はひとまず安心と言える。
 ただし、黒幕との関係においては、という限定がつく。

 下手をすると国側に殺されかねないのだ。
 仮にも王族を救出した人物に対して、容疑があるからといって、このような扱いをする国である。
 このままいけば拷問もどんどんエスカレートするおそれがあるだろう。
 そうすれば最終的には殺されてもおかしくない。

(クソっ。このままだと本当に殺される……)

 不安とともにリオのイライラが増していく。
 こんなことなら本当にクリスティーナとフローラを助けなければよかった。
 そうすれば今頃こんな拷問は受けていないはずなのだ。
 感情に流されて行動した結果がこれである。
 あの時は散々葛藤したが、結局は利己的な人間が得をするのだと、思ってしまった。

「ふん、どうだ。怖くなったか? 情報を吐けば死ぬ恐れもないぞ?」

 得意げな表情で的外れなことを言う取調官に、そんなわけないだろう、とリオは鼻で笑った。
 その様子が鼻についたようで再び殴打される。

「誰の指示だ? 貴様とあのゴロツキ達に直接の関係がないにしても黒幕を介して間接的に関係があったというのが私の上司の見解だ」

 リオはいい加減うんざりしている。
 まるでそうでないと不都合でもあるかのような物言いである。
 もしかしたら宮廷内の権力闘争でも絡んでいるのではないかと、リオは考えた。

 そうであるとすれば色々と説明がつく。
 輸送役の男達が簡単に毒殺されたこと、リオは毒殺されていないこと、自白を取らせるために強硬にリオの取調べを行っていること。
 与えられた情報の中で現状を冷静に分析していく。

 おそらく今回の誘拐事件で得をする人間と損をする人間がいるのだろう。
 まず、得をする人間が今回の誘拐事件を仕組んで、証拠隠滅に実行犯達を殺した。
 そして、損をする人間が、窮地きゅうちに陥り、情報をリオから吐き出させようとしている。

 仮に国王が黒幕だというのならその国王は自分の娘を手駒にする冷酷な人物ということになるため、絶対にないとは言いきれないが、その可能性は低い。
 それゆえ、得をする人間はおそらく国王以外の有力貴族だろう。

 また、仮にも王族を助けた人物に対してこのような仕打ちをする動機が国王にあるとは考えにくいから、国王が損をする人物だという可能性も低い。
 だから、おそらくその損をする人間も国王以外の有力貴族である。

 となると、有力貴族同士の争いにリオは巻き込まれているということになる。

(冗談じゃない)

 リオは狂気めいた笑みを内心で浮かべた。

 その損をする有力貴族は、リオに対して取り調べを強行できるくらいに権力を持っていて、強硬にリオのことを取り調べている。
 だとすると、その損をする人間がリオのことを白だと思わない限り、リオは解放されないことになってしまう。
 その疑いを解消することはリオには難しい。
 ここまで疑心暗鬼になって強硬に取り調べをしている以上、下手をすると嘘でもいいから自白を取らせようとしかねないはずだ。

(その損をする有力貴族が今回の件で影響力を削がれているのなら、俺が助かるシナリオに傾きやすいはずだ)

 もはやそこにかけるしかなかった。

「貴様に指示を送った人物はどのような男だった? 貴様は本当はどこぞの下級貴族の子弟だったりするのではないか? 戦闘訓練はそこで受けた、違うか?」

 飽きもせずに取調官はリオに訊問し続ける。
 手に持った棒でペタペタと頬を挑発するように叩かれた。

「……ぺっ」

 リオは取調官にむかって血の混ざった唾を吐いた。
 少しは今感じている鬱憤を晴らしたかったのだ。
 この男に逆らった程度で自分の運命が変わることはないだろう。
 命令のない限りこの男はリオを殺すわけにはいかないはずだ。

「……貴様っ!」

 激高した男がリオを怒鳴りつけようとしたその時、牢獄の扉が開いた。
 扉から現れた人物を見て、男が慌てて姿勢を正す。

「こ、これは近衛騎士副団長閣下!」
「よい。調子はどうだ?」

 現れた男の名前はアルフレッド=エマール。
 エマール伯爵家の次男で、王族と宮廷の守護を任務とする近衛騎士団の副団長である。
 アルフレッドは、部屋に入るなり手を振って男にそう言うと、リオを一瞥した。

「はっ。多少の実力行使も行いましたが、やはり一向に口を割りません。態度は反抗的です。子供とは思えないほどに強じんな精神力を持ち合わせているものと考えます」

 その言葉を聞いてアルフレッドは自らの手を軽く口元にあてて考えるそぶりを見せる。

「それで、その……近衛騎士団長閣下は?」

 何かを気にしているような口調で取調官の男が尋ねた。

「団長は今回の件で忙しいそうだ。代わりに私がやって来た」

 その言葉に、少しだけ呆れの色がアルフレッドの顔に浮かんだように見えた。
 男に事情を説明すると、アルフレッドがリオをじっと見つめる。

「ふむ。貴様が姫様達を救った孤児か」
「…………」

 アルフレッドの厳かな声が牢屋に響き渡る。
 歳は三十代とまだ若いが、放たれるプレッシャーは常人には耐えることが出来そうにない程の威圧感を持っている。
 だが、リオはアルフレッドからの質問を無視した。

「無礼者が!」

 叫んで、アルフレッドの隣に控えていた別の近衛騎士が、リオを殴りつけた。
 身体をずらして可能な限り衝撃を受け流すと、リオは冷たい視線で騎士を見つめ返す。

「っ……」

 視線の合った騎士はリオの視線に押されて思わず半歩後退した。

「よい、浮浪者の小僧に言っても仕方があるまい」

 アルフレッドは品定めをするようにリオを見つめており、リオも真っ直ぐとアルフレッドを見つめ返す。

「なるほど……な」

 数秒ほど見つめ合って、何かを悟ったかのように、アルフレッドが徐に呟いた。

「ふむ、その小僧を外の修練場へ連れ出せ」
「承知しました! 言われたとおりだ。動け!」

 命令を受けた取調官がリオに着けられた首輪から伸びる鎖を力強く引っ張ると、別の近衛騎士に鎖を引き渡した。
 リオは特に抵抗するわけでもなく、引っ張られるがままに男の後ろをついて行く。

 牢屋は地下室にあるが、修練場は地上の外にある。
 ベルトラム王国の王城の外観は、剛健な石壁に包まれた狭い城ではなく、白い石材を基調とした芸術性の高い宮殿である。
 しかし、外敵からの侵入に耐えられるように、広大な敷地を囲う堅牢な城壁も建設されており、実利的な部分もある。
 城内には豪華な貴重品が随所に散りばめられ、現在リオが歩いている外に面した幅の広い廊下には等間隔に円柱が立ち並び、床には朱色のカーペットが敷き詰められていた。

 移動の最中には宮廷の警備兵や使用人達にジロジロと見られることになった。
 案内の騎士はサッサと移動していくのでじっくりと鑑賞する暇もない。

(まるで猿の見世物だな。いや、もっとひどいか)

 リオを見る目つきは同情と侮蔑の織り交ざったそれだ。
 街を歩いていて稀にいる富裕層の住民が見せる表情と同じだった。
 目が合うと、使用人はサッと視線を逸らした。

「着いたぞ」

 されるがままリオは修練場へと連れてこられた。
 周囲には王国に仕える貴族やその騎士達が野次馬のように集まり、一種の見世物のようになっている。
 そこで模擬剣を渡されると、リオは修練場の中央にて一人の近衛騎士と対峙することになった。
 訳も分からないまま戦わされることになったが、疑問を抱いても仕方がない。
 今は目の前の勝負に集中することにした。

 幸い魔力の動きを阻害していた手かせが外された。
 最悪、これなら身体能力を強化して強行突破で逃げることができる。
 だが、逃げるのは勝負をしてみてからでも遅くはない。
 穏便に済むのならそれが一番なのだから。

 模擬剣を構え、金属製の軽鎧と盾を身に纏った近衛騎士は、見下すような視線をリオにぶつけてきた。
 両者の距離はおよそ十メートル。
 近衛騎士はかかって来いと言わんばかりにその場を動くことはない。
 対するリオも無言のまま近衛騎士を見つめている。

 剣を持ったまま特に構えることもしないリオだが、目端の利く一部の実力者だけはどこかリオがただの子供ではないと感じていた。
 だが、対峙している近衛騎士はリオにやる気がないと思ったようだ。
 リオの様子に舌打ちをすると自分から仕掛けることを決めた。

「ハァァッ!」

 それなりの速度で間合いを詰めると、リオの胴体を薙ぐように全力の一撃を放つ。
 持っているのは訓練用の模擬剣だ。
 だが、籠められている力からして、当たれば痛いというレベルでは済まないだろう。
 明確な敵意を感じたリオは近衛騎士の剣を避けることを決めた。
 半歩身体を横にズラすことでアッサリと攻撃を避ける。
 すると、近衛騎士に顔に驚愕の色が浮かんだ。
 そして、それを見ていた周囲の者達は大きく目を見開いた。

 最低限の魔力で筋肉と肉体強度を強化したリオは、その隙を見逃さないように、瞬時に近衛騎士の喉元に模擬剣を突きつける。
 修練場が静まり返った。

「ま、待ってくれ! 今のは油断していただけだ! 次は本気でやる!」

 自らの負けを悟った近衛騎士が慌てたように異議を申し立てた。
 その様子がおかしかったのか、静寂が止み、修練場にいた者達が失笑しだす。

「……、く、は、ははは! まさかあんな子供に負けて言い訳をするとは。近衛騎士の質も落ちたものですな。これでは此度の失態もやむを得ないと言える」

 と、周囲の者にも聞こえるようなわざとらしい大きな声で、修練場の一角で模擬戦を観戦していた貴族の一人が言った。

「え、ええ! ユグノー公爵の仰せの通りです。あのような言い訳を誇り高い近衛騎士団の者が述べるとは言語道断ですな」

 それに賛同するようにその男の周囲にいる貴族達も囃し立てる。
 離れた位置にいる貴族のグループが、苦虫を噛み潰したような表情で、それを聞いていた。
 リオは無表情でその光景を眺めている。

「馬鹿者が! 頭を冷やせ! 油断していたのだろうが負けは負けだ。名誉ある近衛騎士なら素直に負けを受け入れろ」

 アルフレッドがリオと対峙していた近衛騎士に喝を入れる。
 流石に副団長の言葉を聞いて冷静になったのか、近衛騎士は悔しそうにしつつも頭を下げた。

 アルフレッドがリオの方へ視線を移す。
 何やら考えているような表情でリオのことを見ているが、すぐに口を開いた。

「ふん、見事だ。少年。これで君がクリスティーナ様とフローラ様を助け出すだけの実力があることが証明された」
「そのことに何か意味があるんですか?」

 少し高圧的なアルフレッドの言葉に、臆した様子もなくリオが尋ねた。

「ああ、国王陛下から直々に感謝の御言葉を頂戴することができる。この上ない栄誉だろう。君に対する沙汰もその際に御下しになられる。部屋も用意される。牢屋から出ることができるぞ」

 完全に一方的で上から押し付けてくるような喋り方だった。
 国王が絶対の存在で、誰もが畏怖する対象であることをかけらも疑っていない。
 そんな感じだ。
 牢屋から出られるのはともかく、国王の言葉はいらなかった。

「……それは光栄です」

 大してありがたさの籠っていないリオの返事に、アルフレッドが顔をわずかに顰める。
 そのまま見下したような視線でリオを見つめると、口を開いた。

「ふん、とりあえず今日は用意した部屋に戻るといい。取調べで受けた傷の手当てをする魔道士を用意させよう」
「ありがとうございます」

 そもそも怪我を負わせたのが同じ組織に属する人間であることに不満を覚えたが、一応は感謝の意を伝えた。

 こうしてリオは牢屋からようやく出ることができた。
 怪我の治療を受け、沐浴をするとそのまま部屋へと案内される。
 そこにいたのはリオよりも何歳か年上の少女であった。
 まだ十代前半といったところであろう。
 しかし少女の美しさは名のある芸術家が生涯を賭しても生み出すことができないような輝きを誇っていた。
 一言で評するならば完成された美しさである。
 少女は入室してきたリオに深々とお辞儀をすると絶妙な間をとって口を開いた。

「はじめまして。私はアリア=ガヴァネスと申します。王城に女官見習いとして勤めておりますが、この度はリオ様のお世話役の任を仰せ付けられました。どうぞよろしくお願い致します」

 と、感情が一切垣間見えない能面で、少女は言った。
 淀みのない綺麗な声であった。

「これはどうも、私のような者にご丁寧に。リオと申します」

 恭しく一礼すると、リオは少女の美しさを大して気にした様子もなく、丁寧な挨拶を返した。
 相手が丁寧な対応を心がけるのならば、こちらも丁寧な態度をもって接するのがリオのスタンスである。
 その逆も然りであるが。
 この国のマナーに則った礼の仕方ではなかったが、なかなか堂に入ったリオの対応に、極僅かだがアリアの目に驚きの色が浮かんでいた。
 相応の観察力がなければわからないものであるが、リオはそれに気づいた。
 どうやら無表情であっても無感情ではないようだ。

「王城にいる間は私がリオ様のお側に仕えさせていただきます。御用命の際はなんなりと命じください」

 しかしアリアもなかなかのもので、リオに対して抱いた好奇心をそれ以上見せることはなかった。

「ではとりあえず一つだけ質問を。国王陛下からのお言葉を頂戴した後はすぐに王城から出ることはできるのでしょうか?」
「申し訳ありません。その点につきましては私の方で存じておりません。国王陛下との謁見は明日となっております。その際にリオ様の処遇について言い渡されるかと」

 つまり明日以降もこのような実質的軟禁状態が続く可能性があるということである。
 予想通りの返答にリオは失意を感じた。
 だが、牢屋の中に入れられていた状態よりは悪くない。

「なるほど。ありがとうございました」
「いえ、それが私の役目でございますから。他に御質問がないようでしたら御食事をお持ちいたしますがどうでしょうか?」
「それは素晴らしい。是非ともよろしくお願いします」

 数日ほど碌な物を食べていなかったリオは年相応の笑顔を浮かべて返答をした。

(どうせすることもないんだ。慰謝料代わりに豪勢な食事を食べられるだけ食べてやろう)

 心の中では強かなことを考えつつ、リオは運ばれてくるだろう宮廷料理に思いを馳せた。
+注意+
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