第11話 回想終了
「ふーん、タマの過去と正体ねぇ」
家に戻った嵩治、陽雪の二人は暢都、結都に連と会った話をした。
話し終えた後の暢都の第一声だ。
厄介そうって顔に出してるよ暢都君。
「こっちに連れて来たって事は、タマは元々違う所に住んでいたって事だよね」
結都の言葉に嵩治が頷く。
はい、大樹に居ました。
「何があったんだろーな」
呟いた嵩治はタマを見る。
大人しいのは、二人が帰る一時間程前からお昼寝中だから。
寝てたんだ…。
「しかも条件が焼酎って…連れてきた奴は酒好きなんだな」
言って、暢都はごろりと横になる。
「何か、安い人だね」
焼酎持って来いじゃねぇ、結都君呆れ気味。
「連れて来てくれたのは感謝してるけど、今やってる事は許せないんだよねぇ」
陽雪君、やっぱり怒ってるよ。
「ま、焼酎買ったから教えてくれるとは思うけどさ」
リビングの入口の隅に置かれた焼酎を見て、嵩治が言う。
「じゃないと焼酎渡さないよ」
当分、陽雪君の怒りは収まらないかな。
この言葉に、三人は互いに顔を見合わせるに留めたのである。
ひらり、ひらりと桜の木から花びらが、舞い降りていた。
その木にポツリとたたずむタマと、別れを惜しむように振り返り、遠ざかって行く少年。
「また会おうね」
少年はそう言って別れて行った。それを最後にタマはその少年と二度と会うことは無かった。
「約束したのに…」
寂しさのあまりタマは、自分が住んでいる世界から逃れたいと思った。だが、自分ではどうにもならない。泣きながらタマはこの世界、大樹で最も名の知れた妖に頼むことにした。
妖霊山の主と呼ばれる黄鬼。一度も会ったことは無いが、何もしないよりはましだと思った。それだけ、ここにはいたくない。そしてタマは妖霊山に向かい、連に会った。
あれから随分経つ筈なのに、何時も見る夢。生野家に居候してもそれは必ず見てしまう。
行かないで、タマはそう言いたかった。しかし、それは出来なかった。タマは妖で、少年は人だから…。
約束しても時は無情に過ぎて…。
「タマちゃん、そろそろ起きてよ。出かけるから」
夢の途中で、タマは陽雪に起こされた。ぼーっとした表情をしている。
ちょっと寝ぼけ気味?
起き上がってタマは陽雪を見る。にっこりと陽雪は笑うとタマの頭を撫でた。
だから、何でこの兄弟はタマをペット扱いするかな…。
「タマちゃん、何があったとか僕らは何も知らないけど、知ってもタマちゃんはここに居ていいからね」
この言葉を聞いて、タマは涙が溢れてしまった。
言ってくれる人なんていなかった。こちらでも元々住んでいた世界でも。嬉しくて笑いながら泣いていた。
しばらく泣いた後、四人兄弟+タマは指定された桜の木へ行ったのである。
桜の木の上で、ゆったりとくつろいでいた連は、四人+一妖が来たのを見るとにやっと笑った。
「やっと来たな」
焼酎がもうすぐ手に入るから嬉しそうだね。
「来ましたよ」
未だ不機嫌と顔に大きく書いたまま、陽雪が焼酎を前に差し出した。
「待っていた」
「で、教えて頂けるんですよね。教えないなんて言ったら、これ飲めなくしますから」
陽雪君、連さん相手に脅してる…。
「分かっている」
ひらりと地上へ降りると、すっと腕を上げ、タマを指した。
「これはな、大樹の妖だ。櫻の妖で櫻華と言う」
タマちゃんが喋れない事を良い事にバラしてるでしょ。
「妖だって言うのは知ってます。最初に会った時に気付きましたから」
陽雪の言葉に連は、くすりと笑う。
「で、これをこちらへ連れて来たのは私だ。今から三百年ほど前だな」
…三百年ですか…。
「何故こちらに来たのかは、本人に聞け。もう術は解いてある」
あれ?いつの間に?
連の言葉に四人兄弟はタマを見る。
タマはおどおどしながら連を見た。
「話す、話さないはお前次第だ。私が口を出す事ではない」
さすがにそこまで言う気は無いみたい。
「タマちゃん、話してくれる?」
「でも…」
結都の言葉にタマはおずおずと呟く。
「陽雪が言ったよね。何を知っても居て良いんだよって」
結都が言うと、タマは決心したように別れた少年の事、こちらへ来た理由を話し出した。
話し終えると、陽雪は無言でタマの頭を撫でた。
だから、タマちゃんはペットじゃないでしょーに。
「タマちゃん、僕らはいつまで生きれるか、皆分からないよ。けど、死ぬまでは一緒に居ようね」
陽雪の言葉にタマは涙を滲ませながら頷いていた。
「で、もう一つ聞きたいんだけどさ。あんた何?」
暢都君、直球過ぎません?
「大樹の妖だ。妖霊山の主、黄鬼、連。そうそう、条件も解除するって約束だったな。随分前に解除しているから、いつでも術は使えるぞ」
条件って術を使えないようにすることだったのね。
「うん」
嬉しそうにタマが頷く。
「あのさ、あんた結局何がしたかった訳?」
そうそう、嵩治君達は連さんの本当の目的を知らなかったね。
「退屈しのぎ」
きっぱりと言わないで下さい。皆、呆れた顔してるでしょ。
「じゃ、これは貰っていくぞ」
陽雪の手から焼酎を奪い取ると、何の迷いもなく姿を消した。
「そうか、そうか。そんな事もあったな」
って、思い出したんだね。
楠の木から見える校舎の窓の一つに正人が歩いている姿が見えた。
連さんを探してたんだっけそう言えば。
「さて、そろそろ行くか」
すっと立つと歩こうとした。
「また、中途半端に逃げるの?」
陽雪が言うと、連はきょとんとした顔をして振り返る。
「中途半端とかどうでも良い。それより正人に見つかる方が面倒なんだ」
面倒起こしてるのは貴女の方ですよ。
「体育館の近くの日陰に、暢都と結都が居ると思うから会ってきなよ」
言っても無駄だと感じたらしい。陽雪は弟達にも会うように言っておく。
「そうか。じゃ、行ってみよう」
「本城先生に見つかるなよ」
嵩治の言葉に連は軽く笑うと、何処に体育館があるかも聞かずに立ち去って行った。
場所くらい聞いて行きなよ…。 |