第1話 始めはおとなしく?
日本がある世界とは似ている様で違う世界、大樹。
人間と妖が共存している世界。
人間に種族があるように妖にも種族がある。
その種族の一つ、黄鬼。
黄鬼は、この大樹で四千年以上生きていると言われており、柳という国の妖霊山に住処がある。
それ故、人々は黄鬼の事をこう呼ぶ。妖霊山の主と…。
他の種族と違い、黄鬼は滅多に姿を見せない。その為、噂ではおぞましい形相を隠す為に白い面を付けており、大きな体をしていると言われ、人を食らうと恐れられている…って言うと、ものすごぉ〜く妖っぽいんですけど、実際こんな感じの妖。
住処にしている妖霊山の洞窟の入口から奥に入っていくと、いくつか部屋の様にぽっかりと空間が現れる。その空間の一つをここの主が、寝室に使っている。中に入ると小さな明かりが一つと寝床。その寝床に体を投げ出して、ぼんやりと天井を眺めている女性が一人。一五〇センチくらいの身長で長い金髪、一八歳くらいの外見をしている。
彼女が人々の噂に言う妖、黄鬼。名を連。その脇には白い面が無造作に放り置かれ、その横には大樹生まれで、妖とは別の種類で霊獣、小闘竜と言う名の種族。種族の名の通り、猫くらいの大きさで西洋竜の様な姿。鳥の羽を持ち、全身をふかふかとした手触りの良い毛で被われている、陽影が丸くなっている。
彼女と噂が全く違うのは、たんに尾ひれが付いただけの話。当然、人も食べませんから。但し、やっぱり妖なので、人にはない力を保有しています。
例えば、日本がお気に入りでたまに遊びに行くとか、白王っていう長い刀を持っているとか、明らかに飛べそうにない距離を跳んでいるとか。人じゃないから出来るのだけどね。で、その力使って暇をつぶしているとか…。
まぁ、それを人前で使うと皆引いてしまうので、使わない様に気を使っているみたいですけど。本当に気、使ってるのかは…どうだろう。
「ハァ、死にそう…」
ポツリと呟いてますけど、連さんの寿命は一応ありませんから。まぁ、言うのは自由だけど…。
「こう毎日暇だと、体が腐れるじゃないか…」
腐れません。っていうか運動したら?
「何か面白い事ないかなぁ…」
連さん、貴女の面白いの基準が分かりませんけど…。
「ひーまー!!!」
だからって叫ばないでください。
「陽影何かないのか?」
陽影に聞いても無理だって…。
陽影は眠たそうに瞼を開けたが、すぐに閉じてしまった。
「お前、自分の主が暇を持て余しているのに無視するのか?」
毎度だから慣れてるんでしょ。
「何かないのか?」
余程、暇を持て余しているらしい彼女は、暫く寝床の上でゴロゴロと体の向きを変えていたが、突然ピタリと止まった。
何、考えてんの?
「久しぶりに、バカ息子の顔でも見に行くか」
…息子?しかもバカ付けますか?
彼女、二人の息子がいます。
実の息子と、日本で火事のあった家で死にかけてたのを拾った息子。本人曰く、誘拐ではなくあくまで拾ったらしい。
二人共、随分前に連さんのもとを離れ、日本で暮らしているので、彼女は本日も暇人…もとい、暇妖。
と、言うことで本日は実の息子の所へ行こうと思い立ち、寝床から起き上がると面を手に持つ。陽影は体を起こすと、とんっと寝床を蹴り連の肩に飛び乗る。
陽影が肩に乗ると同時に連は、住処から姿を消したのである。
何する気だろーね、この妖は…。 |