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第十九部第一章 悠久の時は過ぎその三
「八条長官か」
「中央警察にしても金内相がいたからな。あれだけ短期間であそこまでなれた」
「二人がいたからこそ、か」
 それが大きかったというのだ。彼等は両輪と考えられていた。
「連合にとって僥倖と言うべきかな」
「いや、多分それは違うぞ」
「違うか?」
「ああ。正確に言うと連合の集権派だ」
 ピクトはこう訂正させた。
「連中にとってあの二人がいたことは非常に大きい」
「ふん」
「そのおかげで中央警察も中央軍も僅かの間であそこまでなれたからな」
「あの二人がいればこそ、か」
「逆にいなければどうなっていたかわからないぞ」
 逆説的にこうも言われた。
「治安も今よりずっと悪かったし、あの戦争もあそこまで勝てなかったかもな」
「特に戦争はな」
 ジェダは言った。
「下手にすれば国が潰れていた」
「連合がか」
「あまりにも下手をすればだが。その可能性は皆無ではなかっただろうな」
「重いな、それは」
「それが戦争だ。そう言う俺にしろ実感はないんだが」
 一千年もの平和は彼等に戦争を忘れさせるのには充分であった。戦争を知らないというのは確かに幸せなことである。だがそれで政治を見誤ることも多いのもまた事実である。戦争を知ることも重要なのである。
「戦争というものはな。どうしたものなのか」
「わからないか、やはり」
「ああ。あの長官もそれは同じだっただろうがな」
「しかし彼は最初は軍人だったんだろう?」
「それでもだ」
 ジェダは言う。
「戦争の経験はない。それで知っている筈もないだろう」
「確かに」
「何度も言うが俺達は戦争を知らない」
 エウロパはサハラに攻め込み戦ってきた。それに対して連合軍は海賊やテロリストの相手だけであった。これもまた軍の重要な仕事であるのだがそれでも戦争とは違うのだ。
「それで戦うのには。やはり色々と問題があるな」
「よく勝てたものだな。数はあるにしろ」
「やはりシステム化かな」
 ジェダはここで言った。
「システム化」
「ああ。連合軍の特色としてそれがある」
「戦場でもか」
「そうさ。特に補給はそうか」
 ジェダはその中でも補給に注目していた。
「徹底した後方支持体制と安定したシステムだ。連合軍にとって非常に大きかっただろうな」
「ニーベルングとアルテミスを拠点にしていたな」
「ああ」
「そこからか。戦うのにはまず補給か」
「システムの方は常に万全の補給が受けられるようにしてな。進撃速度を犠牲にしてもそれを行っていたようだな」
 連合軍の進撃速度は遅い。これは各国の軍人、軍事評論家の間でも有名になっている。
「慎重と言うべきかな」
「それを慎重と言うのならそうだろう」
「只単に数で勝ったわけじゃないか」
「その数を支えるものが必要だからな」
 戦争の場合それが補給なのである。
「まずそれがなければ。腹が減ってはとは昔から言われてきた」
「ふん」
「ただ、連合軍は補給だけをシステム化していたわけじゃない」
 そこが言われた。
「というと?」
「戦場においてもな。戦いをシステム化していた」
「戦い方もか?」
「そうだ。攻撃方法はかなりパターン化していた」
 これは少し軍事をわかっていれば誰にもわかることであった。連合軍はまず巨大戦艦の巨砲の攻撃を浴びせた後で砲艦及びミサイル艦の斉射を浴びせ、そこから戦艦や重巡が攻撃し、次に軽巡と駆逐艦が魚雷を撃ち込んだ後で空母が護衛艦、イージス艦に護られながら接近して艦載機を発進させて決定的なダメージを与える。情況によっていささか変化はあってもこれがおおよその流れであった。
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