第十八部第五章 入城その十四
連合内でこうした動きがあることは遠いエウロパにいる八条にも伝わっていた。彼は自室でノートパソコンを通じてモニターで
シャリアピンと話をしていた。
「で、結局彼等はこれに関わろうとしていたのですか?」
「どうやら違うようです」
シャリアピンはパソコンの画面を使っているモニター越しにこう答えた。どれだけ離れていてもモニター等で通信は可能となっているのである。
「しかし十二人の長老達がイスラエル政府高官達と会っているというのは」
「それは間違いない情報の様です」
「左様ですか」
「ただ、その目的は別のものにあったようです」
「別のもの、ですか」
八条はその言葉に顔を向けた。
「はい、それが何かまではまだよくわかりませんが」
「重要なことであるのは確実でしょうが」
「はい」
「バランサーとして動くか、それとも、ですね」
そこが問題であった。バランサーならば問題はない。しかしその他の動きがあれば。問題はそこであった。
「中央政府の決定にも関わることであることも考えられます」
「でしょうね。今回の交渉に関してではないですね」
「それはないようです」
シャリアピンはそれに応えて言った。
「彼等はこの戦争にも交渉にも他の国々と同じく賛成でしたから」
「やはり」
「これは私の予想ですがおそらくは連合内部の事柄に関してだと思われます」
「内政ですか」
「こうなるとかなり限られてきますが」
内政に限ると話が狭まるのであった。それだけ。
「ええ」
「まだ調査の段階です。まだ確かな判断は出来ません」
「わかりました。ではこれまで通り留守をお願いしますね」
「はい」
八条の言葉に応える。八条はまた述べた。
「桂平公司の方が来られたら宜しくお願いします」
「彼等の製品を採用されるのですか?」
「あのグループの電子やコンピューターは非常にいい製品ですので」
八条は迷うことなくこう答えた。
「お願いしますね」
「わかりました。それでは」
「はい」
シャリアピンはモニターから消えた。八条はモニターそのものを消してパソコンに戻った。そしてメールを出したりしながら仕事に取り掛かっていた。
暫くノートパソコンの前にいたがそれも終わった。八条はパソコンを閉じ大きく背伸びをした。そしてそのまま背広を脱ぎ、トランクスの上からパジャマを着るとベッドの中に入った。
数時間眠ると扉をノックする音が聞こえてきた。それに気付き声をかける。
「どなたですか?」
「メサです」
「艦長ですか」
「はい。お邪魔して宜しいでしょうか」
「少し待って下さい。今起きたばかりですので」
「はい」
メサはそれに頷きどうやら部屋の前で待っているようである。八条はその間に着替え、簡単に身なりを整えた。それから扉を開けメサを出迎えた。
「お待たせしました」
「お早うございます」
「はい、お早うございます」
八条は敬礼に応えて挨拶を返した。それから彼を部屋に入れ向かい合って座った。それから話を聞いた。
「朝早くから申し訳ありませんが」
「いよいよオリンポスなのですね」
「はい」
メサはその赤い顔で頷いた。
「明日到着です」
「明日ですか」
「オリンポスの時間にして正午、降り立つことになると思います」
「正午にですか」
時間はもう決まっていた。
「それをお伝えしようと思いまして。こちらにお邪魔させて頂きました」
「そうだったのですか」
「既に各艦で大統領、そして外相にも伝わっていると思いますが」
「私にも今」
「その前にオリンポス周辺を先遣隊が抑えて」
安全の為だ。用心に越したことはない。
「どれだけの規模ですか?」
「三百個艦隊が。既にオリンポス周辺を抑えております」
「左様ですか」
「はい。これでオリンポスでの安全を確保致しました」
「すいませんね。そういったところにまで」
「いえ、これが我々の職務ですから」
メサは謹厳な顔と声で答えた。
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