第十八部第三章 旅路その十七
「何十万光年もの距離はそれだけで障害だ」
「はい」
「そのうえそこに何があるのかもはっきりしない」
「恒星がないのははっきりしていますがね」
「エウロパは以前からあの辺りに調査団を送っているそうですが」
いずれ進出する為だ。今のままでは閉塞していくのが彼等にもわかっているのだ。
「まだ大したものは見つかってはいないのだろうな」
「それならばこちらにも話が伝わっているでしょうし」
「そのうえ犠牲者も多いと聞く」
「はい」
「どうしていくのか。我々にはわからないな」
「惑星開拓の技術も我等の方が上ですしね」
八条は述べた。その技術の中には小型ながら人口の恒星を作り出したりブラックホールを消したりするものまであるのだ。こうした技術を持っているのは連合だけである。
「その我々でもあそこへを踏破することは不可能です」
「少なくとも一気には無理だな」
「そうです」
「しかし実際に行くとなれば彼等はあそこしかないな」
「留まっても結果が見えておりますし」
「それを考えると我々は非常に恵まれている」
キロモトは感慨を込めて述べた。
「その何十万光年もの距離に無限の恒星と惑星があるのだからな」
「はい」
「これが連合を支えてきた」
「そしてこれからも」
「時々考えることがあるのだ」
そしてまた述べた。
「何でしょうか」
「我々とエウロパの立場が逆だったならどうなっていたのか、とな」
「そうですね」
八条がその言葉に答えた。
「おそらくは。我々もああしてサハラに攻め込んだでしょう」
「やはりそうか」
「人口にも発展にも悩まされていた筈です。少なくとも今の我々ではなかったでしょう」
「我々は幸運だったのだろうか」
「そうした意味では幸運です」
彼は言った。
「何の気兼ねもなく発展することが可能だったのですから」
「そうなるか」
「進出の先に他の知的生命体がいる可能性もありますが」
「何十万光年も先にか」
「はい。彼等が若しいるならば」
あくまで仮定である。しかし常に念頭にある仮定であった。
「何が起こるかわからないな」
「全面戦争の可能性もあります」
「そうならないことを祈る」
「はい」
「宇宙は確かに広い」
こう述べた。
「だが。我々の世界は限られている」
「何処まであるかわからない宇宙でも知ることのできるものは限られていますから」
「そうだな。そして我々はその中で生きるしかない」
結論はそれしかなかった。
「案外。狭いものでもある」
「ええ」
「別の銀河に進出することも考えられてきているというのに。案外変わらないものだな」
「そういうものです」
八条は落ち着いた声で述べた。
「人間の本質はそうは変わりませんし」
「うむ」
これは残念ながら真実であった。愚かと言うべきか元々そうなのだと言うべきであるか。どちらにしろ人の本質というものはそれが善であれ悪であれそうそう容易には変わりはしないものであるのだ。
「他の知的生命体とはまだ正式に巡り合っていません。何が起こるのかもわかっていませんから」
「では今もまだ手探りか」
「そうですね」
「何もかもがか。とりあえずは今は発展させるか」
「四兆の人口がありますがそれ以上を」
「そして今まで以上の国力と技術を」
それしかなかった。といってもこれが中々難しいのも事実だ。連合も一千年の間に停滞も多く経験してきている。常に進歩しているわけではないのだ。またその停滞も後の時代から見たものでありそれもまた他者が見れば次のステップへの力の充実期だという意見もあるのだ。
「それがなければ若し他の知的生命体と遭遇した際の有事に対処出来ないでしょう」
「同じ人類に対しても」
八条は今度はカバリエの言葉に応えた。
「今もその一環だしな」
「外を安んじなければ」
「内政もない」
「はい」
こうして講和会議での連合の要求は決定した。八条は会議が終わるとすぐに乗艦であるスサノオに戻ることになった。だがここで一つ変わったことがあった。
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