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第十七部第五章 選ばれた神々の山その一
                 選ばれた神々の山
 連合軍の各艦艇に極秘の通信が入った頃中央政府国防省においてはかなり大掛かりな話が進められていた。
「そちらに向かう人間は何人か」
「警護は大丈夫なのか」
「そしてどの艦に乗艦してもらうのか」
 そうした話が国防省のそれぞれの会議室で行われていた。当然ながら八条もその中に身を置いていた。
「ふう」 
 会議を終えた彼は少し疲れた顔で国防省の喫茶店に姿を現わしそこで紅茶を飲み一息ついていた。ダージリンティーである。
 熱い茶を一口飲んだ後でコップをテーブルの上に置く。そして大きく息を吐き出したその時であった。
「お疲れのようですね」
 声をかける者がいた。見れば由良であった。
「ああ君か」
 八条は微笑んで彼を見上げた。そして声を返した。
「何かと忙しい日々が続きますね」
「それは仕方ないさ」
 八条はその言葉に応えた。
「だけれどそれは君だって同じだと思うけれど」
「まあ確かにそうですが」
 由良はそれに頷いた。
「しかし長官はそれ以上でしょう」
「立ったままで話をするのも何だ」
 見れば由良は八条の側で立ったままであった。
「座ろう。そしてゆっくりと話をしよう」
「わかりました」
 彼はそれに従い八条の向かいの席に座った。そしてドリンクを注文した後で八条に向き直った。頼んだのはコーヒーであった。
「ここのコーヒーは絶品ですよね」
「そうだね」
 まずはコーヒーの話になった。八条もそれに応える。
「とにかく豆がいい。それに眠気も吹き飛びます」
 由良はこの店のコーヒーに関して熱く語りはじめた。
「私はここに来たらいつもコーヒーなんですよ」
「そうなのか」
「はい、ここのコーヒーで気を奮い立たせて仕事に戻るようにしております。そうした意味でここのコーヒーには助けられていますね」
「私は特にそういうことはないな」
 八条は暫し間を置いたうえで答えた。
「その時によってここで飲むものも変わる」
「そうなのですか」
「紅茶を飲む時もあればコーヒーを飲む時もある」
 彼は言った。
「何かを飲むのに特にこれだということはないね」
「はあ」
「ただ、ここのコーヒーが絶品なのには同意だ」
「左様ですか」
「個人的にはブラックがいいな」
 これはあくまで彼の好みだ。
「クリームも砂糖も入れずに」
「そちらの方が味がよくわかる」
 彼は言う。
「コーヒーそのものの味がな。砂糖を入れるとその甘さでどうも微妙な味わいが出来なくなる」
「細かいですね」
「コーヒーも生物だからな」
「コーヒーも」
「紅茶も同じだが。下手に何かを入れるよりもそのまま飲んだ方が美味しい場合もあるということだ」
「成程」
 八条の言葉に応えて頷く。八条はそれを確かめてからまた話を続ける。
「これは人それぞれだと思うがね。私はそう思う」
「そういえばカバリエ外相もコーヒーがお好きだそうですね」
「あの人が好きなのはコーヒーに限ったことではないが」
「まあそうですが」
 彼女はコーヒーだけでなく紅茶も他の飲み物も好きである。伊達に連合きってのグルメと言われているわけではないのである。
「ただ、あの人のコーヒー論も面白いな」
「そうですね、何かと勉強になります」
「中央政府の閣僚ではコーヒー派は結構多いしな」
「大統領もそうですし」
「首相はお茶派だが。よくわからないのは金内相だな」
「内相はどちらでもいいようですよ」
 由良は急に小声になった。それにはちゃんとした理由があった。
「多量に甘いものをぶちこめればいいみたいですから」
「成程な」
 金とは何かと一緒になる機会の多い八条はその話に大いに頷くものがあった。
「確かコーヒーに角砂糖を十個程だったか」
「そのうえでクリームをコップに一杯」
「それで味がわかるのかな」
「コーヒーの飲み方も人それぞれの筈ですが」
「それはわかっているが」
 だが八条は顔を顰めさせていた。
「何度見てもあの飲み方には驚かされる」
 ストレート派の彼にとっては信じられないことであるのだ。
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