第十七部第二章 マウリアの思惑その六
「けれどデザートは甘いわ。それもとんでもなく」
メインになる料理が辛ければデザートはそれに比例して甘くなる。だからマウリアの菓子は甘いのである。
「マウリアはそういう国よ」
「辛く、それでいて甘い」
「それを仲介するのは何かしら」
「仲介」
官僚はそれを聞いてふと眉を顰めさせた。
「ええ。それは何かしら」
「食事の時ですよね」
「そうよ。それは」
「お酒と・・・・・・お茶でしょうか」
「その通りよ」
正解であった。カバリエは満足そうに微笑んだ。
「特にお茶ね。マウリアの紅茶は」
「はい」
「絶品として知られているわ。そのお茶をまず知ることが大事なのよ」
「ではマウリアを知るには」
「まずはお茶ね」
彼女は言った。
「お茶から見ることね。そうすれば色々とわかるかも知れないわ」
「わかりました。それではマウリア局にはそう話を伝えておきます」
「お願いね」
カバリエはこうしてマウリア局にヒントを与えた。それを聞いた連合外務省マウリア局長ペドロ=フローレスはまずは首を傾げさせた。
「お茶、か」
彼は次にこう言った。
「コーヒーではなく」
彼はバルバトス出身でありこの国ではコーヒーが主流なのである。だからまずはそれに戸惑いを見せた。
「マウリアの紅茶はミルクティーが多かったな」
そして側にいたスタッフの一人に尋ねる。そのスタッフはマウリア文化の専門家である。
「はい、そうです」
そしてその専門家が太鼓判を押してくれた。
「少なくともレモンティーとかは滅多に飲まれませんね」
「そうだったな。ミルクティーか」
「しかも種類は豊富にあります」
「それは知っている」
彼は答えた。彼もマウリアに関するエキスパートである。ただしその比重は政治に関して大きく傾いている。
「覚えきれない程あるな」
「一万種は越えているそうですから」
「それできくかな、とも思うのだが」
一説には百万種もの茶がマウリアにはあるとも言われている。詳しいことはその専門家達ですらわからない程である。
「とにかくお茶か」
「はい」
「マウリアを、そして今回の交渉のヒントは」
「一体何でしょうか」
「お茶はどういった時に飲まれるか」
彼はまずそれについて考えた。
「そうですね」
その文化の専門家がそれに答えた。
「食事の合間、ティータイム、そして喉が渇いた時。色々ですね」
「そう、言うならば常に飲む」
フローレスも言った。
「特に口直しにもな。食事の後のデザートの前と後に」
「つまり何にでも使える」
「マウリアにとってそういう存在のことか、茶とは」
「ではそれは」
「宗教と。哲学ではないかな」
そしてそこに注目した。
「そこですか」
「人間にとって宗教は切り離せないものだ。そして哲学もな」
元々哲学は宗教から派生していると言っていい。それを踏まえると宗教と哲学は兄弟の間柄になる。ヨーロッパの哲学は全て宗教とは切っても切れない関係にあった。将にキリスト教は欧州の心であった。
「これはマウリアにおいては特に、だ」
「マウリアの宗教で」
「うむ」
フローレスはここで頷いた。
「その独特の宗教こそがお茶なのだろう」
「またやけに飲みにくいお茶ですな」
「彼等にとってはそれが違うのだろうな」
「また厄介なことです」
顔を顰めさせて述べる。
「まあそう言うな。とにかくこれで解決案が見つかった」
「マウリア人の宗教観、そして哲学ですか」
「マウリア哲学の専門家で誰かいいのを探そう」
「はい」
官僚は頷いた。
「まずはそれからだ。そして話を聞いて」
「対策を練っていきますか」
「あの国は一筋縄ではいかない」
フローレスはまた言った。
「ここは慎重にことを進めよう。いいな」
「わかりました」
こうして連合外務省はすぐにそれに相応しい人物の調査にあたった。そして一人の人物に白羽の矢が立ったのであった。
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