第十七部第一章 銃は収められその八
「所詮作りものかというとそうではありません」
「イメージだけではないと」
「彼は日本出身ですから」
「あの国ならばそうですな」
これはボーデーにもわかっていた。
「日本は連合の中でも極めて異質な国です」
「はい」
連合三百国はいずれも極めて個性の強い国ばかりであると言われている。個性が強くなくてはとても生きられない社会であるのも事実だ。だがその中でも日本の個性の強さは突出しているとされている。
歴史も文化も。長い間貴族や武士といった封建的な階級が存在していた。エウロパの者達はここに自分達と似通ったものを見る時もあるのである。
だがエウロパのものとは根本が異なる。彼等のそれは異民族統治であった。だが日本の場合は同じ民族である。大和民族であるとされている。元々おおらかな気性があり混血に対しては寛容な民族でありここも欧州の貴族達とは違っている。彼等は決して異民族との混血はしないのである。清教徒革命で知られるクロムウェルがアイルランドを植民地と定めた際まず行ったことの一つにイングランド人とアイルランド人の結婚を禁止したのである。貴族は平民とは結婚しない。これもまた民族間の混血を嫌うからである。実際にはかなり怪しい部分があっても建前はそうである。これに対して日本人は平気で混血する。皇室も朝鮮半島の者と婚姻し、この時代においては琉球王家やエチロピア皇室、そして各国の王族と婚姻を結んでいる。とりわけ琉球王家とはかって明治時代に琉球国が廃され日本になった時に縁組され皇族の一員となったこともあり縁が深い。今の帝は琉球国王を『叔父上』と御呼びし、琉球王は帝を『姪殿』と呼ぶ程である。実際に血縁関係にある。
大和民族と琉球民族は元々違う民族であった。感情的な対立もかってはあり、差別もないわけではなかった。だがこの時代
においては兄弟とも言える間柄であった。これはアイヌ民族とも同じである。日本と彼等は深い関係にある。兄弟国として連合に知られている。互いの交流も婚姻も盛んである。民間レベルでもだ。
「貴族的なものも。解しているようです」
「あの国だけは特別ということですか」
「そのようですね」
シュヴァルツブルグは述べる。
「後はかっての民族を復興させたと言っても素性が怪しい国ばかりです」
ヒッタイトやフェニキア等の国々のことを言っているのである。彼等からみればこうした国々は何処の馬の骨とも知れない連中が勝手に名乗っているだけである。少なくとも彼等はそう思っている。だが当時者達はそうは思っていないのだ。彼等はあくまで自分達がフェニキアやヒッタイト、インカの末裔だと主張する。
「カルタゴにしろティルスにしろ。滅んでおります」
「ですな」
いずれもフェニキア人の都市であった。海洋民族である彼等は地中海の各地に植民し、多くの都市を築いた。優れた商才と航海技術、そして農業を持っていた為忽ちにして一大勢力となった。だがティルスはアレキサンダー大王に、カルタゴはローマに滅ぼされた。彼等は歴史の中に滅んだとされているのだ。
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