第十六部第五章 剣は収められその八
「人の振り見て我が振りなおせって言いたいです」
「わかりました。それでは」
「話を戻しましょうか」
「はい」
進行役であるウボンが言った。そして話は元に戻った。
「とにかく規律正しいんですよね、連合軍は」
「戦場の紳士でしたね」
パークナムはまたにこにことしていた。
「礼儀正しくて」
「内務省のスタッフも連合入りしていたそうですね」
実はこれがかなり大きいのである。
「そうなんですよ」
パークナムはこれにも応えた。
「かなり厳しかったそうですよ、憲兵隊以上に」
「でしょうね」
金の厳しさを知らない者は連合にはいない。『韓国きっての才媛』『女教皇』『鋼鉄の美女』という通り名は伊達ではなかった。その冷徹な目はエウロパにおける占領地にも向けられていたのである。
「数こそは少なかったそうですけれどね」
「それでもですか」
「ええ。これも規律に役立っていたそうです」
「では成功ですね」
「そうですね。まあ不名誉な話は残さなかったです」
軍隊の規律を維持することは難しい。それを徹底させたことに今回の連合の凄さがあるのだ。それが今話されていた。
「それは何よりですね」
「ただ私一つ気になることがあるんですよ」
「何ですか?」
ウボンとパークナムはナイの言葉に顔を向けた。
「いえ、犯罪の種類ですけれど」
「はい」
「飲食店のトラブルが一番多いですよね。それもかなりの割合で」
「そうですね」
「言われてみれば」
見ると全体の半分程であった。かなりの割合であるのは事実であった。
「これって何なんでしょうか」
「酒飲んで暴れたりしたのみたいですね」
パークナムが答えた。
「やっぱりそれですか」
「あと店の食糧を全て食い潰してもう出せないと言われて怒ったとか。そんなのですね」
「お店にあるの全部食べちゃったんですか」
「エウロパの人間ってあまり食べないんですよ」
パークナムはここでこう言った。
「そうなんですか」
「ええ。我々から見たら昼食がおやつ程度でね」
「はあ」
「兵隊さんって皆食べるじゃないですか。それでお店にあるものがなくなっちゃうってことがあったそうです」
笑いながら言っている。冗談めいた話であるのがそこからもわかる。
「そうだったんですか」
「まあそれも処罰されてますけれどね。お酒のトラブルは洒落になりませんから」
「はい」
「全体的に規律はよかったのは事実ですよ」
「それを聞くと安心しますね」
「あと戦死者が凄く少ないですよね」
ウボンもそれを言ってきた。
「そうですね。それが一番嬉しいです」
パークナムも頷く。
「身内が戦死するんじゃないかと思うとやっぱり不安ですから」
「そういえばナンさんの弟さんも参加されているんですよね」
「はい」
ナンはウボンの問いに頷いた。
「水兵で。行ってました」
「御無事でしたか?」
「ええ。昨日電話がありまして」
「ほう」
「元気だから。安心してくれって言ってました」
今まで知的に固めていたその顔が綻んでいた。やはり身内が無事でほっとしたらしい。
「それはよかったですね」
「はい、無事で何よりですよ」
これは紛れもない本音であった。
「ずっと心配していましたから」
ナンは完全に姉の顔になっていた。弟を気遣う姉の顔であった。
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