第十六部第三章 講和への道その二
「アステロイド帯や磁気嵐、超新星、ブラックホール等は極めて少ない」
「そう聞いています」
「従って障害になるものはあまりない。これは防衛戦を行ううえで非常に不利だ」
「ではエウロパ軍は地の利すら得られないと」
「普通にやればな。問題はそれでもその中に彼等が見つけられるかどうかだ」
難しい話であった。それが果たせなかったからこそ今があるからだ。
「エウロパにとっては不利なことしかないようですな」
「まず敗北は確実だ」
クリシュナータは述べた。
「連合は普通に進めてもオリンポスまで達することができるだろう」
「オリンポスまでですか」
「そうだ。連合の指揮官が相当な愚か者でもない限りな」
「ですが連合軍は然程無能な人物はいないようですが」
「そうだな」
クリシュナータはそこも見ていた。視野が広いと言えた。
「サハラのそれのように傑出した人物もいないようだが」
「むしろ連合はそうした人物を好まないようですね」
「好まないのか」
「これはあくまで私個人の見方ですが」
顔を向けてきたクリシュナータに対してこう答える。
「連合軍の教育はまず平均化、そして画一化を目指しております」
「うむ」
「そしてその装備や戦術も。全てマニュアル化されています」
「誰が戦っても勝てるようにな」
「それも最小限の損害で。圧倒的な戦力を基本に忠実な戦術で運用するのが彼等の思想の様です」
「軍事的天才を不要とする軍隊か」
「はい。一人の名将よりも百人の凡将という考えのようです」
ここで凡将と述べているがこの場合は決して悪い意味ではない。平均に達している将という意味である。少なくとも武官はこう考えている。
「作戦もまた基本に沿っています。いえ、そこから一歩も出てはおりません」
これは劉の立案した作戦を見てもわかることであった。彼は誘い込んで一気に反撃に転じるやり方を好むがこれも戦術の基本である。彼はあくまで基本に沿った作戦を考えているのである。
「補給の充実もそもそもがそこにあります」
「戦略も基本に沿ってか」
「全てが。そうした意味で二十世紀後半の軍の思想に近いでしょうか」
「近代化軍だな」
「はい」
彼は頷いた。
「当時の軍をモデルとしているようです」
「連合ならではだな」
クリシュナータはまた述べた。
「損害を最小限に抑えて確実に勝利を収める為に。それだけを考えている」
「はい」
軍の思想の基礎ではある。
「圧倒的な国力があればこそ実現に向けられる考えではある」
「ですが背景はそれだけではないようです」
「連合軍の在り方自体にか」
「おそらく。やはり彼等は志願制の軍隊であり市民の軍隊ですから」
彼もまた述べた。
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