第十五部第五章 防戦その一
防戦
遂にニョルズにおける義勇軍とエウロパ軍の戦いがはじまった。まずは義勇軍のティアマト級巨大戦艦における巨砲の一斉射撃からはじまった。
「巨大戦艦を前へ」
マシュハドの指示が伝わる。前面に展開していた巨大戦艦達は更に前に出る。連合軍にとっては恒例の最初の一撃であった。
「射撃用意」
「射撃用意」
命令が復唱される。それに伴い巨大戦艦の巨砲に光が宿る。次の命令でその光が放たれたのであった。
「撃て!」
「撃て!」
アラビア語で指示が下される。そして今アッラーの使徒達の炎がエウロパ軍に向かって放たれた。
二百を優に超える巨大な光の矢がエウロパ軍に向かう。それは音のない筈の銀河において唸り声を挙げて突き進んできていた。
「バリアーの出力を全開にしろ!」
モンサルヴァートの指示が下る。
「そして散開だ!集まっていては危険だ!」
「了解!」
そしてまた指示が下る。今度は散開するように言った。それに従いそれぞれの方陣が散陣となって敵の攻撃に備える。これで巨大戦艦の巨砲の攻撃によるダメージを減らそうというのだ。
それは成功した。それまでその一撃だけで戦意を挫いていた巨砲による攻撃のダメージを抑えることに成功したのだ。これは奇しくもクロノスにおける友軍の連合軍の全艦艇による一斉射撃を凌いだのと同じ方法であるがモンサルヴァートもまた使ったのであった。
「損害は」
彼は敵の攻撃が終わった後で問うてきた。
「一パーセント未満です」
参謀の一人が報告する。
「何とか損害を最小限に抑えることに成功した模様です」
「そうか。では成功と見ていいな」
「はい」
参謀はその言葉に頷いた。
「ですがこれで終わりではありません」
ここでプロコフィエフが言った。
「敵はまだ。次の攻撃があります」
「そうだったな」
モンサルヴァートは方陣に戻る自軍と次の動きに取り掛かる敵軍を相互に見ながら応えた。
「次は砲艦及びミサイル艦による攻撃か」
「セオリーに従うならば」
「セオリーか。義勇軍もそれは守るか」
「少なくとも効果的な戦術ではあります」
プロコフィエフは述べた。
「圧倒的な攻撃力とこちらの射程県外からの続け様の攻撃。それにより今まで我が軍は大きなダメージを受けてきてきたのは事実です」
「そうだな。少なくとも我が軍はまだ彼等に勝ってはいない」
彼はそれに応じる形で述べた。
「効果があるのはそれだけでわかるな」
「はい」
「だがそれだからこそ備えなければならない。それへの私の答えがこれだ」
「散陣ですか」
「そうか。まずはこれで損害を最小限に抑える」
モンサルヴァートは言葉を続けた。
「反撃が出来ないならば。損害を抑える。それしか有るまい」
「確かに」
プロコフィエフもそれに頷くしかなかった。
「方陣と散陣の使い分けだ。それで敵の攻撃を凌ぐ。まずはそれでいこう」
「了解しました。それでは」
「うむ」
「敵の砲艦及びミサイル艦が前に出て来ました」
また参謀の報告が入って来た。
「来たか」
「はい。今にも攻撃を加えんとしております」
「わかった。では散陣になれ」
「了解」
また指示が下る。それによりエウロパ軍は再び散開した。
「敵の攻撃が来ました」
「うむ」
モンサルヴァートは頷いた。見ればその言葉通り義勇軍の砲艦及びミサイル艦による一斉攻撃がはじまったところであった。
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