第十五部第三章 ラビリンスその九
「ふむ」
マシュハドは自室で送られてきたニョルズの宙図を見ていた。そして考えに耽っていたのであった。
「成程な」
「失礼します」
そこにワフラが入って来た。彼は部屋に入るとまずは敬礼した。
「おう」
マシュハドもそれに返礼した。彼はそれからワフラに対して言った。
「今この星系の宙図が送られてきている」
「はい」
「かなり詳細にな。その結果面白いことがわかってきたぞ」
「面白いことですか」
「そうだ。何かとな。この星系はやはり迷路だ」
「迷路ですか」
「そう、迷路だ」
その目を煌かせて言う。
「我々は今将に迷路の中にいるな。あらためてそれを認識させられた」
「はい」
「迷路の中ではどう戦うべきかな」
「少なくとも手探りでは話にもなりません」
ワフラは答えた。
「そうだな」
それにはマシュハドも頷いた。
「ではどうするべきか」
「テーセウスはアリアドネの赤い糸を伝って戦っていましたが」
「うむ」
「我々は補給路を確保しながらです。しかしそれは今回はミノタウロスも同じこと。神話のそれとはそこが違います」
「そうだな」
「ですがミノタウロスは迷路の隅まで知っています。これは神話と変わりがありません」
ワフラは自分達をギリシア神話の英雄の一人テーセウスに、そしてエウロパ軍をミノス王のラビリンスにいた牛頭人身の怪物ミノタウロスに例えて話をした。このミノタウロスという怪物の出自は実に奇怪である。ミノス王の妃と牡牛の間に生まれたとされている。そのうえ人肉を喰らう。牛の頭なのにだ。これには何かの宗教的儀式があったのではないかとも言われている。
「これは大きいです。ですがテーセウスは勝っております」
「神話ではな」
彼の冒険はそれからも続き多くのことが起こった。だがそれはまた別の話となる。少なくとも彼はこの後でラビリンスには入ってはいない。
「我々も勝てる筈です。方法を誤らなければ」
「正しい選択をする自信はあるか」
「エウロパの神々に対してはありません」
ワフラはここで思わせぶりに言った。
「ですがアッラーが導かれるのならあります」
「そうか」
マシュハドはそれを聞いてニヤリと笑った。
「それを聞いて安心したぞ」
「アッラーフアクバル」
ワフラはここでまた言った。そして彼もニヤリと笑った。いつもの冷静沈着なサポート役としての彼はこの時はいなかった。
「アッラーならば怪物を倒すことは造作もないことです」
「そしてその僕達である我々もな」
「ええ。ではやりますか」
「何か考えがあるな」
「まずは宙図を見せて頂けないでしょうか」
ワフラは申し出てきた。
「宙図をか」
「はい。まずはそれを見て考えていきたいと考えております」
「わかった」
マシュハドはそれに頷いて今自身が持っている宙図をまとめた後で彼に手渡した。
人気サイトランキング
小説・詩ランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。