ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第十四部第五章 神々の激突その二
「誇りでな。彼もまた貴族だ」
「それは承知していますが」
「卿もまた同じ。ではわかるのではないか」
「あっ」
 それを言われてハッとした。自分のことを言われたならばわかった。こうした点ではまだ彼女は若かった。軍人として、参謀として優秀であってもまだ世事のことについては知らないことが多かったのだ。
「わかったな」
「はい」
 エヴァが頷くのを見て微笑んだ。
「そういうことだ。だからこそ彼も必死なのだ」
「左様でしたか」
「だがな。だからといって勝てる程戦争は甘くはない」
「それはわかっています」
 これはよくわかっていることであった。頷くことができた。
「この第三ラインが破られたならば本当に後がない」
「はい」
「後は。第四ラインで玉砕覚悟で戦うしかない」
「ですね」
 第四ラインといっても名だけである。既に兵器は三つのラインに全て注ぎ込んでいる。エウロパの力ではこれが限度であった。だがそれでも彼等は諦めるわけにはいかなかったのである。
「事実上この第三ラインで凌ぐ」
「わかっています」
 エヴァはまた頷いた。
「その要となるのがテューポーンだ」
「我々の守り神ですね」
「そうだな。本来は神々の敵だったが」
 そう思うと複雑な感情を抱いてしまう。
「今は我々の守りとなってくれている」
「ですね」
 まさにその通りであった。オリンポスはこの巨大な神の手にかかっていた。
 エウロパ軍の将兵達はテューポーンを期待の目で見ていた。まさに柱となっていた。
 連合軍とエウロパ軍は第三ラインで対峙していた頃国防省では一つの話が持ち上がっていた。統合作戦本部長のバールが八条に対して意見を具申していたのである。
「あれをですか」
「はい」
 バールは自分の意見を言った後で頷いた。
「今この太陽系は防衛という点ではいささか不安な点があります」
「そうでしょうか」
 だが八条はそれには懐疑的であった。首都の管轄区も三百の艦隊が展開している。防衛の点では他の管轄区に決して劣ってはいないからである。
「確かに管轄区としてはいいです」
 バールもそれに言及してきた。
「ですが首都の防衛は。やはり不安があります」
「ふむ」
 そう言われても八条は懐疑的なままであった。日本では元々帝都である八幡星系の防衛はそれ程堅固なものではなかった。確かに首都としての防衛は備えてはいたが。太陽系はその八幡よりも防衛が堅固なのである。
「私は特にそうは思いませんが」
「それは閣下が日本におられたからでしょう」
 やはり鋭かった。バールもそこを衝いてきた。
「日本は治安がいいですから」
「はい」
「あまりそうした心配がないのですよ。首都の防衛等は」
「それなりに備えはありましたがね、我が国も」
「それなりでは心もとありません」
 バールは言い切った。
「やはりこれでもかという防衛が必要かと思います」
「雷王星や冥王星の防衛ラインだけではまだ足りないと」
 雷王星とは二十一世紀に発見された太陽系の惑星の一つである。ゼウスから名がとられている。連合はこの星と冥王星において首都防衛のラインを施設しているのである。それはガンタース要塞群のそれに匹敵するものとさえ言われている。
「そうですね」
 彼はまた言った。
人気サイトランキング site_access.php?citi_id=254078182&size=200小説・詩ランキングcont_access.php?citi_cont_id=343008101&size=200


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。