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第十四部第二章 鉄の壁その十四
「それは一体」
「スチュワート元帥、そしてスコット上級大将です」
「あの二人がか」
 マールボロはそれを聞いて沈痛な顔になった。
「二人共私の旧友だった」
「そうだったのですか」
「いい連中だったよ。かってはよく飲み合った」
「はあ」
「軍人ならば覚悟はしていたが。まさかそれが今だとはな」
「それも戦争の常です」
「そう言ってしまえばそれまでだが」
 だがそれでも釈然としないものはあった。
「だがな」
「閣下、それ以上は」
 マウントバッテンはそう言って彼がこれについてこれ以上言うのを止めた。
「そうか」
「いずれヴァルハラかオリンポスで会うことができます。それまでの辛抱です」
「そうだな。そう思うとしよう」
 ようやく我を取り戻した。
「問題はこれからだな」
「はい」
 艦橋から自軍の艦艇を見回す。見ればどの艦にもかなりの損傷が見られた。それが何によるものであるかはもう言うまでもないことであった。
「やはり彼等は手強い」
「はい」
「それはよく認識しておこう」
「ですね」
「まずは傷を癒そう。さもなければ戦えはしない」
「傷をですか」
「幸い敵も動くつもりは今はないようだな」
「どうやら陣地の確保と補給に専念しているようです」
 マウントバッテンはそう報告した。
「今のうちかと」
「よし、ならば決まりだ」
 マールボロは意を決した。
「全軍工作艦及び補給艦の修理及び補給を受けよ」
「ハッ」
「そして防衛ラインを再構築する」
 彼はまだ指示を下した。
「連合軍の攻撃力は今までよりも高い。それに備えるぞ」
「わかりました」
「シュヴァルツブルグエウロパ元帥にもお伝えしろ」
 彼はシュヴァルツブルグへの意見具申も行うことにした。
「防衛ラインも再構築すべしとな」
「わかりました。それでは」
「うむ。頼むぞ」
 こうしてエウロパ軍も動いていた。シュヴァルツブルグの下に実際にマールボロからの意見具申が届いた。彼はそれを艦の会議室で受けた。
「どうされますか」
 まずはエヴァがそれに問うた。
「防衛ラインの再構築ですが」
「そうだな」
 シュヴァルツブルグはエヴァに顔を向けてから述べた。
「いい考えだと思うが」
「左様ですか」
 エヴァは一見何の反対もなく頷いたように見えた。
「先程の連合軍の一斉射撃で予想以上のダメージを受けたのは事実だ」
「はい」
「防衛ラインは考慮し直した方がいいのは事実だ。さもないとまた大きな損害を被ることになる」
「ですね」
 エヴァもそれに頷いた。
「ビーム砲及びミサイルに備えよう。これでかなり違う筈だ」
「もう一つありますが」
「それは」
「艦載機のことです」
 エヴァは静かな物腰でそう答えた。
「艦載機か」
「彼等の艦載機はかなりの性能です。それに数も多いです」
「それがあったか」
「彼等への備えも必要があります」
「そうだな」
 彼はそれに頷いた。
「対空砲座も増やしておくか」
「はい」
「後は電子妨害施設もだな」
「そうですね。それでかなり違うと思います」
 エヴァは率直にそう述べた。
「第二防衛ラインでは接近戦も有り得ます」
「うむ」
「覚悟していきましょう。戦いはまだまだこれからです」
「そうだな。よし」
 シュヴァルツブルグは頷いた。そしてそれから指示を下した。
「バリアーを増加せよ。そして対空砲座、電子妨害施設もだ」
「ハッ」
「これで・・・・・・よいかな。とりあえずは」
「そうですね」
 エヴァはここでまた言った。
「テューポーンは第三ラインに配置しておりますし」
「うむ」
「機雷源はもう第一でその数を大幅に減らしております。数も少ないです」
「それも使えないか」
「仕方ありません。とりあえず出来ることをしなければ」
「これで充分か」
「いえ」
 だが彼女はそれを否定した。
「まだやるべきことがあります」
「それは何だ」
「機動戦力です」
「機動戦力」
「そうです。我々が防御を固めている間に」
「うむ」
 シュヴァルツブルグは彼女の言葉を真剣な顔で聞いていた。
「敵の側面や後方を攻撃する艦隊が必要です。それを用意しなければなりません」
「遊撃戦力というわけだな」
「はい」
 エヴァはそれを受けて頷いた。
「これには竜騎士団が最適だと思いますが」
「竜騎士団か」
「そうです。彼等ならばそれに相応しいと思うのですがどうでしょうか」
「そうだな」
 彼もそれを受けて頷いた。
「そうだな。ここは彼等に頑張ってもらおう」
「はい」
「辛いな、それにしても」
 彼は応えた後でこう言った。
「御気持ちはわかります」
 エヴァも言った。
「こちらが辛い時は敵も辛いというがそれはあくまでスポーツの世界だ」
「はい」
「戦場は違う。どうしたものか」
 彼は次の戦場を見据えていた。そこでもまた多くの命が散るだろう。だがそれでも退くことはできなかった。もう後はなかった。それが今のエウロパであった。
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