第十四部第一章 振り下ろされた刃その九
「そうだったな。申し訳ない」
「いえいえ」
だが由良はそれを気には止めなかった。笑って応える。
「まあ話を元に戻そう」
「はい」
シャリアピンは話がとりあえず中断したところでその話を元に戻しにかかった。
「一体何を見ているのかね」
「インターネットの掲示板でして」
「ほう」
シャリアピンはそれを受けてその掲示板を覗き込んだ。
「ああ、これか」
「御存知でしたか」
「知ってるも何も。有名な巨大掲示板群じゃないか」
連合においてはインターネットの代名詞ともなっているサイトである。ここで様々なジャンルにおいて多くの議論や書き込みが為されているのだ。
「ただ問題もあるがな」
「はい」
その問題は書き込みが自由な故の誹謗中傷の多さであった。これによりこのサイトが連合を代表するサイトの一つでありながら評判が今一つ芳しくないのはその為であった。
「だが使いようによっては役に立つからな。むげにはできない」
「だから今覗いていたのですよ」
「で、何かわかったか?」
「ええ、面白いことがね」
彼は笑ってそう述べた。
「それは」
「実に色々な意見があるものですよ」
「ネットだからな」
シャリアピンはそう答えた。
「それも当然だろうな」
「御存知でしたか」
「私もネットをやっているからね。実はそこにも出入りしている」
「ほう」
「中々面白いものだ。そこにいるだけで時間を忘れてしまう程にな」
「では何かお知りになられましたか」
「連合の勝利を約束してくれる者がいた」
「それは」
「アラン=ハイド氏だよ」
「彼がですか」
どうやら由良もそのハイドという男のことは知っているらしい。その名を聞いただけで声をあげた。
「で、何と」
「わかっていると思うが」
シャリアピンは面白そうに笑いながらそう言った。
「どうなのかね、そこは」
「まあ大体は予想がつきますが」
そして彼自身もそう言った。
「連合の大敗北でも予想していたのでしょうね、きっと」
「当たりだ」
シャリアピンは笑ってそう述べた。
「それも連合軍は壊滅するらしい」
「では我が軍の勝利は間違いなしですか」
「そういうことになるな」
実はこのハイドという軍事評論家はその予想や分析がことごとく外れることで知られているのである。その為ネットや軍事マニアの間では『天才的な軍事評論家』『無敗の名将』とすら揶揄されているのである。ある意味かなり名の知れた人物であったのだ。
「だがそれに油断してはならないな」
「はい。前線の将兵達にはこのうえない励みになりますが」
「二十世紀に日露戦争があったな」
「はい」
シャリアピンの祖国リトアニアはこの時ロシア領であった。従って直接的にはあまり因果関係はなかった。リトアニア出身のロシア兵達が日本軍と戦っていた位である。
「あの時も何かと不思議なことが起こっていたな」
「それは聞いたことがあります」
この戦争は帝国主義の時代において有色人種が白人に対して勝利を収めた画期的な事件であっただけではないのだ。実に奇妙なことが多く起こったのである。
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