第十三部第四章 創造神の星においてその十二
「あ、いいところに来たな」
「何かあったのですか?」
「ああ。ちょっと首相府に用件ができてな。それの調整をしてもらいたいんだ」
「首相府ですか」
「そうだ。お願いできるかな」
「そういうことでしたら」
彼は上司の言葉に頷いた。
「すぐにでも。どうやらマウリアとは上手くいきそうなのですね」
「わかったのかい」
「ええ、そのお顔を見れば。すぐにわかりますよ」
「顔には何も書いたつもりはないが」
「それでもわかるんですよ」
「やれやれ」
彼はそれを聞いて苦笑した。
「どうやら私もまだまだのようだな。顔に出るようでは」
「まあ嘘が漬けないってことですよ。それでいいではないですか」
「いいのか」
政治家とは嘘をつくものとされている。少なくとも腹芸も要求される職業である。だが八条はその性格故かそうしたことが得意ではないのである。木口はそれをよしと言ったのである。
「世間ではそうは言われないと思うがな。少なくとも政治の世界では」
「政治といってもそれぞれですよ」
木口はそれに対してはそう答えた。
「何も一人の人間が政治をするわけではないですよね」
「それはそうだ」
ましてや連合は民主主義体制である。多くの政治家がそれぞれの思想、政策を持っている。これはもう言うまでもないことであった。
「だからいいんですよ。長官は長官のままで」
「そうなのか」
「政治家の形は一つではないのですからね」
「ふむ」
「それに変に合わないことをしても疲れるだけですよ」
彼は木口の話を聞きながら考えていた。どうにもすぐに結論が出そうな話ではなかったからである。
「私はそう思いますが」
「わかった」
そこまで聞いてようやく頷いた。
「それではとりあえずは私のスタイルでいくとしよう」
「それが宜しいかと。それでは」
木口はそう言い終えるとその場から姿を消した。その足ですぐに首相府に向かった。八条はそれを見送りながら次の仕事に取り掛かっていた。今度は書類仕事であった。
その書類に一枚ずつサインをしていく。一枚サインをし終えるとまた別の書類に。そうして時間を費やしていく。彼は限られた時間の中でその膨大な仕事をこなしていた。だがそれでも仕事は減りはしなかった。それが終わるとまた次の仕事が待っていたのだ。
「長官」
サインを終えたところで木口が部屋に戻って来たのだ。丁度休憩の時間であった。だが彼はまだ休憩をとることはできそうにもなかった。今木口が来たからである。
「首相府からはゴーサインが出ました」
「それは何より」
「ただ細かいことは財務省とも話をしてくれとのことですが」
「財務省と」
彼はそれを聞いてその整った顔を曇らせた。
「またそれは。難題が一つ増えたな」
国防省と財務省の仲がよくないのは多くの国で見られることであるし中央政府でもそうした傾向は残念なことに見られる。財務省から見れば国防省は金喰い虫であるし国防省から見れば財務省は難癖をつける存在である。これで仲がよくなる方が不思議と言えば不思議である。
「しかし結局は話をしなければなりませんよ」
「それはわかっているが」
それでも八条は今一つ乗り気ではなかった。
「あの人が何と言うかな」
「おそらくあまりいい顔はされないでしょうね」
木口は率直にそう述べた。
「戦争で何かと出費が重なっていますし」
「それが最も大きいな」
「そしてまた出費です。しかも長官がその話のもとだとすると」
「苦労しそうだな」
「しかしだからといって話をしないわけにはいきません」
「それはわかっているよ」
乗り気でないままそう答えた。
「それでもな」
「ここで言っていてもはじまりませんよ。すぐに話をしましょう」
「そうだな」
木口の言葉を聞き入れて電話を手にとった。そして財務省に電話をかける。
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