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第三部第一章 侵攻作戦その一
                   侵攻作戦
 西方の要地であるカッサラ星系。貿易で栄え各国の争奪地となってきた場所である。
 この星系を巡ってれまで多くの血が流れてきた。血を血で洗い屍が積み重ねられてきた。それがこの栄えてきた星系のもう一つの歴史であった。
 それも人類の歴史の一面であった。人類は銀河に進出しても争いは止めなかった。
 サハラ内、そしてエウロパとサハラの戦いだけではない。連合も内部に宇宙海賊やテロリストといった内憂を長年に渡って抱えてきた。そしてそれ相応の血を流してきた。人類の歴史において血が止まるということはなかった。
 戦争さえなければ平和なのではなかった。この場合は武力における戦争である。連合内は武力を用いず経済、通商、貿易における戦争が頻発しておりそれは今も変わらない。これも平和かというと謀略が渦巻き到底そうは言えなかった。
 政争は常である。何処の国でもある。結局人類の歩みはそうしたものとは切っても切れないものである。
 それは何故か。神話を見ると神々も互いに争い時として血を流している。我々が信仰する神々もそうなのである。それならば我々がそれから逃れられる筈はないのではないだろうか。
 だが人類が愚かであるかというとそうではない。一面に過ぎない。光もあれば影もあるのである。そうした影だけでなく光もまたそれ以上に人類の歴史を照らしているのである。
 文化がある。芸術がある。愛がある。人類はそれを常に愛で追い求めてきた。そして様々な美しい話、作品が誕生し無数の美が生まれてきた。まるで銀河の星達のように。
 また人類の不思議なところはその血を血で洗う戦争においてもその美を求めるところである。
 かつて多くの戦場が詩となり絵画となった。トロイアの戦争は盲目の詩人ホメロスによって詠われ今も残っている。数千年経てもまだ人の心を支配しているのだ。
 そしてそれを行なう武器も人類は飾ってきた。剣に斧、槍、鎧に兜。そこにも多くの美しい装飾が施されてきたのである。
 それは今も変わらない銀河を進み星の戦場を駆ける艦もその姿は美しい。
 今カッサラに多くの艦艇が向かっていた。流線型でスマートな外見である。これはオムダーマンの艦艇独特の形であった。
 この流線型のシルエットは美しいと評判であった。軍艦に相応しくなく優美であると言われている。
「それは機能性を重視した結果なのだがな」
 その中の一艦に乗る男が呟いた。
 黒い髪を短く刈っている。四角い顔立ちをしており全体的にがっしりした体格をしている。彼はオムダーマンの艦隊司令官の一人ヌーフ=ハルシメルである。
 その軍歴の最初から今に至るまで空母を中心とした機動艦隊に置いていた。その為かイエニチェリの運用には定評があり空母の運用のスペシャリストとして知られている。
「空母にしろそのシルエットは流線型になっている」
 これもオムダーマンの艦艇の特徴である。空母は往々にして武骨な形になり易い。
「ですね。こうしたことは珍しいでしょう」
 傍らに控える参謀の一人が答えた。
「我が軍は機動性を重視していますから」
「そうだな。そして攻撃力だ」
 ハルシメルは腕を組んだまま言った。
「どれも艦にとっては必要なものだ。その分防御力は弱いがな」
「それでもかなりましになりましたね」
「多少はな。まあそのままよりはずっと有り難いな」
 彼は自身の艦艇をそのままの姿勢で見ていた。艦隊は整然と並び銀河を進んでいる。
 その隊列は河の様であった。そして虚空の中を進む。
「防御に関してはサラーフも大体同じだがな。サハラの艦艇の特徴か」
「ですね。ところで連合の艦艇ですが」
「おい、あんな別世界のことは言ってもはじまらないぞ」
 彼はそう言って苦笑した。彼等にとって連合は全くの異境であったのだ。
「それはそうですが」
 参謀はそう断ったうえで話した。
「ですが参考にはなると思いますが」
「確かにな」
 それは事実だった。それを否定する程ハルシメルは愚かではなかった。
「そして連合の艦艇はどういったものなのだ」
「何でも防御力を重視しているようです。そしてダメージコントロールにかなり力を入れているとか」
「生存能力を第一に置いたか」
「はい。そして艦を大型にし全体的に火力も強いようです」
「そうか。大型か」
「ええ。何でもどの艦種も我が軍の艦艇の倍の大きさはあるとか」
「そして数を頼みにして戦うのか。宇宙海賊はそれで一蹴できるな」
「ですね。海賊を相手にするにはいささか過ぎるかと思いますが」
「そういえばそうだな」
 彼は参謀に言われてふとそう思った。
「そこまでの性能だと我々やエウロパの艦艇も楽に倒せそうだな」
「そうですね。まさかとは思いますが」
 参謀の顔が暗くなった。
 彼等サハラの者が口には出さないが一つ怖れていることがある。それは連合の侵攻であった。
 今彼等は北方をエウロパに侵略されている。だが所詮数が違う。多くの者はサハラが団結すれば彼等を容易に追い出すことができると考えていた。団結できるかどうかは別として。
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