第十三部第一章 角笛を持つ時その三
開けられた浴室に入るとそこには巨大な浴槽があった。サウナや冷水の浴槽まである。メインである巨大な浴槽は白い。まるでミルクを入れているように。
「ミルクを入れたのか」
アランソもそれが気になって側に控える執事に問うた。
「いえ」
だが執事はそれを否定した。
「香料を入れまして。それでございます」
「そうなのか」
「どうぞ。肌にとてもいいそうでございます」
「肌か」
それに気付き自分の肌を見た。
「見ればかなり荒れているな」
連日の激務の故であった。疲れが肌にも出ていた。
「そう思いまして。それでこの香料を使わせて頂きました」
「色々と気を使ってくれているな」
「これも御主人様の為です」
彼女達はあくまでアランソの下僕であった。それに徹していると言えばそれまでである。だが彼女達はそれ以上の者達であったのだ。そこには職務以上のものがあった。
「そうか。ならば私からも褒美を与えよう」
「褒美といいますと」
「皆服を脱げ。共に疲れを癒すとしよう」
「それはまさか」
「共に風呂に入ろう。そう言ったのだが」
「勿体ない御言葉」
「皆を呼べ。すぐにな」
「はい」
執事は嬉しそうな顔を押し殺してその場を後にした。アランソはそれを見届けた後で側に残っているメイド達に声をかけた。
「そなた達もだ」
「宜しいのですか?」
「言ったな、皆だと」
「はい」
「そなた達もだ。早く服を脱げ」
「ですが」
「主の命令が聞けないというのか?」
アランソはそう言いながら妖艶な笑みを浮かべた。
「ならば私が脱がせてやるが。どうする?」
「わかりました」
メイド達はそれに従った。それぞれ服を脱ぐ。
「それでよいのだ。では来るがいい」
「はい」
アランソはメイド達に囲まれて風呂の中に入った。そして浴槽に入った。白い液体が彼女達の裸身を覆った。
「これ」
アランソは周りにいるメイド達に対してまた声をかけてきた。
「はい」
「そんなに離れる必要はない。もっと私の側に来い」
「宜しいのですか?」
「よいのだ。こうしないと疲れがとれぬ」
「わかりました」
メイド達はそれに従った。すぐに主の側に寄った。そこでまた浴室の扉が開いた。すると裸の女性達がまた入って来た。
「来たか」
「御主人様」
その先頭にいるのは執事であった。タキシードを脱ぎ長い髪を上で束ねていた。
「御命令の通り家の者を呼んで参りました」
「うむ、早いな」
「それでは御相伴させて頂きます」
「早く来い」
アランソは目で招いた。
「宴は客が多い方がよいからな」
「勿体なき御言葉。それでは」
「来い」
アランソは右隣にいるメイドの肩を抱いていた。そしてその耳を噛む。
「あっ」
まだ十代後半程であろうか。うら若き少女であった。耳を噛まれ小さく呻いた。
「どうした?」
アランソはそんな彼女に声をかけてきた。
「こうされるのははじめてなのか?」
「はい」
少女はコクリ、と頷いて答えた。
「男と寝たことは?」
「ありません」
「では全くのはじめてか。面白い」
その笑みが妖艶なものとなった。
「私も同じだ。男は知らない。いや、知るつもりもない」
完全なレズビアンであった。だがそれを隠そうともしない。この時代の連合やエウロパにおいては同性愛はそれなりの社会的地位を得ているのである。どちらかといえばホモセクシャルの方が主流であるがこうしたレズビアンもまたポピュラーなものとなっているのだ。これはエウロパの貴族社会だけではない。
「だが女は別だ。そなたには今の私の相手を命じる」
「有り難き幸せ」
こうして宴が行われた。長い宴が終わるとアランソは浴槽を出た。それから共に出て来た家の者達に身体を拭かせ、服を着させた後で部屋を出た。それからゆうるりとした物腰で自室に入った。
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